バーゼル・アクション・ネットワーク 2003年11月28日
カナダ アスベストの国際輸出入管理リストへの追加を阻止
ロッテルダム条約による不都合を予想して

情報源:BASEL ACTION NETWORK
CANADA BLOCKS FULL ASBESTOS LISTING,
PREDICTING DIFFICULTIES FOR ROTTERDAM CONVENTION

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_03/03_11/03_11_canada_asbestos.html


【2003年11月28日 Edie News Service 】
 カナダがアスベストの一種、クリソタイルを輸出入管理の国際リストに加えることを引き延ばしたことは、ロッテルダム条約における経済的に価値ある物質を規制することが難しいことを示している。

 今週、先進国および発展途上国は、ロッテルダム条約について討議し、アスベストの全種類の及び2種類の危険農薬について、それらを輸出する前に、輸入国から事前通報同意(prior informed consent (PIC) )を得なければならないとするリストに加えるべきかどうかについて決定するために、ジュネーブで会合した。

 アスベストの一種、クリソタイルを PIC のリストに追加することに対するカナダの反対意見に、ロシア、ウクライナ、中国、インド、ジンバブエ、インドネシア、南アフリカ、及びコロンビアも同調した。

 これは、全てのアスベスト、すなわち、アモサイト、アクティノライト、アンソフィルライト、トゥレモライト、及び、クリソタイルをリストに加えるべきとする 2001年の ”ロッテルダム条約暫定化学物質検討委員会” の勧告に真っ向から反対するものである。
 今回の会議において、クリソタイル以外の 4種のアスベスト及び、殺虫剤 DNOC を含む 2種の化学物質をリストに追加することについては同意された。第6のアスベストであるクロシドライトはすでにリストに記載されている。

 国連環境計画 (UNEP) は、国際貿易における危険化学物質と農薬のための事前通報同意に関するロッテルダム条約の目的を、消費者、作業者、及び、環境を守ることとしている。先進国では禁止、あるいは規制されている多くの物質が、いまだに発展途上国では使用されている。ロッテルダム条約は、これらの化学物質についての取引と情報に対し、より透明性を与えようとするものである。

 ロッテルダム条約は来年2月に発効の予定であるが、クリソタイルを加えるかどうかの決定は将来に先延ばしされた。経済的な価値がある物質についての投票がなされたのは今回がはじめてであると国連環境計画 (UNEP)のスポークスパーソンは記者に述べた。

 カナダはこの問題については更なる協議が必要であるとし、ロシアは、この物質をリストに載せることの科学的根拠について疑問を呈した。 「PIC のリストに追加したい経済的に価値のある物質が他にもある。もし、将来、クリソタイルが投票で否決されるようなことがあれば、このような他の経済的に価値のある物質にも影響を与えるであろう」 とスポークスパーソンは述べた。

 クリソタイルは、アスベストの中で最も広く使用されており、最も発がん性があると、WWF のスポークスパーソンは記者に述べた。
 WWF の世界有毒物質プログラムのディレクター、クリフトン・カーティスは、カナダ及び反対諸国は、遅延戦術でロッテルダム条約を妨害しているとして、 「クリソタイルは疑いの余地なく、同条約の要件を満たしており、リスト追加に露骨に反対するこれらの国々は、この条約への義務を無視するものである。この条約は、これらの物質を禁止することを目的としているのではなく、輸出における透明性を確保しようとしているだけである。もし、クリソタイルにこの措置をとることができないのなら、他の化学物質はどうなるのか?」 と述べた。


訳注:
カナダのアスベスト製造の状況については、当研究会訳の下記資料を参照ください。

2003年9月カナダ・アスベスト会議 概要/カナダのアスベスト : 世界が懸念する

また、ロッテルダム条約についての関連情報は下記をごらんください。
ロッテルダム条約 危険化学物質の事前通報同意条約 発効へ/途上国へ輸出される危険農薬の取り扱い情報の提供義務付け



化学物質問題市民研究会
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