EHP 2003年12月号フォーラム
化学物質への暴露:ファーストフード もう一つの恐れ
パーフルオロケミカルズ(PFCs)


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 111, Number 16, December 2003
Forum
Chemical Exposures : Another Fast-Food Fear
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2003/111-16/forum.html#anot

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_03/03_12/03_12_02_ehp.html


 ある有毒化学物質が、消費者はほとんど予想もしないような所に現れるかもしれない。例えばファースト・フードの容器である−と、ワシントン D.C. の非営利環境団体 ”エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ Environmental Working Group (EWG) ” の広報担当部長ローレン・サッチャーは述べた。
 テフロンのような性質を持った非常に短鎖な重合体であるフルオロ・テロマーは、フレンチ・フライの容器やビザパイの箱など、紙やボール紙の容器の油滲出防止処理に使われている。そしてテロマー(短鎖重合体)自体は通常の使用では特に害はないが、体内に取り込まれるとパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する。 PFOA はまた、フルオロポリマーの製造で使用される成分でもあり、フルオロ・テロマーの中にも微量が存在する。

 PFOA による人間の健康への影響はまだ確認されていないが、この物質が環境中いたるところに存在するようになったことが、懸念を引き起こしている。2001年に 3M 社 (当時の PFOA 製造者) から政府に提出された調査研究では、全米23州及びコロンビア地区で検査を行った598人の子どもたちのうち、96%の子どもたちの血液中にこの化学物質が含まれていたとEWG のサッチャーは述べている。EWG は、容器から食物に移った PFOA を摂取すること、及びテロマーが埋立地やその他の廃棄経路で分解して PFOA が環境中に入り込むことを懸念している。

 どの製品がフルオロ・テロマーを使用しているかを特定することは簡単な事ではない。これらのテロマーは規制されておらず、ほとんどの容器がそれらを含んでいることを表示していない。それらは典型的には製紙工場で使用されており、油滲出防止処理された紙が容器製造者に供給され、そこから食品店に容器として供給される。

 2003年3月、アメリカ環境保護局 (EPA) は、有毒物質管理法 (Substances Control Act) の下に、重点的な検証作業に着手した。その検証は人々の血中に PFOA が存在することを示す限定されたデータと、動物実験データに基づいており、その動物実験データは潜在的な発達及び生殖毒性、肝臓毒性、及び発がん性を示すものであった。2003年4月の連邦登録 (Federal Register) で、 EPA は PFOA の暫定的なリスク評価を発表し、今後のリスク評価の公開プロセスの概要を説明した。

 2003年7月、 EWG は全米の最も大きなレストラン・チェーン 9社、バーガー・キング、KFC、クリスピー・クレム、マクドナルド、ピザ・ハット、スターバックス、サブウェイ、タコ・ベル、及びウェンディズに、彼らが使用している化学コーティングのタイプを報告するよう要請した。2003年10月現在、レストラン・チェーンで EWG に直接回答した所はどこもなかった。しかし、特定の容器にフルオロ・テロマーを使用しているマクドナルドや、フルオロ・テロマーは使用せず、代替として粘土ベースの製品を専用に使用しているクリスピー・クレムなど何社かは、EWG の調査公表に基づく強い要請により回答してきた。

 「我々が答えなくてはならない質問は、人々がどのように PFOA に暴露しているかである」 と EPA の渉外担当官デービッド・ディーガンは述べた。科学者たちは、どのような経路でその化学物質が血液の中に入り込んだかを見つけ出すために急遽、調査を始めた。ディーガンは、食品容器が実際に暴露の源かどうか分からないし、 PFOA はそのような包装材から検出されたことはなかったと述べた。

 しかし、EWG のサッチャーは、紙製品に用いられたバーフルオロケミカルズが最終的に血中に現れた前例があると述べている。 3M 社が実施し、 EPA が検証した 3M 社内部の監視調査が、少なくとも 1 つの紙保護用バーフルオロケミカルの代謝物質が、テストした子どもの85%を含む人間から容易に検出されたことを示している。サッチャーは PFOA のようなバーフルオロケミカズは人間の体内で推測 4.4年の半減周期を持つと述べている。

 「我々は、紙製品を PFOA が環境に漏れ出す可能性のあるいくつかの経路の 1 つとして見ている」と現在の PFOA の製造者であるデュポン社の広報担当ミッシェル・レアドンは述べている。しかし彼女は、他の多くの経路についても調査中であると述べている。
 フルオロテロマーはまた、消火器用泡、革製品、じゅうたん、汚れ防止処理ズボンなどの衣類、その他多くの処理に用いられている。これら PFOA 暴露の潜在的な汚染源と経路を洗い出すことが EPA の検証で重要なことの一つであると EPA のディーガンは述べている。

 一方、 EWG のサッチャーは、環境団体は企業、特に食品業界が、 PFOA を潜在的に拡散させる恐れのある容器の使用をやめることを望むとして、 「彼らはそれを使用する権利があるが、連邦法の裁きを受けることになる。一方、健康を守る団体として我々は、彼らが代替品を見つける努力をすることを望む」 と延べている。

スコット・フィールズ (Scott Fields)


訳注
エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ Environmental Working Group (EWG) の報告書 『PFCs: A chemical family that contaminates the planet』 は、 『地球を汚染する過フッ素化合物類 PFCs』 として当研究会ウェブで翻訳紹介しています。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る