Los Angeles Times 2010年1月29日
ハイチ地震:ホルムアルデヒド汚染のトレーラー
 ハイチに押し付けようとして反発


情報源:Los Angeles Times, January 29, 2010
Haiti earthquake: Push to send FEMA trailers to Haiti stirs backlash
http://latimesblogs.latimes.com/laplaza/2010/01/haiti-earthquake-.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2010年1月31日
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_10/10_01/100129_Haiti_formaldehyde_trailers .html

トレーラー(移動住宅)産業と議員らが政府に対し、ハリケーン・カトリーナの残り物でホルムアルデヒド汚染の可能性ある数千台のトレーラーをハイチにに送るよう圧力をかけているが、このアイデアは貧しい人々にアメリカの低品質製品を押し付ける愚かで利己的な試みであるとして人々から非難されている。

 ”どんどんやればいいのさ。そして彼らの死亡保証書にサインしなさい”とアラバマ州コデンのポール・ネルソンは述べた。彼の母親は米連邦緊急事態管理庁(FEMA)が支給したトレーラーの中でホルムアルデヒドの揮発ガスのために死亡した。

 10万台のトレーラーが、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)のハリケーン・カトリーナ災害への対応の失敗のシンボルとなった。政府は、2005年のハリケーン被災者の住宅用にトレーラーを購入したが、人々が病気になり始めた後に、建材中で使用され、呼吸困難や恐らくがんを引き起こす化学物質であるホルムアルデヒドを高レベルでトレーラー内で検出した(訳注1)。多くのトレーラーは長年放置され、その多くは損傷を受けた。

 ハイチでのアメリカの支援を調整している米国際開発局はその様なトレーラーを地震被災国に送り込むことに関心はないと述べた。 FEMAの報道担当官はコメントすることを断った。

 ハイチ文化コミュニケーション大臣マリー・ローレンス・ジョセリン・ラッセングは28日木曜日に彼女はそのような提案は聞いていないが、”私はそれらを使うことはないであろうと思うし、そらを受け入れることはないと思う”と述べた。

 1月15日の FEMAへの手紙で、下院議員(民主党、ミシシッピー州)で下院国土安全保障委員会議長のベニー・トンプソンはトレーラーは一時的な避難場所叉は緊急診療所として使われるれるであろうと述べた。

 ”私はこれらのユニットは人の住宅のためには使用されるべきではないと信じているが、もし適切な安全保護がなされるなら、限定的に使用することで、私はそれらは短期的には何らかの便益があると信じる”と手紙に書いた。

 この不況下で数千の仕事がなくなったRV車及びトレーラー産業にとって、これらの車をハイチに送るための圧力は慈善以上の動機がある。

 現在、大量のトレーラーを特別価格で売るために政府運営のオンライン・オークションで引き合いが実施されており、RV車産業は新製品の需要が減少するのではないかと恐れている。現在までの応札額は、新車で市価2万ドル(約180万円)のものが500ドル(4.5万円)以下である。

 RV車産業団体のロビーストら−インディアナ州エルクハートのいくつかの主要な製造会社を含み、その中にはガルフ・ストリーム社がある−は、議員、政府、及び災害対策当局とそれらのトレーラーをハイチに送り込むことが出来ないか協議を続けてきた。

 ”RV車産業にとって今の時期に非常に安い価格でトレーラーが市場に出るのは具合が悪い”と同団体の報道担当ケビン・ブルームは述べた。

 トレーラーがどのくらいホルムアルデヒドを含んでいるのか、叉は現在は含んでいないのか、分からない。オークション・サイトはトレーラーは化学物質のテストがなされていないかもしれないと警告しており、 FEMA は購入者は、オークションのトレーラーを住宅には使用しないとする合意書に署名しなくてはならないと述べた。ブルームは、大部分は”完全に安全”であり、”問題があるかもしれな一握りのトレーラー”は除去できると主張する。

 トレーラーの中のホルムアルデヒドの揮発ガスは時間がたっているので弱まっているかもしれないが、ハイチの高温で湿度の高い気候では放出されるガスの量は増えるであろうとシエラ・クラブのホルムアルデヒド・キャンペーン・ディレクターであるベッキー・ジレットは述べた。

 ミシシッピー州キルンで夫と5人の子ども達と共に2年間、FEMAのトレーラーに住んで病気が発症したと主張するリンゼイ・ハッカビーは、”何らかの避難場所は、何もないよりよい”が、厳格な管理と警告を行わないのなら、FEMAのトレーラーをハイチに送るという考えはよくないと述べた。

 ”私はアメリカ人にとってよくない製品を押し付けるのは非常に利己的であると思うと彼女は述べた。”皆さん、私達はここで良いことをしているのよ!”

 エルマイト・ベランデはハイチの3階建ての彼女の家を失って以来、避難場所がない。それでも彼女はトレーラーを望んでいない。”私達には何もない”と彼女は嘆き悲しむ。”しかし、私は化学物質が充満する金属の箱の中にいるより外で寝る方が良い”。

 首都ポルトープランスの飛行場の近くのテント村に避難場所を見つけることを希望しているジョセフ・パキウスは同意しない。”トレーラーは暑く、私達を病気にするかもしれない。しかし私達がどのように暮らしているか見てほしい。どうすることが出来るのか?”

 マリアン・ベルーブは彼女の壊れた家は安全ではないと感じるのでテントで寝泊りしている。”もしトレーラーが良くないなら、アメリカ人はそれを彼らのためにとっておけばよい。私達が貧乏なのは事実であるが、もし彼らが私達を助けようと望むなら、良いやり方でしてほしい”と述べた。

 この考えを支持する議員の中で、ミシシッピー州議会上院議員ビリー・ヒューズは、”もし私が避難場所なしか、多少のガスがあるかもしれない避難場所に住む機会のどちらかを選ぶとすれば、それはもちろん決まっている”と彼は言った。”もし、これらのトレーラーがミシシッピーの人々にとってよいものであったなら、ハイチの人々にもよいはずである”。


訳注1
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化学物質問題市民研究会
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