Deutsche Welle (DW) 2019年7月3日
オーストリア議会
除草剤グリホサート禁止を可決


情報源:Deutsche Welle (DW), 3 July 2019
Austrian parliament votes to ban glyphosate weedkiller
https://www.dw.com/en/austrian-parliament-
votes-to-ban-glyphosate-weedkiller/a-49450418


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年7月13日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/news/
190703_DW_Austrian_parliament_votes_to_ban_glyphosate_weedkiller.html


 オーストリア議会は、元々モンサントにより開発され、ラウンドアップという商品名で販売されている除草剤グリホサートを完全に禁止する EU の最初の国になろうとしている。


 オーストリア下院議会の議員らは火曜日(7月2日)、アメリカで潜在的にがんを引き起こすとして多くの訴訟に直面している議論ある除草剤グリホサートの完全禁止を採択した。

 ”その除草剤の発がん性の科学的証拠は増大している”と議会第一党の社会民主党党首パメラ・レンディ=ヴァーグナーは声明の中で述べた。この有毒物質を我々の環境で使用禁止にすることは我々の責任である”と彼女は述べた。

 グリホサートは元々、アメリカの巨大化学会社モンサントにより開発されたが、同社は昨年、ドイツのバイエル社の子会社になった。その除草剤は1974年にラウンドアップという商品名で初めて市場に現れた。その特許権が切れた後、様々な会社がグリホサートに基づく除草剤を様々な名前で製造している。

巨額の賠償金

 多くの専門家らがその物質は人の健康に有害影響をもたらすと警告している。2015年に世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、グリホサートは”発がん性がおそらくある(probably carcinogenic)”と認定した。 ScienceDirect に発表された今年の メタ分析(訳注:複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること)は、グリホサート暴露と、ある種の血液細胞から発症するがんである非ホジキンリンパ腫との間に”説得力のある関連”があると主張した。

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 アメリカでは現在、13,000人以上の人々がバイエル(訳注:旧モンサント)から被害を受けたと訴訟を起こしている。同社は最近の数か月にカリフォルニアの 3つの陪審裁判で、巨額の賠償金を支払うよう命じられた。そのうちのひとつは、その化学物質への暴露により非ホジキンリンパ腫になったと主張するある夫婦への20億ドル(約2,2000億円)以上の支払いを裁定したが、その陪審はまだ最終的ではなく、バイエルはそれらの全てを上訴している。

バイエル炎上

 同社は、グリホーサートは発ガン性物質ではないと主張してきた。”オーストリア国民議会の決定はグリホサートに関する広範な科学的結論に反する”と火曜日(7月2日)に声明の中で述べた。

 オーストリア上院がグリホサート禁止に反対しなければ、その法案は同国の大統領アレクサンダー・ファン・デア・ベレンによって署名され、立法化されるであろう。このことによりオーストリアは、その除草剤に対するそのような劇的な措置をとる EU で最初の国になるであろう。

農民への平手打ち

 オーストリアは、保守のオーストリア国民党(oVP)の党首セバスティアン・クルツ前首相が極右のオーストリア自由党(FPO)との連立を解消した後、5月に不信任決議により辞任に追い込まれ、現在は新たに組閣された暫定政府によって運営されている。新たな選挙が 9月に行われると予想されている。

 反移民派のオーストリア自由党(FPO)とリベラルの新オーストリア党(NEOS)はオーストリア議会の禁止を支持した。しかし、オーストリア国民党(oVP)は、”生粋のポピュリスト”であり、”その除草剤を適切に使用している農民への平手打ち”であるとして、その決定を酷評した。

 この禁止は、2017年に今後 5年間、この除草剤の使用を EU が認めているので、 EU の規則と明らかに衝突するであろう。 EU は、グリホサートを発がん性物質と分類していない欧州食品機関(EFSA)と欧州化学物質機関(ECHA)に依存している。しかし今年の初めに発表された報告書は、ヨーロッパの規制当局はモンサント自身により実施された研究からコピー&ペーストをしていることを示した。

dj/se (Reuters, dpa, AFP)


訳注:参考情報


化学物質問題市民研究会
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