米会計検査院(GAO)報告書 2005年6月(概要)
化学物質規制
健康リスクを評価し、化学物質検証プログラムを管理するための
EPAの能力を改善する選択肢がある

情報源:Chemical Regulation: Options Exist to Improve EPA's Ability
to Assess Health Risks and Manage Its Chemical Review Program,
GAO-05-458, June 13, 2005

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年8月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/GAO/GAO_Report_June_200_Abstract.html

訳注:
 この報告書概要は米上院・環境公共事業委員会の上院議員ジム・ジェフォーズらの求めに応じて米会計検査院(GAO)天然資源・環境ディレクターのジョン B. スティーブンソンが書いた報告書をGAOが概要(Abstract)としてまとめたものである。
 有害物質規制法(TSCA)の下で、EPAは既存化学物質の安全情報の入手が困難であること、新規化学物質に関し産業側の上市前テストがTSCAで求められていないことなどを指摘し、有害物質規制法(TSCA)を改正するよう議会に勧告している。
 ジム・ジェフォーズら民主党上院議員5人がこの勧告に基づき、有害物質規制法(TSCA)の改正案”2005子ども安全化学物質法案”を本年7月に提出した。



 化学物質は日常生活において重要な役割を果たすが、あるものは人間の健康と環境に有害である。化学物質は、例えばクレンザー、塗料、プラスチック、燃料などの消費者製品、さらには産業用溶剤や添加剤などを含む、社会で広く使用される製品を製造するために用いられている。しかし、鉛や水銀などのような化学物質はある用量では非常に有毒であり健康と安全の観点から規制される必要がある。
 1976年、議会は有害物質規制法(TSCA)を採択し環境保護局(EPA)に人間の健康又は環境に不合理なリスクを及ぼす化学物質を規制する権限を与えた。
 GAOは、EPAの、(1)まだ上市されない新規化学物質の規制、(2)上市されている既存化学物質の評価、及び(3)TSCAの下で化学会社により供給される情報の公開−に関する取り組みについてを検証した。

 EPAの新規化学物質の検証は、化学物質が上市される前に健康と環境に対するリスクを十分には特定できていない。化学会社は、TSCAにはテスト規定がないので、新規化学物質を上市する前にEPAの検証のためにテストを行うことを求められておらず、一般的にそのようなテストを自主的に行うことはない。
 もし限定されたテスト・データしかなければ、EPAは以前にテストしたことのある分子構造の似た化学物質と比較して新規化学物質のモデルを作ることによりその毒性を予測している。しかし、このようなモデルは化学物質の特性と毒性、特に一般的な健康影響について必ずしも正確ではないので、新規化学物質が上市される前に十分に評価されることを保証するものではない。
 それにもかかわらず、もしテスト・データと健康と安全に関する情報をEPAが入手できないなら、これらのモデルは、潜在的に有害な化学物質を特定するためのスクリーニング・ツールとして一般的には有用であり、新規化学物質の予想される用途や暴露のような他の情報も併用することで、その新規化学物質を検証するための合理的なベースを与えると、EPAは信じている。
 しかしEPAはもっと情報を入手することができれば、そのモデルの予測能力を改善することができるということを認めている。
 EPAは日常的には全ての既存化学物質のリスクを評価しておらず、EPAは評価するために必要な情報を入手することの困難さに直面している。
 有害物質規制法(TSCA)による職権の下で既存化学物質のデータを収集することはEPAにとって一般的に金と時間ががかかり過ぎるので、有害物質規制法(TSCA)はEPAがそれらの物質を検証する上で助けにならない。
 既存化学物質に関する情報が欠如しているという理由もあって、EPAは1998年に、産業界及び環境団体と連携して高生産量化学物質(HPV)チャレンジ・プログラムを立ち上げ、このプログラムの下で化学会社は大量に製造される化学物質の基本的な特性に関する情報を自主的に提供し始めた。
 このプログラムが、EPAが人間の健康と環境に及ぼす化学物質のリスクを決定するために十分な情報を生成するかどうかは不確かである。
 有害物質規制法(TSCA)の下で化学会社から受け取る情報をEPAが公的に共有する能力には限界がある。TSCAは機密ビジネス情報の開示を禁じており、化学会社は提出するデータの多くを機密であると主張する。
 一方、EPAはこれらの機密であるとする主張の正当性を評価する権限を持っているが、数多く出される主張を処理するだけのリソースを持っていないとEPAは述べている。
 州の環境機関やその他の機関は、製造設備における高い毒性を持つ物質の存在について担当要員に警戒態勢をとらせるための緊急事態対応計画を作成するなど、様々な活動に使用するために機密ビジネス情報を入手することに関心がある。
 化学会社は最近、適切な防護措置をとることで、他の組織がこの情報を使用することができるようにするためにEPAと協議することに関心があると表明している。


関連用語:
環境法(Environmental law)
環境監視(Environmental monitoring)
連邦規制(Federal regulations)
健康有害性(Health hazards)
製品評価(Product evaluation)
安全規制(Safety regulation)
有害(毒)物質(Toxic substances)
EPA高生産量化学物質チャレンジ・プログラム(EPA High Production Volume Challenge Program)

■GAO報告書オリジナル:GAO-05-458, June 13, 2005

■当研究会部分訳:米会計検査院(GAO)報告書 2005年6月の紹介 化学物質規制 健康リスクを評価し、化学物質検証プログラムを管理するためのEPAの能力を改善する選択肢が存在する

■当研究会訳:子ども、労働者、及び消費者の有害物質への曝露を低減するための有害物質規制法(TSCA)を修正する法案(米子ども安全化学物質法案


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