IISD 2020年1月6日
SAICM 繊維製品、玩具、建材及び電子機器中の
懸念ある化学物質を低減するための取り組みを詳述する

レイラ・ミード
情報源:IISD, 6 January 2020
SAICM Details Efforts to Reduce Chemicals of Concern
in Textiles, Toys, Building Materials and Electronics
By Leila Mead, Thematic Expert for Climate Change and Sustainable Energy (US)

http://sdg.iisd.org/news/saicm-details-efforts-to-reduce-chemicals-of-concern-
in-textiles-toys-building-materials-and-electronics/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2020年1月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/news/IISD_200106_SAICM_Details_Efforts_
to_Reduce_Chemicals_of_Concern_in_Textiles_Toys_Building_Materials_and_Electronics.html

要点
checkmark.gif(158 byte)’SAICM 下の新規化学物質政策の懸念ある課題に関する世界の最良の慣行’についての GEF 支援プロジェクトは、国家イニシアティブ及びバリューチェーン・イニシアティブの採択を加速することを狙う。
checkmark.gif(158 byte)情報交換は、特に製造者、小売業者、及び消費者にとって、製品中の懸念ある化学物質を特定し、それに対処するのに役立つ。

 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)は、製品中の懸念ある化学物質とそれらの人間の健康と環境への有害影響を最小にするための取り組みに目を向ける政策概要(policy brief)を 2019年11月に発表した。『製品中の化学物質を理解する(Understanding Chemicals in Products)』というタイトルのその政策概要は、SAICM における新規化学物質政策の懸念ある課題に関する世界の最良の慣行についての地球環境ファシリティ(GEF)による支援プロジェクトからの寄稿である。

 政策概要は、世界のサプライチェーン中の化学物質についての情報の透明性は 2009年以来の新規政策課題であり、例えば国連環境計画(UNEP)の、繊維製品、玩具、電子機器、及び建築材料の各分野に焦点を当てる「製品中の化学物質(CiP) プログラム」をもたらしたと言及している。2015年に SAICM は、有害化学物質に関する文書がしばしば存在しない、又はサプライチェーンの外では利用可能ではないその 4つの分野に焦点をあてつつ、CiP を歓迎し、情報ギャップに対処するための協働的行動(cooperative actions)を提案した。SAICM によれば、情報交換は、特に製造者、小売業者、及び消費者にとって、製品中の懸念ある化学物質を特定し、それに対処するのに役立つ。

 玩具中の懸念ある化学物質はしばしば、プラスチック製造中、塗装中、及びコーティング中に、又はリサイクル材料を通じて、玩具のライフサイクルに入り込む。暴露は、ホルモン系又は学習能力を阻害して、子どもたちに長期的な健康影響をもたらす。懸念ある特定の化学物質には、特に、リサイクルされたプラスチックからの残留性有機汚染物質(POPs)、バッテリー中のカドミウム、及び塗料中の鉛などがある。

 電子機器中には、金属などの貴重な物質が含まれ、そのことがリサイクルを魅力あるものにする。再利用及び修理もまた一般的であり、特に医療機器の様な高価な製品に当てはまる。しかし、製品寿命が尽きた段階で電子廃棄物はしばしば発展途上国に輸出され、そこで価値のある資源を回収する労働者が有害物質に暴露する。懸念あ化学物質には、絶縁材中の難燃剤及びスイッチ中の水銀があり、労働者らはまた工場でベンゼンに暴露することもある。

 建材中の有害化学物質の潜在的な汚染源には、リサイクル材料の使用と性能強化のための物質があり、それらは除去するのに費用が高く、建設作業員に有害影響を与え、居住者に室内暴露をさせるかもしれない。建材中の有害物質には、アスベスト、屋外木材中の保存処理剤、照明器具中の水銀、及び塗料中の鉛などがある。

 繊維製品中の有害化学物質の潜在的な汚染源には、防汚処理と綿花栽培における農薬が含まれる。化学物質のあるものは環境中に残留し、体内に蓄積し、免疫系や生殖系に影響を及ぼすかもしれない。

 その政策概要はまた、次のことを通じて懸念ある化学物質を低減するための措置を議論している。
  • 規則、標準、及び認証のメカニズムなどに関する立法と情報システム、並びに順守を可能にするためのブランド・コントロール・サプライヤーの確保
  • ライフサイクル評価ツールやエコイノベーションの様なバリューチェーン全体を考慮する全体論的なツール
  • 暴露を最小にし、クリーンで責任のある生産とケミカル・リースに焦点を当てることを求める生産ツール
  • 持続可能な公的調達とエコラベルを含んで、消費者行動に焦点を当てる消費分析ツール
 GEF 支援プロジェクトは、次のことを促進することにより、国家イニシアティブ及び価値連鎖(value chain)イニシアティブの採択を加速することを目指す。塗料中の鉛を廃止するための規制的及び自主的な政府と産業の取り組み; 製品中に存在する化学物質のライフサイクル管理; 知識管理及び利害関係者の関与。40か国以上で実施されている同プロジェクトはまた、持続可能な開発のための 2030 アジェンダに貢献することを追求している。

関連情報:
 Understanding Chemicals in Products
 SDG Knowledge Hub Story on 57th Meeting of GEF Council


訳注:当研究会が紹介した関連情報
IISD 2019年1月17日 SAICM 懸念ある化学物質の政策課題の最良の実施に関するプロジェクトを立ち上げ



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る