ES&T 2006年9月6日
農薬が託児所に潜む
初めての全国子ども暴露調査


情報源:Environmental Science & Technology: Science News, September 6, 2006
Pesticides lurk in daycare centers
The first national study to examine pesticide exposure in daycare centers finds some mixed results.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/sep/science/pt_daycare.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_09/060906_est_pest_daycare.html


 数百万人の子ども達が託児所にいる間に農薬に暴露している−アメリカの託児所の残留殺虫剤の全国調査がこのような結果を出した。本日、ES&T の ASAP ウェブサイトに掲載された研究(DOI: 10.1021/es061021h) (訳注1)では、低濃度の有機リン系及びピレスロイド系農薬を検出した。健康への影響は明確ではないが、この結果は子ども達がこれらの化学物質から受けるリスクについての疑問を提起する。アメリカでは1,300万人以上の子ども達が託児所の世話を受けている。

 ”我々はどの託児所からも少なくとも1種以上の農薬を検出した”−と米EPAの国立暴露研究試験所の研究者で報告書の主席著者であるニコル・ツルブは述べている。ツルブは濃度は非常に低いと述べている。彼女はこれらの濃度が有害かどうかに関してコメントしなかったが、現在そのような暴露についての勧告も国の基準も存在しないと述べた。

 この研究で研究者らは全米の168か所の託児所を選定した。それぞれの託児所で技士が床やテーブルのような屋内の表面をふき取って試料を採取し、また屋外の遊び場から土壌を採取した。各施設の管理者はクリーニングと防虫管理方法についての質問を受けた。研究者らは39種の農薬をテストし、託児所の63%が10種類までの異なる殺虫剤を散布していると報告した。有機リン系とピレスロイド系農薬が最もしばしば検出され、最も多くの農薬が検出された4つの託児所のうち3つは南部にあり、そこは暖かい気候で虫が多いところである。

 この研究は託児所の職員に最も安全な方法で害虫を管理することを教えるよい機会を与えるものである−とジョーンズ・ホプキンズ大学の応用健康学の教授で、元EPA職員として農薬プログラムを担当していたリン・ゴールドマンは述べている。”これらの化学物質は子ども達の周りでは避けるべきであり、もし必要なら、子ども達の手が届かないようにすることができるなら、床や表面に残留物を残さない捕集器(bait traps)が好ましい”−と彼女は述べている。

 ゴールドマンは、EPAが子ども達がどの位農薬暴露に直面しているかを特性化するためにこの研究結果を利用しなかったことに失望したと述べている。”これらのデータは興味深いだけでなく、非常に有意義なものである”−と彼女は述べている。

 ラットガーズ大学の環境労働衛生科学研究所の副代表であるポール・リオイも同意している。全暴露を集計すれば、これらの化学物質に敏感な個人を特定することに役に立つと述べている。

 この10年間に多くの州が託児所施設での農薬使用を規制し始めている。2000年には、マサチューセッツ州は子ども達の農薬暴露を制限するために全ての学校に対し統合害虫駆除(IPM)計画をの提出を義務付ける法律を通過させた。そしてニューヨーク州の議員らは最近、営業時間内は託児所での農薬の散布を禁止する法案を提案した。一方、カリフォルニア州では、託児所のオーナーは害虫処理を行う時には両親に知らせることを求める法案を検討中である。

 しかし、リオイはまた、殺虫剤は全て悪いわけではないと言及している。これらの化学物質は、ある子ども達にはアレルギーを起こすことがあるゴキブリを殺す。殺虫剤の賢い使用と完全な害虫管理計画が用心というものであると彼は述べている。

 ポール D. サッカー(PAUL D. THACKER)


訳注1
米化学会2006年9月6日ウェブ掲載論文アブストラクト紹介/多成分同時分析手法を用いた第1回全国託児所環境健康調査からの農薬測定(当研究会訳)


化学物質問題市民研究会
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