マサチューセッツ州
有毒物質使用削減条例 (TURA) の紹介

概要成果
情報源:Toxics Use Reduction Institute
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月14日

TURA の概要
An Overview of TURA


 有毒物質使用削減条例 (Toxics Use Reduction Act (TURA)) はマサチューセッツ州において、マサチューセッツの企業の経済的活力を向上させる、より安全でクリーンな製造を推進するために、[1989年に]制定された。
 有毒物質使用削減 (Toxics Use Reduction (TUR)) は、製造プロセスにおける有毒化学物質の使用と廃棄物の発生に着目する汚染防止の基本的な形態である。それは発生してしまった廃棄物の管理や処理へのアプローチではない。

 有毒物質使用削減条例 (TURA)  は、少しでも廃棄物を削減しようとする、もっと効率的な事業運営のための ”計画ツール” である。有毒物質削減 (TUR) は、事業所内おいて、有毒化学物質の使用、危険廃棄物の発生、(大気や地中への)排出、製造設備毎の副産物を削減、回避、又は、除去しようとするものである。

TURA の目的
  • 有毒物質使用削減の手法により、1997年までに有毒廃棄物の発生を 50%削減することを全州の目標として設定すること

  • 有毒物質の製造と使用、危険廃棄物、産業衛生、作業者の安全、有毒物質への公衆の暴露、又は、有毒物質の環境への放出に関する連邦政府及び州の法律遵守を達成し、有毒又は危険な物質の使用と有毒又は危険な物質又は危険な廃棄物の製造・生成を最小限にするための望ましい手法としての有毒物質使用削減を確立すること

  • 有毒物質使用の削減と管理を行うことで革新をはかりながら、マサチューセッツ州の産業界における大小ビジネスの競争力を維持し、守り、促進すること

  • この条例の第3節により設立されるプログラム及び有毒物質に関連する既存の州の諸プログラムを通じて、共通の社会の中で有毒で危険な物質の製造と使用の削減を推進すること

  • 共通の社会の中で既存の環境法と規制の強化をはかること

  • 有毒物質関連プログラムに関わる州の全ての部局及び機関の調整と協力を推進すること

 有毒物質使用削減条例 (TURA)  は、登録された有毒化学物質を所定量以上使用するマサチューセッツ州の企業に対し次のことを要求する:
  • ”有毒物質使用削減計画” を作成し、その中で、どのように、そしてなぜ、有毒化学物質が施設内で使用されているのか検証し、選択可能なものがないかを評価すること

  • 使用した有毒化学物質、副産物(廃棄物)として生成された有毒化学物質、及び製品として出荷された有毒化学物質の量を報告すること

 TURA プログラムの目標は、マサチューセッツ州の危険廃棄物の生成を、地域の企業の成長と繁栄を妨げることなく、1997年までに50%削減することである。これは州全体の目標である。個々の企業は自身の TURA プログラムを設定することができる。

 有毒物質使用削減は、公衆の健康と環境を危険な汚染から守る最良の方法である。この方法は、輸送と保管における大きな事故のリスクを減らし、職場における危険な暴露から作業者を守り、そして我々、消費者にとってより安全な製品を製造してきたし、今後もするであろう。

TURA の簡単な歴史

 1989年、マサチューセッツ州環境保護局(DEP)の努力により、相対立する両者、すなわち、産業側と環境推進側との交渉が進められた。両者は、”マサチューセッツ産業協会(Associated Industries of Massachusetts (AIM) )” と ”マサチューセッツ公共利益研究グループ(Public Interest Research Group (MassPIRG))がそれぞれを代表した。

 1993年春に刊行された『危険物質管理(Hazardous Materials Management)』はこの間の経緯について、 「両者は、MassPIRG のメンバーによって提案された ”化学物質使用制限と禁止”についての法案に関して、及び、制限と禁止に関する疑念は1990年の選挙の結果に現れるであろうということに関して、合意した」 と述べている。
 さらに産業側は、危険で有毒な化学物質の環境への放出を削減することになる制限について、それが化学物質の禁止や会社が州から出て行かなければならなくなうような条件を伴わない限り、合意するとした。
 両者はそれぞれある妥協について合意することで、わが国初の、この包括的汚染抑制法案が発効した(Raddatz, 1993)。
 この最終法案に関し、 AIM と MassPIRG の双方が協力して支持し、マサチューセッツ州の両議会が満場一致で採択し、当時の州知事デュカキス(Dukakis )が、1989年7月24日に署名した。


TURA の成果
Results To Date

 過去11年間、マサチューセッツ州の製造業者は、マサチューセッツ州の環境を守るために、州政府とともにTURA プログラムを実施してきた。有毒化学物質の使用、廃棄物、及び排出に関する削減の成果はすばらしいものであった。

 1990年以来、約1,000の州内企業が ”有毒物質使用削減プログラム” に参加した。そのうち、約450社が、様々な理由により、、落伍したが、450社のほとんどは、登録された有毒化学物質の使用を削減した、あるいは排除したたことが脱落の原因であった。

 TURA の実体をなすものは、産業界と化学業界が1990年以来、毎年提出を要求される報告書である。2000年には、TURA プログラムの下、有毒物質の大口使用者である559社が報告書を提出した。1990年から2000年の間に、TURA プログラム参加主要グループの報告によれば、生産量は全体で約45%増大した。TURA データは、TRI 製造比として報告されている設備を使用した製造における影響変化を排除するために、調整されている。

 2000年報告データを製造用に調整すると、TURA プログラム参加メンバーは1990年から2000年の間に、有毒化学物質の使用を40%削減したことになる。同じ調整方法を使用すると、TURA プログラム参加メンバーは、製品のユニット当たり58%、副産物又は廃棄物の生成を削減したことになり、TRI に報告されている事業所での排出を90%削減したことになる。
 製品中に含まれて出荷された化学物質の量は過去に変動はあるが1990年以来、47%減少している。


訳注 : TRI (Toxic Release Inventory)
 1988年以来アメリカで実施されている有害化学物質排出目録(TRI)の制度であり、2002年5月に EPA が発表した2000年度分 TRI データに関する発表については、当研究会訳による下記を参照ください。

 アメリカ環境保護局(EPA) 有害化学物質排出目録(TRI) 最新版(2000年度版)を発表





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