テレグラム&ガゼット 2007年6月12日
マサチューセッツ州議会 有害化学物質禁止法案
10カテゴリーの化学物質


情報源:TELEGRAM & GAZETTE - June 12, 2007
State ban on toxic chemicals proposed
By John J. Monahan TELEGRAM & GAZETTE STAFF
http://www.telegram.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20070612/NEWS/706120636/0/FRONTPAGE

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_07/07_06/070612_Mass_ban_toxic_chemicals.html


【ボストン】マサチューセッツ州内で、長らく持ち望まれていた、10種類の有害物質について使用を中止し、職場からそれらを排除し、販売店から製品を撤去することを求める法案が昨日、支持者らによって提出されたが、一方批判者らは有用な製品を排除することになると述べた。

 ドライクリーニング、農薬、溶剤、建材、家具、及び電子機器で使用されているある種の化学物質について、より安全な代替物質を求める提案についての議論が同法案の公聴会で延々と続いた。この法案は議員の大部分に支持されているが、この数年間、立法化されることはなかった。

 健康、環境、労働及び医療の関連団体を含む唱道者らは、欧州連合による同様な有害物質廃止(訳注1)により来年にはこれらの基準にアメリカ製品が合致するすることを求められると主張している。

 この法案は、州が産業側によって使用されている目標とする特定の有害化学物質を調査し、より安全な代替が入手可能かどうか調べるためのあるシステムを作り上げることになる。もしより安全な代替があるなら、産業側はそれに代替するための計画を開発するか、または与えられた用途に対して技術的にまたは経済的に実施可能な代替品は存在しないことを示さなくてはならない。

 目標とされる10物質は、鉛、ホルマルデヒド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ダイオキシン類とフラン類、六価クロム、有機リン農薬、ポリ臭素化ジフェニールエーテル類(PBDEs)、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)であり、これらの全ては環境暴露による健康懸念に関連している。

 同法案の下に、化学物質廃止の期限は、製造の変更に伴うコスト及び代替物質の入手可能性を考慮して、同州の環境保護局によって設定される。

 同法案推進者らは、昨年、子ども用の運動靴のおまけで配布された鉛入りの腕輪の飾りに始まり歯磨き中のホルムアルデヒドまで、子どもたちによって使用される製品中に存在する有害物質の数多くの事例を挙げた。彼らは、州は疑いをもたない消費者を健康リスクを及ぼす物質から保護する責任があると主張した。

 マチューセッツ工科大学(MIT)の技術教授ニコラス A. アッシュフォードは、産業側はリスクのある要素を自身の製品から排除するための行動をとってこなかったのだから、この法律は必要であると述べた。”より安全な技術はそこにあるし、数年間も存在していたのに、産業側はそれを採用してこなかった”とアッシュホールドは述べている。

 彼は、産業側は一般に実際的な又は経済的なものよりも、象徴的な理由のために反対している。”産業側は何をすべきかを指図されることを望まない”と彼は述べた。

 タフツ大学の経済学者フランク・アッカーマンは産業側が主張している”より安全な代替物質を使用するとコストが高くなる”ということはありそうもなく、有害化学物質への環境暴露から生じる子どもの疾病の治療のためのコストは数十億ドル(約数千億円)になると述べた。彼は、消費者はしばしば製品中の有害成分について知っておらず、彼らはどの化学物質が健康問題を引き起こすのか知る術を持たないと述べた。

 ”両親は、子ども達を化学物質からどのように守るかについて知るために、化学の学位を持っていなければならないということではないはずである”と彼は述べた。

 ある産業は、ある製品や物質について反対の意思表示をした。

 マサチューセッツ医療機器産業協議会代表トーマス J. ソマーは、この法案は、殺菌することができ透明な血液保存バッグ及び医療用チューブのために一般的に使用されているプラスチック可塑剤であるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)を含む全ての製品を禁止することになると環境天然資源委員会で述べた。

 彼は、米食品医薬品局によるテストは、人々がこの物質を使用することで”暴露リスクを受ける証拠は何もない”ことを示し、長年にわたる広範な研究にもかかわらず、政府機関は医療機器での使用を通じて危害を引き起こす証拠はないことを示した−と述べた。

 DEHPはフタル酸化合物と呼ばれる化学物質の一族であり、ビニルを柔らかくするために使用される。しかしフタル酸化合物は容易にビニルから液体中に溶出する。DEHPは、発がん性、生殖毒性があり子どもの口の中で溶出する可能性があるので、1986年以来、赤ちゃんのおしゃぶりでは使用されていない。

 医療機器メーカーであるへモネティクス社の副社長マーク・プロビスキー博士は、DEHPを含む血液バッグは毎年500万人の患者に、”明確なリスク”を及ぼすことなく使用されている。彼とソマーはこの法律は代替が実施可能でない場合には例外を認めるという議員らの主張に異議を唱え、この法案を完全に廃案にするよう勧告した。

 マサチューセッツ州上院議員ステファン M. ブルーアー(共和党)は公聴会で、州議会は新しい立法を起草する時にしばしば例外を設けており、この法案が必要な用途については許可することで問題があるとは思わないと述べた。彼は、200年の歴史は、産業側は、消費者と労働者の安全のために”無理やり(kicking and screaming)”変化させられてきたと述べた。

 ”時には我々は産業界に正しいことをさせるために圧力をかけなくてはならない”とブルーアーは述べた。


訳注1
EUのRoHS指令:(電気電子機器における特定有害物質使用制限指令)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/RoHS_Directive_Summary.html

第4条 防止  EU加盟国は、2006年7月1日以降、新たに上市される電気電子機器は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)を含まないようにさせること



化学物質問題市民研究会
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