IISD ICCM-4 概要 2015年10月5日
新規政策課題及びその他の懸念ある課題に関する二つの決議:
HHPs に関する単独の決議及び全ての EPIs をカバーする一括決議
並びに
2020年以降の化学物質及び廃棄物の適切な管理に関する最終決議

(部分訳)

情報源 IISD Reporting Services ICCM-4 Summary, 5 October 2015
EMERGING POLICY ISSUES AND OTHER ISSUES OF CONCERN, Final Outcome: two resolutions: one a stand-alone resolution on HHPs, the other an omnibus resolution covering all EPIs.
SOUND MANAGEMENT OF CHEMICALS AND WASTE BEYOND 2020, Final Outcome: The final resolution http://www.iisd.ca/vol15/enb15236e.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年10月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm4/IISD/IISD_ICCM4_Summary_5_October_2015.html


新規政策課題及びその他の懸念ある課題


■最終結果
 金曜日午後(10月2日)、総会は二つの決議を採択した。ひとつは毒性の高い農薬(HHPs)に関する単独の決議、もうひとつは全ての新規政策課題(EPIs)を含む一括決議である。

◆毒性の高い農薬(HHPs)に関する決議 (SAICM/ICCM.4/CRP.16)
  • SAICM の文脈中で毒性の高い農薬(HHPs)に対応した調和のとれた行動を支持し、HHPs に関する FAO/UNEP/WHO 提案の第U部に規定された戦略を評価して歓迎する。

  • 地方、国家、地域、及び国際レベルでその戦略を実施するために、農業生態学に基づく代替とリスク評価とリスク管理を実施するための国家の規制能力を強化することを強調しつつ、 調和のとれた取組みを行うよう関連する利害関係者らに要請する。

  • 適切な化学物質管理のための機関間プログラム(IOMC)の脈絡で国際的な協調の様式を開発するための FAO、UNEP、及びWHO の提案を歓迎する。

  • 適切な化学物質管理のための機関間プログラム(IOMC)の適切な組織が、戦略の実施において利害関係者の連携、協力、及び貢献を促進するよう要請する。

  • SAICM 利害関係者に対して、戦略の実施の進捗に関して事務局を通じて OEWG3 及び ICCM5 に報告するよう要請する。
◆新規政策課題(EPIs)に関する一括決議の見出し文章 (SAICM/ICCM.4/CRP.18) のうち、特に:
  • 継続し強化されるリスク削減とEPIs に関する情報共有の取組みを促する。

  • EPIs の首尾一貫した実施を涵養する必要性を強調する。

  • IOMC の指導的機関とその他の関連利害関係者に対して、 EPIs に関する会議決議の実施の進捗に関して事務局を通じてOEWG3 及び ICCM5 に報告するよう求める。

  • その立場にある全てのSAICM利害関係者に対して、 EPIs に関する将来の作業のためのリソースを提供するよう要請する。

  • 地球環境ファシリィティ(GEF)に対して、その権限の範囲内で全ての EPIs の会議決議の実施を支援するよう要請する。
◆環境残留医薬汚染物質(EPPPs)に関する一括決議
  • 国際的な協調が新規政策課題としての環境残留医薬汚染物質(EPPPs)に関する知見と理解を築き、促進するために重要であることに同意する。

  • 知見と理解を高めるという全体的な目的をもって、政策策定者とその他の利害関者の間で、環境残留医薬汚染物質(EPPPs)に関する協調的な行動を実施することを決定する。

  • 政府と他の利害関係者に対して、特定された知識のギャップを埋めるために情報を生成し、共有するよう要請する。

  • 関連する IOMC 参加組織に対して、作業プログラムの一部としてそれぞれの権限の範囲内で、環境残留医薬汚染物質(EPPPs)作業計画を開発するための協力的な行動を主導し、促進するよう要請する。

  • 関心を持つ全ての利害関係者及び組織に対して、自主的なベースでそのような協力的な行動に関して支援を提供するよう求める。

  • 関連する IOMC 参加組織と他の SAICM 利害関係者に対して、会議で決定されたように、協力行動に関してICCM5 又は他の会議に報告するよう要請する。
◆塗料中の鉛に関する一括決議

 塗料中の鉛に関して一括決議は、政府、市民社会組織、及び民間企業に対して”鉛塗料廃絶世界連合”の作業に参加し、2020年までに塗料中の鉛を廃止するという目標の達成を支援するよう促す。また、SAICM 利害関係者に対して塗料中の鉛の使用を廃止するために、規制を含んで、効果的な措置の可能性ある確立に目を向ける国家及び/又は地域の議論を促進する及び/又は始めることを促す。

◆製品中の化学物質(CiP)に関する一括決議
  • 自主的な枠組みとしての CiP プログラム文書を歓迎する。
  • SAICM 利害関係者の必要に対応するようになる随時更新文書としての CiP ガイダンスを評価し、参加者らが実施において、適切なら、そのガイダンスを考慮するよう促す。

  • 民間企業、政府、政府間組織、及び労働者組織を含む NGOs は CiP プログラムの実施に関して積極的に参加し、報告するよう促す。

  • 全ての利害関係者らに対して、更なる作業のために、適切な人材、資金、及び現物でのリソースを提供するよう要請する。

  • SAICM 利害関係者の代表を含めるよう世界連合運営グループの権限を新たにする。

  • リサイクル産業からの代表を運営グループに含めるよう提案する。

  • 運営委員会に対して利害関係者の意見を聞きながら、それ自身の委託事項(terms of referenc)を開発し、採択することを求める。

  • リソースが利用可能なら、UNEP に対して 下記のために CiP の主導を継続するよう要請する。

    • 活動を促進し、容易にする。
    • 必要に応じてガイダンスの定期的な更新を調整する。
    • OEWG3 と ICCM5 に包括的な進捗レポートを提供する。
    • ウェブ上にプログラムを維持する。
    • 運営委員会と調整しつつ、特に発展途上国及び移行経済国において、利害関係者の能力構築と意識向上に関与する。
◆電気・電子製品のライフサイクル中の有害物質に関する一括決議

 電気・電子製品のライフサイクル中の有害物質に関して、一括決議は UNIDO に対して、 IOMC 組織と関連利害関係者と連携して、SAICM/ICCM.4/INF/18 に規定されている 2016-2020 作業計画を開発し最終的なものにするためのプロセスを引き受け、ICCM5 に提出される報告書の一部として進捗指標を含めるよう要請する。それはまた、次のことを促す。
  • SAICM 利害関係者、特に国際労働機関は、廃棄物管理とリサイクルはもちろん、サプライチェーンを通じて電気・電子製品の製造における労働者の安全に目を向けつつ 作業計画を開発し実施するための彼らの関与と取組みを強化するための対策を講じること。

  • 相手先ブランド名製造者(OEM)は、持続可能で効果的な引き取りプログラムを開発し実施し、産業衛生と環境監視プログラムを確立し実施するために、サプライチェーンとともに活動すること。

  • SAICM 利害関係者らは、2016年に始まるぜい弱な集団とサプライチェーンの関連する利害関係者のために電気・電子製品中の有害化学物質についての唱道、意識向上、情報、及びコミュニケーションを促進すること。

  • SAICM 利害関係者らは、製造時に使用される化学物質を含んで、改善された安全性と持続可能性を備えた電気・電子製品を奨励する購入取組みの実施を推進すること。

  • 関連する利害関係者らは、電気・電子製品のライフサイクル中の有害化学物質に関する情報を入手を容易にするための CiP プログラムの実施を検討すること。
◆ナノテクノロジーと工業ナノ物質に関する一括決議

  • SAICM 利害関係者らは、化学物質及び廃棄物分野の調整と協力を強化するという目的を考慮しつつ、規制の枠組みを含んで、関連する国家及び国際的法律文書の中で、工業ナノ物質の適切な管理に目を向けること。

  • ライフサイクルを通じて工業ナノ物質の適切な管理に関する情報交換の促進を続ける必要性を強調する。

  • 地域及びその他の関連利害関係者との協力におけるリソースが利用可能なら、UNITAR と OECD が工業ナノ物質の適切な管理のための国際的なガイダンスと訓練資料の開発を継続する必要性を強調する。

  • 2016-2020 年のための提案された作業計画を歓迎する。

  • 全ての利害関係者は、地域の協議とe-ラーニングコースによることを含めて、発展途上国と移行経済国の状況に特別の注意を払いつつ、工業ナノ物質の適切な管理に関する意識向上を継続し、能力を強化すること。

  • SAICM 利害関係者らは、UNITAR によって開発された”国家のナノテクノロジー政策とプログラムの開発”のためのガイダンスを利用することを検討すること。
◆内分泌かく乱化学物質(EDCs)に関する一括決議

  国際化学工業協会協議会(ICCA)、クロップライフ・インターナショナル、及び米国国際ビジネス評議会(USCIB)は、”報告書の方法論と結論は、ある科学者グループの間には異論がある”(訳注1)と述べて補足説明を主張したが、内分泌かく乱化学物質(EDCs)に関する一括決議は、”科学の現状”報告(訳注2)を歓迎した。決議はまた下記のように述べている。
  • UNEP と WHO に対して、リソースが利用可能なら、 EDCs に関する情報を生成し広めることにより、発展途上国と移行経済国により特定された必要に対応するよう要請する。

  • 内分泌かく乱物質のテスト及び評価に関する OECD 助言グループによりなされた作業と政府及び他の利害関係者らによる取組を認める。

  • IOMC に対してオープンで包括的で透明性のあるやり方で EDC 作業計画を開発し実施するよう要請し、全ての関心ある利害関係者に対してこれらの取組みを支援するよう求める。

2020年以降の化学物質と廃棄物の適切な管理


 9月29日(火)の総会で、事務局は関連文書(SAICM/ICCM.4/13, INF/22 及び INF/30-31)を紹介し、ガーナは、アフリカ・グループ、ヨルダン、ノルウェー、スイス及びイエメンを代表して2020年以降の戦略的アプローチに関する決議案を紹介した(SAICM/ICCM.4/CRP.2)。ザンビアとフィンランドを共同議長とするコンタクト・グループが立ち上げられる前に、総会では討論が行われた。コンタクト・グループは9月29日(火)及び30日(水)に会合をもった。”共同議長の友人”グループもまた、議論ある文書の進捗をはかるために確立された。

 討議では特に、提案されたSAICMの独立の評価とその委託事項;2020年以降の適切な化学物質管理のためのオプションを準備するための会期間プロセスと作業グループの確立;及び会期間作業グループのメンバーシップ;に目が向けられた。

 総会中、カナダとアメリカは独立の評価を支持した。日本と EU は、第1回国連環境総会決議 1/5 (UNEA Resolution 1/5)により導かれる戦略的アプローチの継続を支持した。フィリピンとラテンアメリカ・カリブ海地域(GRULAC)は会期間プロセスを支持した。国際化学工業協会協議会(ICCA)はラテンアメリカ・カリブ海地域(GRULAC)とともに、2020年以降の SAICM の継続を支持した。IPENは、ICCM4 が国連環境総会(UNEA)と背中合わせで二つの会期間会議を開催するよう提案した。適切な化学物質管理のための組織間プログラム(IOMC)は、コスト効率がよく、目標が絞り込まれた、現実的な必要性の評価に基づく決定を伴う会期間プロセスを求めた。インドは、100万人以上の都市における大規模及び中規模プロジェクトに資金供与するために、少なくとも20億ドル(約2,500億円)の資金を調達する明確な行動計画; 制度的メカニズムの強化; 大規模な能力構築; 及び技術移転−を求めた。UNEPは、適切な化学物質と廃棄物の管理指標に取り組んでいることに言及し、持続可能な化学の目標を確立することを提案した。モロッコは、修正付きで決議案を支持した。メキシコはSAICM/ICCM.4/13に含まれる提案を支持した。中国は、会期間プロセスの立ち上げに関して懸念を表明した。国際労働組合総連合(ITUC)は、”2020年以降”は進捗が不十分であった領域に向けられるなくてはならないことを強調した。

◆最終決議(SAICM/ICCM.4/CRP.15)のうち特に:
  • 事務局に対して、リソースが利用可能なら、決議のアネックスに規定されている委託事項にしたがって、SAICM の独立評価を契約するよう求める。

  • 2020 年以降の SAICM と化学物質と廃棄物の適切な管理に関する勧告を準備するために会期間プロセスを立ち上げることを決定する。

  • また、会期間プロセスは、原則として、 OEWG3 の前に二つの会合と、 OEWG3 と ICCM5 の間にひとつの会合を含むべきであること、及びそれは書簡及び/又は電子的媒体により機能してもよいことを決定する。

  • 会期間プロセスは、全ての利害関係者にオープンであることを決定し、事務局に対して、リソースが利用可能なら、事務局( Bureau)を通じて地域及び活動分野により特定され、バランスのとれた地域と分野の参加を支援するために、アフリカ諸国から8か国、アジア太平洋諸国から8か国、中東欧諸国から3か国、ラテンアメリカ・カリブ海地域(GRULAC)から5か国、及び健康、労働及び公益分野のそれぞれから2代表からなる資金供給に適確な利害関係者の参加を支持することを求める。

  • 会期間プロセスは特に、持続可能な開発のための2030アジェンダ(訳注3)を支持して、計測可能な目的に関する勧告の必要性を検討し、開発すべきである。

  • OEWG に、独立評価の結論と ICCM5 による検討のための会期間プロセスにより特定される勧告を検討するよう指示する。

訳注1
Regulatory Toxicology and Pharmacology 2015年7月31日 内分泌かく乱物質の科学についての疑念を作り出す:UNEP/WHO 報告書 ”内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版” に対する産業側の後援を受けた批判的コメントへの反証

訳注2
内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版 意思決定者向け要約(nihs 版)

訳注3
我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ (外務省仮訳)
持続可能な開発目標(SDGs)/ 国連広報センター



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