欧州企業監視所(CEO)2023年3月15日
化学分野の情事:政治家らはどのように
BASF に騙されたか

情報源:Corporate Europe Observatory (EEO), March 15, 2023
Chemical romance: how politicians fell for BASF
https://corporateeurope.org/en/chemical-romance-politicians-basf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年4月5日
更新日:2023年4月10日 (パート1 追加)
更新日:2023年4月13日 (パート2 及び 結論 追加)
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_23/230315_
CEO_Chemical_romance_how_politicians_fell_for_BASF.html

 世界最大の化学製品メーカーであるドイツの企業 BASF (ビーエーエスエフ)は、政治的な大企業であり、その影響力を利用して EU の化学物質規制に反対している。 その製品に”永遠の化学物質”や有害な殺虫剤が含まれているのも不思議ではない。欧州企業監視所 Corporate Europe Observatory (CEO)は、巨大な二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)から”がん回廊(Cancer Alley)(訳注:石油化学工場などの大気汚染を悪化させる施設の多い地域。人種的マイノリティや貧困者らが多い。まで、同社の影響力のある戦術とそのスキャンダルに注目している。

 世界最大の化学メーカーであり、ドイツの巨大怪物企業である BASF は、その企業スローガンを、”我々は化学を創造する(We create chemistry)”としている。 しかし、これらの創造物には、”永遠の化学物質(PFAS)”、環境汚染、化石燃料への依存による莫大な二酸化炭素排出などの有害な製品が含まれている。 これらの汚染物質が私たちの体、土壌、水に浸出するにつれて、世界は人間の化学物質使用が安全な地球の限界(planetary boundaries)(訳注:人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念)をどのように越えたかに気づき始めている。 しかし、BASF は、国内外で消費される有害な製品を生産し続けている。 また、危険な製品を安全な化学物質で置き換えることに失敗している一方で、より安全で持続可能な代替品の開発が”奨励される”べきであると要求している。 一方、その巨大な政治への接触や結びつきは、党派を超え、ベルリンを経由し、地域レベルから EU レベルにまで広がっている。 その数百万ユーロ(数億円)のロビー予算、多くの雇われロビーの利用、及び化学産業界の積極的なネットワークは、待望の、そして遅れに遅れた REACH (*1)改訂を含んで、EU の化学物質改革を可能な限り遅らせるのに役立ってきた。我々の健康と環境をよりよく保護するための効果的な規制が遅れると、我々とその後の世代が苦しむことになる。

*1原注:REACH は化学物質の登録、評価、認可、及び制限からなる 2007年からの EU の旗艦化学物質規則である。これは、化学物質の固有の特性をより適切かつ早期に特定することにより、人間の健康と環境の保護を改善することを目的としている。

化学的障害

 1865 年に Badische Anilin und Soda Fabrik (バーデン アニリン及びソーダ工場) として設立され、現在もドイツのラインラント-プファルツ州のルートヴィヒスハーフェンに拠点を置く BASF グループは、BASF SE を筆頭に 248 社で構成されている。 化学製品、農薬製品、バイオテクノロジー、プラスチック、そしてもちろんエネルギーに関心を持ち、110,500 人の従業員を雇用し、91 か国で事業を展開している。 BASF の事業とその企業アイデンティティ(CI)にとって重要なのは、巨大な統合生産及び製造拠点であり、世界最大の化学複合施設でもあるルートヴィヒスハーフェン フェアブント(Ludwigshafen Verbund)である。 BASF の主要な株主には、化石燃料と森林伐採への投資で悪名高い世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)やゴールドマン サックス(Goldman Sachs)などの機関投資家が含まれる。

 BASF は世界最大の化学メーカーかもしれないが、環境面で最高の業績を上げているとはとても言えない。 2022 年、スウェーデンの NGO ChemSec は、BASF が以前よりも多くの有害化学物質を生産していると報告した。 ケムセック(ChemSec)の SIN リスト(訳注:ケムセックによって非常に高い懸念がある物質(高懸念物質)であると特定された化学物質のリスト)よると、BASF は 25 の残留性物質を製造しており、そのうち 11 は PFAS 、別名”永遠の化学物質”(*2)である。同社は高懸念物質を用いて製造される新製品を禁止していないことで批判されている。実際、同社は有害化学物質の”段階的廃止計画”の公表を停止しており、”公約の弱体化”を示唆している。ケムセック(ChemSec)はまた、BASF は取り扱い技術/製品により安全な代替品を持っているが、それらを下流のユーザーに適切に販売していないと報告している。 これらは、化学産業が化学物質の環境負荷を削減するために取り組んでいるかどうか、またどのように取り組んでいるかについての年次調査で、ケムセック(ChemSec)が、BASF に”C マイナス評価”のみを与えた理由のほんの一部である。

*2原注:欧州化学物質庁によると、パーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質 (PFAS) は、社会全体で使用されている何千もの合成化学物質の大きなクラスである。 それらには、有機化学で最も強力な化学結合のひとつである炭素-フッ素結合が含まれている。 これはそれらが残留性であることを意味する。

 この低い評価は、13億ユーロ(約1,800億円)が費やされた BASF の 2022年の自社株買い戻し計画(share buy-back scheme(pdf))に関連している。 ChemSec が正に指摘しているように、現金を使って自社株を購入し、会社の短期的な株価を押し上げるこのような”精巧な金融ゲーム”が、BASF広範な化学産業が化学産業の有害な製品からの移行のために公的資金を同時に要求している時になされたということは特に腹立たしい。

   ドイツの自動車産業と並んで、BASF 及びバイエル、ヘンケル、エボニック、コベストロ、メルク、ランクセスなどを含むドイツの化学部門は 協力して、ベルリン(ドイツ政府)とブリュッセル(EU)の両方で大きな政治的影響力を発揮している。欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory(CEO)) と ロビーコントロール(LobbyControl)による 2020 年の報告書 ”汚れた愛” (Tainted love) で示されているように、ドイツの輸出主導型経済は国内に本拠を置く最大の多国籍企業に特権を与えており、2021 年には他のどの EU 加盟国よりも多くの 1,210 億ユーロ(約17兆円)相当の化学物質を EU 域外に輸出した。

 2021 年、BASF はロックダウン後のブームの恩恵を受けて、約 786 億ユーロ(約11兆円)の”記録的な”売上高を記録した。 しかし、2022 年は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて原材料とエネルギーのコストが急騰し、BASF にとってより困難な年となり、最近、2,600人の人員削減案を発表した。 それにもかかわらず、その高い生産コストは、顧客にその分高い価格を請求することによって幾分相殺されているため、2022 年の結果によると、”BASF の事業は堅調であることが証明され”、売上高は 11% 増の 873 億ユーロ(約12兆2,220億円)となり、2021 年の株主配当は 30 億ユーロ(4,200億円)であったのに対して、2022 年の株主配当は 22年の売り上げ増を反映すると約束された。 BASF はまた、コストが低い湛江(Zhanjiang)にある複合サイトの新しい拠点に 100 億ユーロ(約1兆4,000億円)の投資を行っている。 中国は 2番目に大きな市場である。 新規及び既存ビジネスへのこれら及びその他の投資に比べると、BASF の”ネットゼロ変革“net-zero transformation”(訳注:温室効果ガスを差し引きゼロにすること)への投資が年間わずか 4億ユーロ(約560億円)と小さく見える。

 継続的な経済的影響力にもかかわらず、BASF とその同盟者らは、EU のグリーン ディールを骨抜きにするために言葉の戦争を繰り広げている。 BASF の最高経営責任者兼取締役会会長のマーティン・ブルーダ―ミュラー(Martin Brudermuller) によると、グリーン ディールは”化学産業界に規制の洪水をひき起こし、我々に追加の負担を課すことになる”。 彼らは、健康と環境の必要性を強調することから、化学物質をより適切に規制するという方向に議論を変え、負担を求められる社会的及び環境的コストに対処する、すなわち彼らの金銭的利益を守る方向を目指している。これは、エネルギーと原材料がより高価になるにつれて、新たな推進力を与えられたキャンペーンである。

政治的影響力を求めて手を伸ばす(REACHing)

 欧州グリーン ディールとその構成要素である持続可能性のための化学物質戦略の一環として、化学産業界向けに多くの新しい EU 規制が進行中であることは事実である。 PFAS (永遠の化学物質としても知られる) は、EU レベルで対象を絞ったイニシアチブの対象となっているが、他の危険な化学物質は、 REACH (化学物質の登録・評価・認可及び制限に関する規則)及び CLP(化学物質の分類、表示及び包装に関する規則)改訂の下で、より厳しい規制の対象となる必要がある。

 しかし、これらの新しい規制が有害化学物質の規制を大幅に改善することを目指していること、そして BASF が進歩的な化学物質規制との戦いを主導してきた長い実績があることも事実である。 当初の REACH 規則 (1998 年から 2006 年) をめぐるロビー活動は、EU の歴史の中で最も論争の的となっているもののひとつであり、2005 年の欧州企業監視所(CEO)の報告によると、”BASF はおそらく最も積極的に REACH に反対したヨーロパの会社のひとつであり、これは ”持続可能性への貢献を自称することとは、まったく矛盾している”。 BASF とその同盟は、REACH に反対し、提案が「ヨーロッパの脱工業化」をもたらすと脅迫し、化学産業界を動員し、BASF の専門家らを関連する政治部門に直接配置し、ロビー活動は全て影響力のあるツールボックスの一部であったことは、歴史に全く逆行していた。

 一方、EU は 10 年以上にわたり、深刻な健康被害 (推定 年間 1,500 億ユーロ(約21兆円)以上) と長期にわたる環境への影響が疑われる内分泌かく乱化学物質 (EDCs) の規制に失敗してきた。 BASF、バイエル、及び化学産業界は、様々な加盟国内の同盟、欧州委員会内の関係者、及び欧州議会の関係者らとともに、行動を完全に後回しにすることに成功してきた。 現在、EDC 規制の希望は改訂された CLP である。

 今日、BASF のアプローチは実際には変わっていない。 同社は、EU の提案する化学物質改革を支持すると述べているが、そのロビー活動のメッセージは、EU に世界レベルでの改革を推進するよう促すなど、非常に利己的なものであり、有意義な変革を棚上げにする手っ取り早い方法である。 そして、その公式声明は、政治家が正しいことをするのを怖がらせるように設計されているように見える。その声明は、化学物質の分野における EU の”計画されている膨大な数の規制”のために、BASF は”欧州事業全体でコストを削減する”という決定をせざるを得なかったとし、あるいは BASF の最高経営責任者であるマーティン・ブルーダ―ミュラーは、EU が提案した化学物質規制改革は”ヨーロッパにおける化学物質の将来に大きな疑問を投げかける”と述べている。また BASF はエネルギー コストが高いため、この地域の競争力はますます低下しているのでヨーロッパで”恒久的に”規模を縮小せざるを得ず、結果としてベルリン(ドイツ政府)とブリュッセル(EU)の意思決定者は注意を払っていると述べている。

 特にドイツの化学産業は、欧州委員会が提案した REACH 改訂案の公表を遅らせたことで、最近大きな勝利を収めた (これについては以下で詳しく説明する)。 この遅延は、官僚的な些細な問題というより、もっと、もっと大きなことを意味している。 毎月の遅延により、BASF が販売する有害製品を含んで、有害製品が EU 市場に留まることになる。 そしてその遅れは、環境や健康の運動家だけでなく、サプライチェーンで化学物質を使用し、”できるだけ早い REACH の野心的な改訂”を要求してきた人々を含む、化学産業界以外の人々にとって苛立たしいことである。

 リスクとして、提案されている PFAS の禁止にも同様のことが起こり得る。 2023 年 2 月下旬、ターゲスシャウ(Tagesschau)(訳注:ドイツのニュース番組)は、BASF は PFAS 化学物質の全クラスを禁止する計画を弱体化させようとしているいくつかのドイツの化学及びプラスチックのロビー団体のひとつつであると報告した。化学産業界は PFAS 物質の全クラスではなく、個々の物質のチェックを推進しているが、これは効果がはるかに低く、より多くの時間がかかる。しかし、これらの”永遠の化学物質”は残留性があり、環境中で分解されないので、一刻の猶予も許されない。

 BASF の莫大な経済的影響力は、その目標を達成するための政治的接触をほぼ保証しており、より広い政治的つながりと莫大なロビー予算、化学産業界のネットワーク及び議席数によって強化されている。これが成功の秘訣である。 以下では、BASF に影響を与える主な戦術 (パート 1) と、近年同社を悩ませてきた最大のスキャンダルと論争 (パート 2) について説明する。

(追加 23/04/10)
パート1 - BASF の主要な影響力のある戦術

1. 過熱する政治化学

 アンゲラ・メルケル首相、 ラインラント・プファルツ州の首相、 特別に作曲された管弦楽曲の初演、1,000人の招待客。 それは 2015 年に開催された BASF の 150 周年記念式典であり、BASF の政治的影響力の象徴であった。

 BASF の政治的影響力の鍵は、優れた政治的接触と幅広いつながりであり、政治的分裂や政府のレベルを超えて広がっている。 そして重要なことに、これらは実現しているように見える。

 BASF は、ドイツのラインラント=プファルツ州地域の主要な雇用主として、利益をさらに得るために州政府との年次協議を行っている。 2022 年 5 月、BASF の取締役会との会合の後、州政府は連邦政府に”ラインラント=プファルツ州の経済の利益”を支援するよう”強くロビー活動を行っている”と報告し、州経済担当大臣は”ビジネスと政治の密接な信頼関係”を擁護した。

 ドイツ社会民主党(SPD(中道左派)) のラインランド・プファルツ州首相であるマル・ドライヤー(Malu Dreyer)は、ルートヴィヒスハーフェンにある BASF の拠点と、さらに遠く離れたベルギーの 2 つの物議を醸すプロジェクト;新たな液化天然ガス(LNG)ターミナルと BASF のアントワープ フェルブントで水素を生産するためのエア・リキード( Air Liquide)とのジョイント ベンチャーを含む、 BASF の拠点を定期的に訪れている。 当時の SPD 財務相オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)を含む他の政治家らも同様の訪問を行っている。 一方、申し分のないコネを持つ BASF の最高経営責任者であるマーティン・ブルーダーミュラーは、2022 年 11 月に現首相のオラフ・ショルツに同行して北京を訪れた化学産業界代表団の一員であり、2018 年にメルケル首相と共に行った旅行を再現した。

 2021 年秋、ショルツ首相の新しい連邦政府で連立パートナー (SDP、FDP (リベラル)、及び緑の党) をまとめた協定で、化学産業はドイツで重要な政治的勝利を収めた。この文書は、”[化学産業の]競争力と革新力を強化する”だけでなく、”生産立地としてのドイツ”を約束した。 これとは別に、この合意は、物議を醸す”廃棄物リサイクル(chemical recycling)”(*3)を推進し、化学産業界及びおそらくビジネス寄りの FDP にとって明らかな勝利であった。

*3原注:ケミカルリサイクル(廃棄物リサイクル)は、化学廃棄物の構造を変えて、プラスチックや他の製品の原料として使用できる物質に戻すことを目的としている。 ただし、改質製品の汚染のリスクは高く、非常に集中的なエネルギー投入が必要である。 有害な化学物質を生産し続けることを正当化するための業界による議論として使用されている。

 そして 2023 年 1 月、BASF の上級幹部を含む化学産業界との話し合いの後、ショルツ首相は、”我々が化学産業の将来について話す非常に特別な形態”を発表した。 サウスジャーマン紙(Suddeutsche Zeitung) によると、この会議にも出席していた[ラインランド・プファルツ州首相である]マル・ドライヤー(Malu Dreyer) は、”政治と化学産業界の間の新しい協力形態と、解決策への共同アプローチを開発することが重要である”と述べた。これには、カーボン ニュートラルの達成も含まれる。

 化学産業の要求が、ドイツの多くの政治家の考え方の中心にあることは明らかである。 しかし、政治的つながりはさらに深い。 2005 年、シュテルン誌(Stern)は、 BASF は従業員が持つ 235 の政治的使命を認識していると述べたと報告した。 これらには、BASF の会計士でもあったラインランド・プファルツ州議会の当時の FDP 副議長が含まれていた。 この従業員は利益相反を否定し、BASF の上級幹部が政治的な懸念を持っている場合、当時のドイツの首相だったゲルハルト・シュレーダーに”直接”連絡し、BASF は「そのために私を必要としない」と述べた。

 もっと最近、南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)は、ブルーダーミュラーが CDU (中道右派) によって連邦議会議員として、議会グループのリーダーであるクリスチャン・バルダウフや他の国会議員と共に、2022 年にドイツの大統領を選出するために指名されたと報告した

 さらに驚くべきことに、BASF はドイツの緑の党からも誘われていた。 2019 年、フランクフルト総合新聞(Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung)は、ブルーダーミュラーがドイツ緑の党の経済政策諮問委員会に参加すると報じ、当時の 議員(MP)ケルスティン・アンドレーエ(現在はドイツの水とエネルギーの協会であるBDEWを率いる)によって”他の指導者の手本(ロールモデル)”として賞賛された。 エコノミスト(The Economist)は、これが現在の連立政権に参加する前に”緑の党はドイツのビジネスの敵対者ではなく、彼ら自身を同盟者として再定義する”という緑の党の戦略の一部を形成したと報告している

”ドイツで BASF ほど影響力のある個別企業はほとんどない。BASF は、最高の意思決定者への特権的な接触を享受し、最も強力なドイツのロビー団体の中で指導的役割を果たし、潜在的な脅威も含む巨大な経済力を持っている。ブルーダーミュラーが話すとき、緑の党でさえ、政治家らは耳を傾ける。”
ニーナ・カッツェミッチ、ロビーコントロール(LobbyControl)

 BASF やその他の大手化学会社にとって、これは確かにドイツ政治の最高レベルでの特別な接触のように見え、幅広い政党と緊密な関係にあり、関係者全員にとって利益があると見なされている。 しかし、ロビー会議を含むベルリンでの接触の全容は今のところ秘密のままである。情報公開請求を通じて欧州企業監視所(CEO)から求められても、首相官邸は BASF との接触に関するどのような情報も提供することを拒否した。

 しかし、ガス産業界ロビーによる接触に関するロビーコントロール(LobbyControl)の分析によると、主要なガス消費者である BASF は、2021年12月から 2022年9月の期間に、ドイツ連邦政府関係者と少なくとも 35 回の会合を持ち、ガスロビーからベルリンの権力回廊を通って最も頻繁に訪問した企業のひとつになった。

化学反応: REACH の遅延に及ぼす政治的影響

 COVID-19 の世界的流行とロシアのウクライナ侵攻が、ブリュッセル(EU)と加盟国、特にドイツの中道右派政治家らによって、欧州の旗艦であるグリーン ディール、 REACH 、そして農場から食卓まで戦略(Farm to Fork strategy)(訳注(参考):EUの新しい食品産業政策「Farm To Fork 戦略」を読み解く JETRO)などを含む新しい環境規制の提案の延期又は破棄さえも要求する手段として利用されたことは注目に値する。

 2022年4月、ドイツの中道右派政党 (CDU と CSU) は、ウクライナ戦争を口実として、保留にすべきであるとする EU の環境的及び社会的提案のリストに REACH の改訂を含めた。 欧州議会の欧州人民党(EPP)グループのオランダの副議長は、フォン・デル・ライエン欧州委員会委員長に、特に REACH に言及して、ビジネスに”負担をかけている”新しい規制に対する”立法上の禁輸措置(legislative embargo)”を提案した。 ごく最近、著名なドイツの欧州議会議員(人民党)が ”新しい #REACH を一切行わないこと("no new #REACH" at all")”を要求した

 連邦議会下院議員らも懸念を表明した。アレクサンダー・エンゲルハルト (CDU-CSU) は、欧州グリーン ディールを部分的又は完全に停止する取り組みがあるかどうかを連邦政府に質問した。 政府はこれを否定し、実際に 2021 年の連立協定は”永遠の化学物質”(PFAS)、内分泌かく乱物質 (EDCs)、及び REACH 改革に関する行動を約束しているが、ロビーの圧力は確かにあった。

 REACH 改革提案は、2023 年の欧州委員会の作業計画に記載されていたが、今年の最後の四半期に延期された。 EU の旗艦であるこの化学物質規制の改訂は長い間待ち望まれていたが、欧州議会選挙まであと 1 年余りしか残っておらず、欧州議会議員と加盟国が提案された改革について意見を述べる時間はなくなっている。

 EU はいかなる規則変更も”工業生産に損害を与えない”ことを保証しなければならないという BASF の警告は、明らかに政治家の耳に響いている。 REACH の改訂を遅らせるようベルリンから圧力がかかっている可能性はあるが、最終決定については、ドイツ出身のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と彼女の内部チームにも非難が向けられた。 メディアの報道によると、フォン・デア・ライエンは、CDU と CSU の 議員グループの会合で REACH 改革の延期を発表した。

 おそらく、欧州委員会の化学産業に対する高官レベルの関与の良い兆候は、EU の化学戦略の実施に関する最近の円卓会議イベントであった。 REACH 改革の共同リーダーであり、改革の大ファンとしてはあまり知られていない産業委員のティエリー・ブルトン(Thierry Breton)は、この委員会のイベントで講演し、そして化学産業界を代表して話をするようブルーダーミュラー(BASF 最高経営責任者)に発言権を与え、その後、市民社会からのものを含んで他の講演を聞かずに立ち去った。

2. ロビーの巨人

 ロビーファクト(LobbyFacts)(訳注:Corporate Europe Observatory と LobbyControl のプロジェクトであり、ヨーロッパの機関でのロビー活動に関する重要なデータを提供している)によると、BASF SE はブリュッセルで最大の影響力のある企業のひと つである。 2011 年から 2021 年の期間に 2960万ユーロ(約41億4,000万円)から 3110 万ユーロ(約49億円)、2021 年には 300 万ユーロ(約4億2,000万円)から 350 万ユーロ(約4億9,000 万円)の支出を申告しており、企業の中で 12 番目に高いロビー寄付者である。

 BASF は明らかに、EU の政治家への対面ロビー活動に重点を置いている。 EU 登録の他のどの企業よりも多くの欧州議会への接触経路(19経路)を持っている。Integrity Watch EU (訳注:市民、ジャーナリスト、市民社会が欧州連合の政治家による決定の完全性を監視できるようにするオンライン ツールの中心的なハブ)によると、全ての欧州議会議員がロビー会議のリストを公開しているわけではないが、公開している会議のリストについては、2019 年 7 月以降、33人の欧州議会議員がさまざまなトピックスについて BASF ロビイストと合計 53 回の会議を行ったと報告している。 これには、欧州人民党(EPP)グループの 6 人のドイツ選出欧州議会議員によって報告された合計 15 の会議が含まれる。

 パンデミックでさえ、ヨーロッパ最大の農薬メーカーのひとつが、BASF の社内ソムリエ付きの 2つのビデオ会議に参加するために、「ワイン テイスティング キット」を送られた欧州議会議員らとおしゃべりをするのを止められなかった。 無料のワインは、”農場から食卓まで戦略(訳注(参考):EUの新しい食品産業政策「Farm To Fork戦略」を読み解く JETRO)がワイン生産者と農家に新しい機会と課題をどのようにもたらすか”について話し合う機会を提供した。

 LobbyFactsによると、BASF は 2014 年 12 月以降、EU 委員会と 43 回の高官会議を行った。BASF はベルレモン(訳注:ベルギーのブリュッセルにある欧州連合の主要機関欧州委員会の本部ビル。)を頻繁に訪れているわけではないが、11 人の異なる委員と会議を行っており、そのうちの 1 回の会議は 2020 年 7 月に行われた。フォン・デア・ライエン内閣の 9 人以上のメンバーが関与しており、特に CEFIC、VCI、CropLife などの業界団体による追加の接触を考慮すると、その接触はただごとではない。

 しかし、はるかに「印象的な」のは、2011 年から 2021 年にかけて BASF 又はその子会社のために働いていた 15 のロビー・コンサルタント及び法律事務所である。これには、Burson Cohn & Wolfe (以前は Burson-Marsteller として知られていた)、EdelmanEPPAFTI Consulting などが含まれる。 これらの仲介者が BASF に代わって行った作業について私たちがほとんど知らないのは、EU ロビーの透明性登録簿の弱点である。不思議なことに、BASF は現在仲介者を申告していないが、FourtoldHanover Communicationsは顧客として申告している。 登録者は全ての仲介者を申告する必要があり、EU ロビー登録の「単一登録規則(single entry rule)」の下で、全ての子会社を 1 つの登録にグループ化する必要がある。 今週初め、欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory / CEO)は、この明らかな見落としについて EU ロビー登録事務局に苦情を申し立てた。 (2023年3月31日更新: EU ロビー登録事務局は、私たちの苦情を調査することを確認した。)

 ドイツでも、BASF は 6 つの団体を登録しており、2021 年には 385 万ユーロ(約5億3,900万円)から 390 万ユーロ(約5億4,600万円)の全国的なロビー活動費用を申告した。BASF SE 自体は、24 人のロビイストと、強力なドイツの自動車ロビー (VDA) を含む他のロビー組織の少なくとも 84 人のメンバーシップを申告している。フランスでは、2021 年に 200,000 ユーロ(約2,800万円)から 300,000 ユーロ(約4,200万円)が申告されており、金額は小さいものの、少なくはない。米国では、2021 年に BASF SE が、OpenSecrets(訳注:ワシントン D.C. に本拠を置く非営利団体で、選挙資金とロビー活動に関するデータを追跡している。) によると 168 万ドル(約2億1,840万円)の支出を申告した。 2022 年には、この数字は 740,000 米ドル(約9,620万円)であった。

3. ロビー活動の外部委託

 BASF の、特にブリュッセルにおける、政治的影響力については、以下に概説するように、CEFIC、VCI、CropLife、BusinessEurope、ERT など、他の多くの強力な業界団体のメンバーとしての BASF の役割なくして、語ることはできない。

CEFIC:欧州化学産業評議会(European Chemical Industry Council)は、EU ロビー登録簿の自身の申告によると、ブリュッセルで最高のロビー寄付者であり、2022 年のロビー支出は 1,040 万ユーロ(約14億5,600万円)で、数年間その地位を維持している。 CEFIC は、”ヨーロッパの化学産業の声”であり、ヨーロッパ中の大、中、小企業を代表していると述べている。 都合の良いことに、その会長は BASF のマーティン・ブルーダ―ミュラー(Martin Brudermuller)であり、そのことは、欧州委員会の域内市場・産業・起業・中小企業総局(DG-GROW)の局長であるキルステン・ジョアナ(Kerstin Jorna)が 2022年5月に CEFIC の理事会に出席した時などのように、EU の意思決定者の中で最上級の立場にある人に会う特別な舞台を彼に提供している。 CEFIC は、2014年12月以降、欧州委員会と合計 149回のハイレベル会合を楽しんできた。

 最近の化学物質論争における CEFIC の大きな介入のひとつは、化学物質法改訂のための委員会の全体的なプログラム、特に消費者製品で最も有害な化学物質を禁止し、新たなハザード・クラスを作るジェネリック・リスク・アプローチ (GRA)の拡張提案(訳注:持続可能性のための化学物質戦略 (CSS) で発表された GRA の適用範囲の拡大により、欧州委員会は、暴露やリスクとは無関係に、固有の危険特性のみに基づいて化学物質/物質を対象とする規制措置を提案することができる)の影響評価を CEFIC は外部委託した(訳注:経済調査コンサルタント会社 Ricardo Energy & Environment)ことであった。 欧州委員会は、独自の立法提案が進展する前に、全ての影響評価を作成しなければならない。自身の評価を外部に委託する業界団体は、最終的な評価文書に影響を与え、業界の経済的利益を確実にすることを当然目指す。この CEFIC のケースもそれに当てはまる。CEFIC の評価では、最大 12,000 の物質が対象となり、ヨーロッパの化学産業の総売上高の最大 43%をカバーすると予測される。これは一見福音として業界に採用されており、REACH を無期限に延期するための保守的な欧州議会議員らのキャンペーン作成部門に価値あるネタを提供している。 しかし、欧州委員会は、”CEFIC の研究で採用された仮定は、我々が計画しているものをはるかに超えている”と書いた

VCI: ドイツ化学工業会(VCI / Verband der Chemischen Industrie)は、CEFIC のドイツ版であり、その大規模なメンバー企業は、ドイツの化学工業分野全体を保守的なアプローチで悪名高いものにしている。 BASF の ブルーダ―ミュラー(Brudermuller)は、VCI の副会長である。 CEFIC 以外のもうひとつの主要なロビー活動部隊である VCI は、2021年にドイツでのロビー活動に少なくとも 823万ユーロ(約11億5,220万円)費やし、65 人という多くのロビイストの雇用を申告している。地域の VCI 支部の申告を追加すると、申告された総支出はドイツで少なくとも 850 万ユーロ(約11億9,000万円)に増加する。 VCI は EU レベルでも非常に活発である。ロビーファクツ(LobbyFacts) によると、2022年には 450 万ユーロ(約6億3,000万円)から 500 万ユーロ(約7億円)、2015年から 2022年には 3,200万ユーロ(約44億8,000万円)以上の支出が申告されている。 CEFIC がブリュッセルで最も支出の多い業界団体なら、VCI は 4 番目に高く、化学業界のロビー力を示している。

 VCI は政治的に活発である。ロビーペディア(Lobbypedia) は、CDU、CSU、FDP、SPD、さらには緑の党への 2000 年から 2019 年までの合計 540 万ユーロ(約7億5,600万円)の寄付で、「最大の政党寄付者」のひとつと呼んでいる。 2020 年から 21 年にかけて、さらに 25 万ドル(約3,500万円)近くを寄付に費やした

 VCI は、ドイツと EU の政策立案者に”これまでになく新しい、手が届かない要件で我々の足を引っ張る”のをやめるよう訴える REACH に関する最も声高な声のひとつである。 2022年9月、VCI の簡潔な声明は、EU の化学物質戦略の実施など、”競争力にさらなる負担をかける”立法提案の延期を求めた。 2023年1月、VCI は、化学物質の安全で持続可能な使用は”既存の REACH の枠組みの中で、すでに達成されている”と主張した。 情報公開の要請により、域内市場・産業・起業・中小企業総局(DG-GROW)のクリスティン・シュライバー副局長が 2022年6月に開催された VCI 政治委員会の会議に出席し、とりわけ REACH 改革について話し合ったことが明らかになった。 ロビー活動の中で、欧州委員会副委員長マロシュ・シェフチョビッチの閣僚を時間外のサッカーチームに招待することさえあり、欧州委員会の職員と友好的な関係を維持しているようである。

BDI:Bundesverband der Deutschen Industrie (ドイツ産業連盟) は、もうひとつのロビーの重鎮であり、EU のロビー予算は 300 万ユーロ(約4億2,000万円)以上と申告されており、ドイツでは 748 万ユーロ(約10億4,700万円)が申告されている。 BASF のブルードミューラ(Brudermuller) は同連盟の幹部会(Presidium)のメンバーであり、化学物質をはじめとする多くの問題に積極的に取り組んでいる。 化学物質の規制改革は、域内市場・産業・起業・中小企業総局(DG-GROW)のキルステン・ジョアナ(Kerstin Jorna)と BDI 幹部の間の「仮想」朝食会、及び EU 環境委員ヴィルギニユス・シンケヴィチュウス(Virginijus Sinkevicius)の内閣との数回の会議で議論された。 ブリュッセルでは、BASF、VCI、BDI の全てが、EU 地区の中心部にあるマリー ド ブルゴーニュ通りにある同じオフィスの住所を共有している。

BusinessEurope:おそらくブリュッセルで最も影響力のあるロビイストであるビジネスヨーロッパ(BusinessEurope)は、BDI の上位組織であり、 EU 全体の雇用主の協会である。 ロビー活動への支出額は 400 万ユーロ(約5億6,000万円)から 450 万ユーロ(約6億3,000万円)であると申告しており、企業メンバーには BASF、バイエル、ソルベイが含まれる。ビジネスヨーロッパは、EU レベルで想定される「より良い規制アジェンダ(better regulation agenda)」(訳注:影響を受ける可能性のある人々の見解に基づいた、証拠に基づく透明性のある EU の法律制定)を主張する主要な勢力であり、欧州企業監視所(CEO)はこれを「変装した企業に優しい規制緩和(corporate friendly deregulation in disguise)」と新たに命名しており、2022年7月にビジネスヨーロッパが”現時点で [REACH 改訂] が必要かどうかについて大いに疑問がある”と述べても、何も驚かない。

ERT:欧州産業円卓会議(European Round Table)は、首相や大統領との定期的な接触を享受しており、2014年12月以降、欧州委員会と 127 回のハイレベル会合を行ってきた。同会議は、ヨーロッパ最大の会社の最高経営責任者らが熱愛する単一市場のような「全体像」に関わるロビー活動を行うときに橋渡しをする(a lobby vehicle)役割を持つ。 BASF の最高経営責任者であるブルーダーミュラーは、ERT の競争力と革新のための委員会の議長を務めており、”最終的に単一市場を完成させ、主要な基盤施設、研究開発、及び革新への投資を倍増させるために政治資本を投資する”という BASF の広範な関心について語るもう ひとつのプラットフォームである。

 これらの異なるロビー グループ間の相互作用と、彼らの高度な政治的接触を反映して、ブルーダーミュラー (CEFIC 委員長) から欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンに宛てた書簡には、次のように書かれている。”私はあなたの欧州産業円卓会議 (ERT) との交流を非常に高く評価しており、さらなる対話を重視する。 したがって、あなたにお会いできることを非常に嬉しく思う…これはこのトピックに関するヨーロッパ諸国の元首との一連の会議に続くものである。”

CropLife Europe:クロップライフ・ヨーロッパは、BASF、Bayer、Corteva、Syngenta などの主要な農薬生産者を代表する業界団体である。 2022年7月まで、クロップライフ・ヨーロッパは BASF 上級副社長のリビオ・テデスキが議長を務め、ブリュッセル バブル(Brussels Bubble)(訳注:ブリュッセルのヨーロッパ地区に住む特殊な人々によって生み出された現実の歪みを示すために使用される用語)で非常に活発に活動している。 2022年3月、欧州企業監視所(CEO)は、表向きには農場から食卓まで戦略(Farm to Fork strategy)の意図を公的に支持しながら、実際には野心的で拘束力のある目標を弱体化させるためにさまざまなロビー活動戦術を採用するというクロップライフの戦略を暴露した。これには、現在一般的な業界戦術で、Farm to Fork を弱体化させるための弾薬として使用する自身の「影響調査」を作成することが含まれていた (上記の CEFIC と下記の ERIF を参照)。インベストゲイト・ヨーロッパ(Investigate Europe) による更なる追跡記事は、ブリュッセルの農薬ロビーの力を暴露した。 クロップライフ会議では、メンバーが EU の意思決定者と親しく意見を交わすことも可能にする。

ERIF:上記のロビーとは異なり、European Regulation and Innovation Forum (以前は European Risk Forum、ERF として知られていた) は自称のシンクタンクであり、数年前まではたばこ産業も支援していた。 そのメンバーには、BASF、Dow Europe、Henkel、Syngenta、CEFIC、Plastics Europe、VCI などが含まれる。 ERIF は「より良い規制(better regulation)」アジェンダの大ファンであり、いわゆる「イノベーション原則(innovation principle)」(訳注:イノベーションが繁栄するための最良の条件を作り出す方法で立法が策定されることを保証することにより、EU の政策目標の達成を支援するためのツール)の推進に大きな役割を果たした。この原則は、新しい規制の理論的根拠を弱体化させ、リスクを規制するための行動を促す予防原則に反対している。 「より良い規制」の支持者は、社会的及び環境的な議論よりも経済的な議論を優先できるため、影響評価などのツールを推進しており、ERIF のメンバーの間で化学業界のロビー活動が非常に目立っていることは驚くべきことではない。

4. 委員数の確保

 もちろん、BASF が意思決定のテーブルに着くことができれば、直接的なロビー活動の必要性ははるかに少なくなる。

 1998年から2006年の最初の REACH の戦いでは、回転ドア(訳注:直通接触)が非常に目立ち、スタッフは化学産業と委員会の間をスムーズに移動し、その逆も同様であった。2006 年のグリーンピース インターナショナルの報告書は、1998 年に BASF の EU 政府問題マネージャーの事例を引用した。彼はその後、2001 年 9 月に欧州委員会の企業・産業総局(DG Enterprise and Industry)の REACH ユニットに参加し、2004 年にドイツ経済省に異動し REACH 担当となった。

 2015 年、欧州企業監視所(CEO) は、BfR (農薬などの化学物質の安全性を評価する上で重要な役割を果たしているドイツ連邦リスク評価研究所)の農薬委員会が、どの様にして BASF の 2人の従業員とバイエルの 1人の従業員をそのメンバーに含めたか、そしてそのことにより彼らの雇用主は推奨事項から利益を得ることができることを明らかにした

 また、加盟国全体の標準化委員会 (製造者、消費者、規制当局のために製品とプロセスの一貫性と統一性を確立するための技術基準を検討、合意する) に関しては、BASF は多くの委員数を確保した。

 たとえば、ドイツの標準化委員会 (DIN) は、プラスチック、パッケージング、漁具、車両に関する欧州標準化委員会 (CEN) や プラスチック、管理の連鎖(Chain of Custody)(訳注:日本語では「管理の連鎖」や「証拠保全」とも訳される法律に関する用語。物理的・電子的な証拠が適切に保管・管理、また移転されていることを記録した一連の文書、あるいはその手続きを指す。)に関する標準化機構 (ISO)など、 EU 又は国際レベルの多くの様々な委員会に BASF 関係者を送り込んでいる。 BASF にとって、「管理の連鎖(Chain of Custody)」委員会は、「物質収支」の特性に基づいて決定するため、極めて重要である。これは、BASF が当局に”リサイクルされたコンテンツ”のターゲットとラベルで使用するよう求めている方法である。 BASF は、物議を醸していることであるが、できるだけ多くのプラスチック製品に”100% リサイクル”のラベルを付けることに熱心である。 スウェーデンでは、BASF はスウェーデン標準委員会 (SIS) の管理の連鎖(Chain of Custody)委員会にも出席しており、SIS から ISO の同様な委員会への出席を委任されている。 おそらく、このパターンは他の加盟国でも繰り返されるであろう。

 これまでのところ、この記事では、BASF とその同盟者の影響力のある戦術を特定した。 確かに、BASF はロビー活動に多額の資金と労力を投じているが、政治家や意思決定者も喜んで協力し、ロビー活動を楽しみ、多くの場合、それに応じて行動する。 BASF の主な魅力は、主要な雇用主であり、輸出主導のドイツの GDP に貢献していることである。 しかし、それが全てではなく、非常に多くの意思決定者が、論争とスキャンダルがつきまとうある企業について議論し、おしゃべりをし、影響を受けてきたことは懸念すべきことである。 これらの経緯の一部を以下に示す。

(追加 23/04/13)
パート2 - BASF の最大の論争とスキャンダル

A. ややこしい事態

 Chemscore 2022 レポートによると、BASF は 133 の有害化学物質を生産しており、その数は増加している。 これらには 25 の「残留性」物質が含まれ、そのうち 11 は 「永遠の化学物質」とよばれる PFAS である。 BASF はまた、過去 10 年間にさまざまな事故を起こし、そのうちの二つは”プラントの作業者らに致命的な結果”をもたらしため、Chemscore 2022 の「論議の欠如」カテゴリで 6 段階中 0 と評価された。 これらの論議には、BASF の主力工場であるルートヴィヒスハーフェンでの事件が含まれる。一方、BUND の 2019 年のレポートによると、BASF は、重要な安全性チェックを完了していないことにより、EU の主要な化学物質安全規則 REACH の重要な側面を破った多くの主要な化学物質メーカーのひとつである。

 しかし、どちらかといえば、米国での安全記録はさらに不安にさせるものである。 ProPublica の分析によると、2021年12月、BASF は外資系企業の中で最大の発がん性大気汚染のフットプリント(足跡)を残し、米国で事業を行っているすべての企業の中で 4 番目に大きな有害物質フットプリントを持っていた。 Corpwatch のデータ サイトであるガリバーは、米国で(2000年から 2022年9月29日までに)1億 7,300 万ドル(約 225億円)相当の罰金を科されたことを記録している。 Violation Tracker は、これらの違反を詳細に示している。 ルイジアナ州のミシシッピ川沿いに広がる「がん回廊(Cancer Alley)」に関連するものもある。この地域では、ほとんどが黒人で貧しい人々が、BASF や他の企業が所有する産業用煙突からの化学物質の「有害なスープ」を吸い込むことを余儀なくされている。 全体として、ProPublica は、米国にある BASF の 20 の工場が推定 150 万人のがんリスクを高めていると見積もっている

B. 遺伝子組み換え

 遺伝子組み換え(GM)製品を含むバイオテクノロジーは、BASF の取り扱い技術/製品の中で重要な部分であり、非常に論争の的となっている。

 BASF は、他の大手業界と共に、論争の的となっている CRISPR-Cas ゲノム編集技術(*4)に由来する製品を含んで、全ての新しい GMO の規制緩和を推進している。一方、BASF は除草剤に耐性を持つように改変された作物の輸入許可を申請しており、BASF のビジネス モデルが農薬への依存を減らすことに重点を置いていないことを示している。

*4原注: CRISPR などの遺伝子編集技術は、分子ハサミ(molecular scissors)を、DNA の変化を起したいゲノム上の位置に導く。これらの製品は、前世代の GMO とは異なる比較的新しい開発であるため、新しい GMO として知られている。

 2020年にヴェーダー農場(Bader Farms)(訳注:ミズーリ州最大のモモの栽培農家)のジカンバの法的判決を考慮せず、BASF が GM のリスクに関する教訓を学んでいないことは注目に値する。BASFとバイエル(現在は除草剤生産者のモンサントを所有している)は、近くの農場の遺伝子組み換え綿作物に散布されたジカンバベースの除草剤がモモ農場に漂流し、モモの木を枯らしたとして訴訟を起こしたモモ農家のビル・ベイダーに数百万ドル(約数億円)を支払うよう命じられた。この事件とジカンバの使用に関する同様の訴訟は、今日でも米国で裁判中であり、物議をかもしている。(訳注(参考):米連邦控訴裁判所 除草剤ジカンバの農薬登録を取消す(有機農業ニュースクリップ 2020.06.09 No.1042))

C. 有害な農薬の販売

 ジカンバ(Dicamba)は、BASF の製品中で唯一の危険物質というわけではない。 非常に有害な物質の輸出に関するパブリック・アイ(Public Eye)による 2020 年の調査では、BASF を含む 5 つの大手生産者 (バイエル・クロップ・サイエンス、コルテバ・アグリサイエンス、FMC、シンジェンタ) が「世界で最も有害で物議を醸している農薬の販売における上位者」であることがわかった。 パブリック・アイの分析によると、2018 年に BASF が販売した農薬のベストセラーの売上の 25% 近くが、健康や環境に最高レベルの危険をもたらす物質であり、売上額は 6億4,000万米ドル(約832億円)に上ることが示された。 これらには、2021 年の欧州企業監視所(CEO)の調査で報告された殺虫剤フィプロニル(Fipronil) (ミツバチに有害であり、2017 年のベルギーとオランダの卵スキャンダルの中心であることが判明した) が含まれる。(訳注:フィプロニルはフェニルピラゾールに属する合成殺虫剤で,多種の穀物,公衆衛生,アメニティ,およびペット類に用いられている用途の幅広い殺虫剤である。

 ドイツとグローバルサウス(新興・途上国上)(訳注)の NGOs による 2020 年の調査では、バイエルと BASF は EU で承認されていない有効成分を含む殺虫剤をグローバルサウスで販売していたことが明らかになった。これには、特に人間の健康と環境に有害であるため、EU で明示的に禁止されている物質が含まれる。著者らは、ドイツの多国籍企業のこのような「二重基準」が、南アフリカの農場労働者やブラジルの先住民グループの健康を危険にさらしていると考えた。

訳注:グローバルサウスバージニア大学マーラー准教授によると、「グローバルサウス」には3つの定義がある。第一に、国連などの機関がアフリカ、アジア、南米を指す地理的な区分としてこの用語を用いるケース。第二に、研究者や活動家が「現代の資本主義のグローバル化によって負の影響を受けている世界中の場所や人々」を指して呼ぶケース。第三に北半球にもグローバルサウスは存在するという見方から派生した第三の定義として「複数の“南”が互いに認め合い、どの“南”にも共通する条件について考えるグローバルな政治的コミュニティー」もグローバルサウスを名乗るようになった。VOGUE JAPAN 2021年5月1日 BY REINA SHIMIZU

D. 化石燃料のベッドで

 化学製品の製造には、製品の原料として、また製造プロセスの動力源として、膨大な量のエネルギーが必要である。 BASF のルートヴィヒスハーフェン フェアブント(Ludwigshafen Verbund)(訳注:本社/総合生産施設所在地)だけで、ドイツの総ガス消費量の 4%を消費、またはデンマーク全体のガス消費量よりも多くを消費している。 何十年もの間、BASF やその他のエネルギー消費量の多い企業は、子会社のウィンターシャル Dea (Wintershall Dea) (訳注:BASF 傘下の独石油ガス大手)などを通じて、安価で信頼性の高い化石燃料の供給を確保するよう取り組んできた。 これにより、ドイツと EU はロシアのガス、そして最近では代替の液化天然ガス (LNG) に縛られることになった。

 BASF は、原材料の供給を確保するために 1969 年にウィンターシャルを初めて買収した。今日、ウィンターシャル Dea は自らを「ヨーロッパをリードする独立したガスおよび石油会社」と呼び、BASF 以外の幅広い顧客に供給している。 BASF は ウィンターシャル Dea の 3 分の 2 以上を所有しており、他のプロジェクトの中でも特に、国が支援するロシアのエネルギー大手であるガスプロム(Gazprom)(訳注:天然ガスの生産・供給において世界最大のロシア企業。1993年2月17日創設)といくつかの投機的事業を行ってきた。 これらには、現在閉鎖されているロシアからヨーロッパへの非常に物議を醸すノルドストリーム 1(Nord Stream 1)ガスパイプライン、稼働していないノルドストリーム 2(Nord Stream 2)パイプライン、およびシベリアのガス開発プロジェクト アチムガズ(Achimgaz)が含まれる。

 ガスプロムとの「儲かる連携」は、当時は良いアイデアのように思えたに違いないが、警告信号は常にあった。しかし BASF はそれらを見ないことを選択した。 2008 年にさかのぼると、著名な欧州企業との取引は、EU での足場を築くためのガスプロムの政治戦略の一部であると解説者らは推測していた。 ロシアのウラルシブ銀行(Russian UralSib Bank)のクリス・ウィーファーは、ニューヨーク・タイムズで次のように述べている。”ガスプロムが欧州議会のドアをノックする代わりに、トタル(Total)(訳注:フランスに本社を置く国際石油資本。2021年5月にトタルエナジーズと社名変更)と BASF が代わりにそれを行う。”

 今日、ドイツをロシアの天然ガス供給に依存させるというロシアの戦略は成功したようだ。 BASF はロシアへのエネルギー禁輸に強く反対し、ディー・ターゲスツァイトゥング(訳注:ドイツの全国版日刊紙(独: die tageszeitung; taz))の編集者は最高経営責任者のマーティン・ブルーダーミュラーを”最初に家に火を放ち、自分だけが消火できると主張する放火犯”になぞらえた。 一方、ターゲスシャウ (Tagesschau)(訳注:ドイツのニュース番組)は、ディー・ツァイト(訳注:ドイツの週刊発行の全国新聞で質が高いとの評価がある。(独: Die Zeit)) の編集者であるミヒャエル・トゥマン(Michael Thumann)が、ガスプロム、BASF、および ウィンターシャル Dea (Wintershall Dea)の間の密接な関係を鋭く批判した方法について次のように報告した。 ”彼らは自分たちが道具化されることを許したと言わなければならない。”

 BASF とウィンターシャル Dea(Wintershall Dea)にとって、ロシアの化石燃料とベットをともにする(を利用する)という戦略は、彼らの歴史上の誤りであった。 ロシアによるウクライナ侵攻により、BASF は、ノルドストリーム 2(Nord Stream 2)プロジェクトへの投資を帳消しにするなど、ロシアでの事業活動を大幅に停止することになった。ウィンターシャル Dea がロシアのプロジェクトから最終的に撤退することを発表するのに 2023年1月までかかったが、それはロシア政府による「合弁事業の経済的収用」のためであった。 その結果、ウィンターシャル Dea は 2022 年の財務結果で 48 億ユーロ(6,720億円)の純損失を報告し、BASF はそのエネルギー会社の株式を売却したいと述べている。

 しかし、それはロシアの化石燃料だけではない。 前述のように、BASF は液化天然ガス (米国からのフラッキング ガスを含む) に多額の投資を行っており、ドイツが今後数十年にわたって化石燃料 LNG に固執するという深刻な懸念がある。

 BASF はまた、炭素集約型の水素を大量に生産および消費している。 いわゆる”グリーン”水素の生産(*5)を支援するために気前の良い公的資金(1億 3,400万ユーロ)(約188億円)が供与されたが、グリーン水素の誇張された需要には問題がある。 それは最終的にダーティー水素をサポートすることになり(”よりクリーンな”水素への移行が想定されている間)、その電力が地域の開発ニーズと気候目標を代わりに満たすことができる場合、グローバルサウス(新興・途徐国)からのものを含むクリーンエネルギーの巨大な略奪を表している。
*5原注:グリーン水素は再生可能エネルギーから作られる。

 InfluenceMap (訳注::気候と持続可能性の問題の最先端に取り組んでいる世界的な非営利のシンクタンク)が気候政策フットプリント 2022 で BASF を 3 位にランク付けしたことは不思議ではない。 InfluenceMap は、BASF の”ドイツにおける石油および化石ガスの生産と基盤施設の拡大を広く支援することを含む、ヨーロッパレベルの強力な政策関与、およびウクライナ侵攻後の国際的な取り組み”を批判している。

 これは、長年にわたる気候問題に関する BASF の逆行する立場と一致しており、例えば、欧州企業監視所(CEO)は以前、BASF の排出量取引制度に対する貪欲なアプローチ、又は 2030 年の EU エネルギー効率目標への反対をそれが産業側にとって痛手になるであろうという理由で詳細に説明した

E. 積極的なタックス プランニング

 多くの人は、大企業が巨額の収入を得ていることに懸念を抱いているが、しかし企業は、”我々はすべての税金を払っている”として正当化することがよくある。

 しかし、欧州議会のグリーン/EFA グループによる 2016 年 11 月の報告書は、BASF は 2010年から2014年の間によく知られた優遇税制を受ける子会社の様な創造的な税務ツールを利用しながら 9億2,300万ユーロ(約1,290億円)の支払いを回避するために、どのように積極的なタックス プランニング(訳注)戦略を使用したのかを明らかにした。同報告書は BASF を”OECDと欧州委員会の利益移転及び租税回避と戦う取り組みに対する声高な反対者”と呼んだ。 Accountancy Europe(訳注:会計士、監査人らを代表する 35 か国の 50 の専門組織の連合体)によって報じられた 2017年9月の欧州議会議員への公聴会で、BASF の高官は、これが合法で多国籍企業の納税義務が軽減されるのであれば、”国境を越えたタックス プランニング”を支持すると主張した。 BASF は、”企業の機密情報が一般に公開される可能性がある”として、多国籍企業による税の透明性(*6)の向上を求める改革に反対したと報告されている。

訳注タックスプランニングとは、税金をコントロール可能なコストと考えて会社の利益を最大化し、事業に投下するキャッシュフローを創出すること。 会社は事業から得た利益に対して税金を払う必要がある。

*6原注:Public Country by Country Reporting (pCBCR) は、大企業が利益と税金の支払いについて全ての人に明らかにすることを目指してしている。これにより、政府は、政府が未払いの全ての税金を確実に回収し、脱税詐欺を阻止できるようになる。

 緑の党/ EFA の報告書で言及されているように、BASF の”有毒な税の策略(toxic tax tricks)”は、様々な方法で公的資金から恩恵を受けている場合、ドイツ以外であっても腹立たしい。 上記では、より安全な化学物質への投資を支援するための公的資金に対する CEFIC の呼びかけと、いわゆる”グリーン”水素に対する BASF の 1億4,300万ユーロ(約200億円)の授与を詳細に説明した。 しかし、それだけではない。 たとえば、BASF は英国の Covid Corporate Financing Facility から他のどの企業よりも多くの支援を受けており、公的機関は BASF の無担保債務を 10 億ポンド (約 11 億 2500 万ユーロ)(約1,580) 購入している。 どうやらすべてのローンは2022年3月までに満期を迎えるか、発行者に売り戻されたようである。BASF は、そのスキームから恩恵を受けた巨大な気候フットプリントを持つ多くの企業のひとつである。

(追加 23/04/13)
結論

 BASF は、160年近くの歴史を持つ企業である。 この記事では、BASF の活動の過去ではなく、最近の BASF の特質について詳しく説明したが、無視できない歴史的側面がひとつある。 BASF は、ニュルンベルク裁判(訳注:第二次世界大戦において連合国によって行われたドイツの戦争犯罪を裁く国際軍事裁判で(1945年11月20日−1946年10月1日)、日本の極東国際軍事裁判(東京裁判)と並ぶ二大国際軍事裁判のひとつ。)の結果、分割された後、IG (イーゲー)ファルベンから売却された企業のひとつである。 今日の BASF のウェブサイトが、IG (イーゲー)ファルベンの指導者たちがその子会社のチクロン B 有毒ガスがナチスの死の部屋で何百万人もの人々を殺すために使用されていたことを知っていたかどうかについて疑問を投げかけ続けていることは、我々にとって衝撃的である。同社は化学物質を製造するために強制収容所の近くに IG アウシュヴィッツと呼ばれる広大な奴隷労働工場を運営していた。 BASF が 7,000 万ユーロ(約98億円)を寄付したホロコーストの犠牲者に対するドイツの業界補償基金は、第二次世界大戦の終結から 55 年後の 2000 年に設立された

 これは、BASF の企業文化が過去と現在の有害な遺産について完全な説明責任をどの程度受け入れるかを調査する際に、憂慮すべき状況を提供するものである。

 如才ないコミュニケーション、人脈の整った最高経営責任者、 特別に作曲された管弦楽曲、社内ソムリエにもかかわらず、BASF は非常に問題のある過去を持つ会社であり、歴史の流れに逆行することが多すぎる。 既知の環境汚染があるだけでなく、残留性で有害な製品のまだ知られていない有害な遺産もあり、今後数年で完全に明らかになるであろう。 莫大な二酸化炭素排出と、化石燃料への投資とロビー活動がある。 税金逃れに関する記録があり、その運営のための財政的支援を求める公的資金への要求がある。 また、EU の化学物質規制の約束され、大いに必要とされている改革について破滅を煽る声もある。

 あまりにも長い間、ベルリンとブリュッセルの政治家らは BASF のクールエイドを飲んできたきた(訳注:Kool-Aidはアメリカの粉末ジュースのブランド。Drinking the Kool-Aid はアメリカのスラングで、仲間内の同調圧力に屈する意)。 彼らは、ドイツの輸出主導の成長モデルにおける経済力を政治力に変換し、接触、繋がり、そして広範な影響力を可能にして、ロビー事項をあまりにも多く提供することを許したように見える。BASF とその企業および政治的同盟者は、我々の健康と環境を脅かしている。

 この大きな汚染者とその巨大な政治力に取り組む時が来た。 化石燃料、化学物質と殺虫剤、遺伝子工学、脱税に関する規制を取り戻し、企業の力よりも持続可能性と正義を優先する時が来た。 EU レベルでは、フォン・デア・ライエンの欧州委員会は、REACH 改訂の優先順位を再設定し、夏前に提案が確実に公開されるようにすることから始めることができるであろう。

 最後になるが、政治的意思決定から気候変動や有害汚染物質を追い出す時が来た。

 この記事のすべてのロビー データは、2023年3月9日に公的記録で確認された。

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化学物質問題市民研究会
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