EU議長国プレスリリース 2005/05/12
REACH ワークショップ:
REACHはヨーロッパの競争力を損なうものではないと議長国


REACH Workshop:
the Presidency concludes that REACH constitutes less of a brake
than an asset for competitiveness in Europe

情報源:Presidency Press Release Date: 12-05-2005
REACH Workshop: the Presidency concludes that REACH constitutes less of a brake than an asset for competitiveness in Europe

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年5月28日


 議長国ルクセンブルグは、5月10,11日にルクセンブルグで開催したワークショップを通じて、*REACHの実行可能性及び実施に関する当初の不安を晴らす努力を行うとともに、REACH はリスボン戦略(訳注1)のダイナミックスに完全に合致する規制であるとした。

 REACH は、”ヨーロッパの競争力を推進するであろう”と環境大臣ルーシン・ラックスは、ワークショップの閉会後、経済貿易大臣ジーノ・クレッケとともに行った2005年5月12日の記者会見で宣言した。

 環境大臣ルーシン・ラックスによれば、”ワークショップで紹介された KPMG 調査(訳注2)は、誰かが言っているような脅威と壊滅的なシナリオをむしろ晴らすものである。我々は今後、REACH の導入の結果起こるかもしれないこれらのシナリオを取り除くことができる。したがって、そのようなことは起きない”。この調査は、5つの産業分野に与える REACH の影響を模擬検証することでいくつかの比喩的ケースを分析した。

 経済貿易大臣ジーノ・クレッケは REACH 規制案の模範的な特質を強調し、それは議長国の最重要項目のひとつであるとした。REACH には二つの異なる理事会、”競争力理事会”と”環境理事会”が、9つの欧州議会委員会とともに関与しており、その特質は称賛に値するが、特にそれは、リスボン戦略の健康、環境、及び競争力に対する懸念によって求められる、全ての局面における持続可能な成長をよく体現するからであるとした。また、環境大臣ルーシン・ラックスは、”それは産業の障壁となるものではなく、むしろその反対である。我々が持続可能な成長を達成し、かつ、リスボン戦略を真剣に実行しようとする場合、我々はその二つのことを両立させる手段を持っている”と付け加えた。

 経済貿易大臣ジーノ・クレッケはさらに、議長国ルクセンブルグによって主催されたワークショップの革新的な特質について言及した。今回初めて、ワークショップでは REACH の全ての利害関係者、すなわち、欧州委員会、欧州議会、理事会、さらには雇用者、NGOs、そして労働組合が同じテーブルに着いた。ワークショップの議長アンドレ・ワイデンハウプによれば、ワークショップは成功し、”議論は率直であり、非常に建設的”であった。

 経済貿易大臣ジーノ・クレッケは、REACH 提案に対する議長国ルクセンブルグとしての重要事項を発表したが、それは産業界にとって実行可能な草案を協議することと、環境保護の真の前進を示すことであるとした。実行可能性に対する懸念はまず中小企業に向けられたが、新たな規制に適合することの難しさは中小企業にとってより大きい。したがって、中小企業が REACH に適合しようとするにあたって、各国の支援機構(ヘルプ・デスク)を通じての援助、訓練、及び指針が必要である。これらのヘルプ・デスクは、様式、方法、及び機能、さらには REACH が提供するビジネスチャンスに関する特定の情報を提供するであろろう。さらに、登録のための直接及び間接コストを低減することによって、製造者及び輸入者がもっと容易に REACH の責務を果たすことができる。

 両大臣によれば、議長国ルクセンブルグの第二の重要事項は、大きな官僚的構造を作り出すことを避けることである。”我々の友オランダのおかげで、、わが議長国によってなされた仕事により、そして我々のワークショップでの思いがけない成果のために、我々は二つの当該理事会に対し結論を提出することができる。議長国イギリスの下での理事会において政治的合意に必ず到達するであろう REACH 規制案はバランスと柔軟性を備えている。それは我々の目標に完全に合致するであろう。それは当初の提案よりももっと実行可能なものとなっている”と経済貿易大臣ジーノ・クレッケは認めた。

 環境大臣ルーシン・ラックスは環境分野における REACH の付加価値、代替について述べた。”物質はが他のより有害性の少ないものに代替することができる場合には、代替が行われなくてはならない”。

 REACH のもうひとつの刷新は、現在市場にある全ての化学物質に関するデータを、現在行われているようにように化学産業界の都合ではなくて、全ての関係者の意思で明らかにするということである。ルーシン・ラックスによれば、REACHは消費者保護の分野における真の前進の象徴である。

 ジーノ・クレッケは、EU加盟国ではない諸国がルクセンブルグ議長国からワークショップに招待されなかったという批判に答えて、”オーストラリアとアメリカもまたワークショップに参加したかったのであろう。これはよい兆候である。ちなみに我々は常に我々と議論したいと望む誰にでもドアを開けてきたし、今後もそのようにする。しかし、これはヨーロッパの立法に関する問題なので、やさしいことではないが、まず加盟25カ国の合意を得るよう努力することが重要であり正当である”。REACH 規制案の通知は世界貿易機関(WTO)にも送られている。ルーシン・ラックスは彼の相棒のメッセージを繰り返して、”健康と環境保護に焦点を当てる化学製品の現代的な規制はヨーロッパの競争力を損なうものではない”と述べた。

 結論として、ジーノ・クレッケは、”議長国ルクセンブルグは REACH 提案を新たな軌道に乗せた。我々全ての関係者がひとつのテーブルに集ったという事実、そしてオープンで建設的な議論が行われたという事実は、さらに競争力あるヨーロッパに向けての重要な前進である”と宣言した。

原注:
 *REACH は、現在、製造され又はヨーロッパに輸入される全ての化学物質は、登録、評価、及び毒性に関する当局による承認、及び特に懸念のある物質についての制限の対象とすることを求めるEUの法規制案である。これは、人間の健康のよりよい保護と、環境のよりよい保護を確実にするためのものである。
訳注:
1. リスボン戦略
 2000年3月、リスボンで開催された欧州理事会で設定されたEUの10か年戦略。この戦略の下で、持続可能な発展と充実した社会を確実にする社会政策及び環境政策と並んで、より強い経済が雇用を生み出すことができるとした。
 産業側(欧州委員会内も含む)がEU内企業の競争力を理由にREACHに揺さぶりをかける時に必ず引き合いに出される。

2. KPMG 調査
 欧州委員会が合意した枠組みの中で産業界が委託した影響調査。下記プレスリリース参照。
 EU プレスリリース 2005年4月27日産業界によるREACH 影響評価についてのEU高官協議
 KPMG:オランダに本部を置く国際的なコンサルティング会社 KPMG International

3. 関連情報
REACH 影響評価:産業界が重要で安全な化学物質を失うことはない(EEB / WWF 概要説明)



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