ケムセック(ChemSec) 2023年10月11日
時計は進む:野心的な REACH 改訂の最後のチャンス

情報源:ChemSec news November 11, 2023
Tick-tock: Last chance for an ambitious REACH revision
https://chemsec.org/tick-tock-last-chance-for-an-ambitious-reach-revision/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年10月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/News/ChemSec_
231011_Tick-tock_Last_chance_for_an_ambitious_REACH_revision.html


 3 年前、欧州委員会は持続可能性のための化学戦略(Chemical Strategy for Sustainability)を導入したが、それは素晴らしいものであった。 しかし、REACH 改訂案はまだ提出されておらず、それほど素晴らしいものではない。 時間がなくなる前にやるべきことは次のとおりである。

 3年前に欧州グリーンディール(訳注1)の一環として「持続可能性のための化学戦略」(訳注2)が導入されたとき、この戦略は人間の健康と環境をより効率的な保護を達成し、より安全な代替品を求める市場を促進するよう設計されていたため、環境 NGOs、代替品提供者、有名企業が一緒になって祝福した。

 この戦略では多くの重要な改革が提示されたが、最も重要なもののひとつは REACH 法の改訂であった。この戦略はまた、全ての改革について断行すべき明確な日付を示して業界に予測の可能性を与えた。

結局のところ予測はそれほど可能ではない

 しかし、REACH 改訂に関しては、予測可能性はどこにもない。

 確かに、政治プロセスを妨げる大きな外部事象がいくつかあった。 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行とロシアのウクライナ侵攻が事態を少し混乱させたことは否定できないが、悲しいのは、重要な政策改革を遅らせるために、これらの出来事が後ろ向きな産業界によって巧みに利用されていることだ(訳注3 訳:当研究会)。

”多くの企業が、REACHの野心的な改訂が必要であることに同意している”

 このようにして、化学産業界は欧州委員会の最高レベルに影響を及ぼし、REACH 法の野心的な改革を阻止することに成功した。 しかし、化学産業界がこのように消極的であることは、公平な状況を描いているとは言えない。 多くの企業は、REACH の野心的な改訂が必要であることに同意していいる。

 戦略で提案された改革はどれも、そもそも実施されなかったにもかかわらず、EU 全域の企業がビジネス、持続可能性への取り組み、市場分析を新しい化学戦略に沿ったものに移行し始めた。

これが、なされなければならないことである

 ここからが面白いところである! 予測が可能になることによって長期的な計画が可能になるため、すべての企業が予測可能性を求める。 しかし、規制の不確実性により、企業は行き詰まりを感じている。

 REACH の野心的な改訂は、代替提供者や進歩的な企業にとって有利な市場条件を生み出すであろう。 長期的に持続可能な地位を築くことで、欧州は化学生産の最前線に立つことになる。

”新しい EU 選挙が近づいており、物事は迅速に進む必要がある

 そして、規制が変革の主な原動力であることを忘れてはならない。 現在、段階的に廃止する必要がある有害物質の大部分に対して、より安全な代替品がすでに存在している。

 これは欧州委員会が聞かなければならない話だが、同委員会はどこか別のところに耳を傾けているようだ。 我々には野心的な REACH が必要である。

 欧州委員会がすぐに行動しなければ、3年前の予測可能性と約束はすべて無駄になる危険がある。 新しい EU 選挙が目前に迫っており、事態は迅速に進む必要がある。


訳注:関連情報
訳注1
欧州委員会 プレスリリース 2020年10月14日 グリーンディール:欧州委員会 有害物質のない環境に向けて新たな化学物質戦略を導入

訳注2
EUの持続可能な化学物質戦略/クリスティーナ・デ・アヴィーラ 欧州委員会環境総局/化学物質国際対応ネットワーク 2022年3月17日

訳注3
欧州企業監視所(CEO)2023年3月15日 化学分野の情事:政治家らはどのように BASF に騙されたか(当研究会訳)


化学物質問題市民研究会
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