アメリカ環境保護局(EPA)
有害化学物質排出目録(TRI)最新版(2000年度分)を発表

情報源:EPA Newsroom, May 23, 2002
Whitman Announces Availability of Latest Toxic Release Inventory
http://www.epa.gov/epahome/headline_052302.htm
訳: 安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2002年5月25日



 アメリカ環境保護局(EPA)は本日、有害化学物質の環境への排出量に関する年次報告を発表した。同報告書によれば全体の排出量は減少傾向にある。アメリカ全土での化学物質総排出量は、利用可能な最新データである2000年に約7億ポンド(約30万トン)減少した。今年の有害化学物質排出目録(TRI)の報告書には新たにダイオキシン、水銀、PCB類のような残留性生体蓄積有害化学物質(PBT)に関するデータが加えられ、各地域に対し環境中の化学物質のより完全な実態を提供できるようになった。EPAへの報告によれば、環境中への化学物質総排出量は1999年の78億ポンド(350万トン)から2000年の71億ポンド(320万トン)に減少した。有害化学物質排出目録(RTI)の制度が開始した1988年以来の傾向を見ると約48%減少している。

 「有害化学物質排出目録(TRI)は、市民が地域の環境状況を評価する上で、また環境を保護するための方針を決定をする上で、助けとなる強力なツールである。私は、環境中に長期間残留し、人間や環境中に蓄積する残留性生体蓄積有害化学物質に関するデータが新たに追加されたことをうれしく思う」と EPA 長官クリスティ・ウィットマンは述べ、さらに「これらのデータを他の環境情報と併せてアメリカ全体及び各地域の環境指標の傾向を分析するために用いることが重要である」と付け加えた。

 化学物質の排出先を見ると、約27%が大気中、4%が水中、69%が陸地である。前年度と同様に2000年の金属鉱業からの排出量は群を抜いており全体の47%、あるいは34億ポンド(約150万トン)であるが、これは1999年の排出量から14%減少している。製造業からの排出量は32%又は23億ポンド(約100万トン)で1999年比で2.6%減少、発電産業からの排出量は16%又は11.5億ポンド(約52万トン)で1999年比3%減である。

 2000年TRIデータとTRIプログラムに関する情報はウェブサイトhttp://www.epa.gov/tri/ で入手可能である。TRI EXPLORER と呼ばれる特別探索ツールも同ウェブページで入手できる。これはユーザーがデータを施設別、化学物質別、産業別に、群、州及び国レベルで分析できるようにするツールである。これらのデータが入手できることにより、有害化学物質汚染削減の進捗状況を測ることができる。

 1999年に EPA は、ダイオキシン類を含む新たに追加された残留性生体蓄積有害化学物質(PBT)について、他のTRI化学物質よりも低いしきい値に基づき報告するよう要求した。1999年の改定により EPA はすでに登録されていた13種類のPBTに対しより低いしきい値を設定した。

 2000年度の化学物質報告書作成のためのデータ整理にあたって、600以上のTRI報告施設が”TRI-ME” または ”TRI Made Easy”と呼ばれるEPAの新たな対話式レポーティング・ソフトウェアを使用した。各施設のTRI報告書作成を支援するこのプログラムは2000年の報告書作成に限定されていたが、今年度は2001年報告書作成用にすべてのTRI報告施設に送られた。TRI-ME は報告書作成を簡単に手早くできるようにし、またTRIに提出するデータの品質を改善するものである。

 有害化学物質排出目録(TRI)は、1986年の緊急計画及び市民の知る権利条例のもとに設立された。当時のリーガン大統領によって署名されて立法化されたこの法律により、TRIプログラムは、各産業施設が大気、水中及び陸地に排出する有害化学物質の年間量を公表することを義務付けた。全体としてTRIは、650以上の有害化学物質の排出及び廃棄物管理に関する情報を含んでいる。現在入手可能なデータは、製造業、金属鉱業、石炭採鉱、石炭あるいは石油を燃料とする火力発電、危険廃棄物処理施設、化学物質卸売り流通業、石油精製施設及びターミナル、溶剤回収施設からの報告に基づいている。今年度のデータは23,500施設から提出された約91,500件の報告に基づいている。

 TRI年次報告は、化学物質の排出と廃棄物管理を反映したものであるが、人々の化学物質への曝露を表したものではない。排出量の合計だけでは曝露や人間の健康や環境への影響の推定を行うためには十分ではない。潜在的な危険性を決定するためには、毒性、排出後の挙動、排出場所、人口密度など多くの要因を考慮に入れる必要がある。

 新たなEPA2000TRIデータは下記ウェブサイトで入手可能である。
http://www.epa.gov/tri/tridata/tri00/index.htm



化学物質問題市民研究会
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