欧州委員会健康・消費者保護総局  2008年6月20日
活性成分イミダクロプリドのレビュー・レポート
2008年9月26日
食物連鎖と動物健康に関する常任委員会で認可決定


情報源:EUROPEAN COMMISSION HEALTH & CONSUMERS DIRECTORATE-GENERAL
SANCO/108/08 rev. 1, 20 June 2008
Review report for the active substance imidacloprid
Finalised in the Standing Committee on the Food Chain and Animal Health
at its meeting on 26 September 2008
in view of the inclusion of imidacloprid in Annex I of Directive 91/414/EEC
http://ec.europa.eu/food/plant/protection/evaluation/existactive/list-imidacloprid_en.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月29日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/pesticides/080620_imidacloprid.html

訳注1):本報告書は、2009年3月16日に立ち上げられた欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database)から、ミツバチへの有害性が問題となっているイミダクロプリド(imidacloprid)を検索して得た。
この農薬データベースはよくできているので末尾に簡単に紹介した。


1. 再評価プロセスでとられた手順

 このレビュー・レポートは、この物質を理事会指令91/414/EEC の Annex I に含める可能性という観点をもって、植物防疫製品(訳注:農薬)の上市に関する指令 91/414/EEC 8(2)項に規定されている既存の活性成分のレビューのための作業プログラムという脈絡で実施されたイミダクロプリドの再評価の結果として作成された。

 規則(EC) No 1490/2002(2)で最新更新されている理事会指令91/414/EEC 8(2)項に参照されている作業プログラムの第二及び第三段階の実施のための詳細規則を規定している欧州委員会規則 (EC) No 451/2000(1) は、再評価を実施するにあたり従わなくてはならない手続きに関する詳細な規則を規定している。イミダクロプリドは、この規則でカバーされる既存の活性成分の一つである。

 バイエル・クロップサイエンスAG は、規則(EC) No 451/2000の4項に従い、活性成分イミダクロプリドを理事会指令のAnnex I に含めることを確実にしたいという希望を欧州委員会に届け出た。

 規則(EC) No 1490/2002のAnnex I の下に、ドイツは、届け出者によって提出された書類一式に基づきイミダクロプリドの評価を実施するための加盟国報告者(rapporteur)として、欧州委員会により任命された。
 規則(EC) No 1490/2002の中で、欧州委員会はさらに、(EC) No 1490/2002の7(2)で要求される書類一式の加盟国報告者への提出、及び、さらなる技術的及び科学的情報に関する他の組織への提出について、届出者の提出期限を2003年11月30日と決めた。

 バイエル・クロップサイエンスAG は、支持される用途を考慮して、本質的なデータギャップを含んでいない書類一式を期限までに加盟国報告者に提出した。従って、バイエル・クロップサイエンスAG は唯一データ提出者であるとみなされた。

 規則(EC) No 1490/2002 10(1)項にしたがい、ドイツは2005年6月13日に欧州食品安全機関(EFSA)に、指令 Annex I にイミダクロプリドを含める可能性に関する勧告を要求された通り含めて、彼等の調査報告書(以後、評価リポート案)を提出した。さらに、規則 (EC) 1490/2002 10(2) 項にしたがい、欧州委員会と加盟国もまた、届出者からイミダクロプリドに関する書類概要を受領した。

 規則(EC) No 1490/2002 11 (c) 項に従い、欧州食品安全機関(EFSA)は2006年1月25日に、唯一データ提出者であるバイエル・クロップサイエンスAG及び全ての加盟国による評価レポート案に関する協議を実施した。

 欧州食品安全機関(EFSA)は、評価レポート案及び受領したコメントをレビューするために、何か国かの加盟国からの技術的専門家との集中的協議を実施した(ピアレビュー)。

 規則 1490/2002 11項に従い、欧州食品安全機関(EFSA)は欧州委員会にリスク評価の結論を送付した[活性成分イミダクロプリドの農薬リスク評価のピアレビューに関する結論(最終版 2008年5月29日)]。この結論は、背景文書 A(評価レポート案)及び背景文書 B(EFSA ピアレビュー・レポート)を参照している。

 規則 (EC) No 1490/2002 12項に従い、欧州委員会は2008年9月26日、レビュー・レポート案を食物連鎖と動物健康に関する常任委員会に最終検証のために示した。レビュー・レポート案は2008年6月11日に常任委員会の会議で最終決定された。

 本レビュー・レポートは、常任委員会による最終検証の結論を含んでいる。欧州食品安全機関(EFSA)の結論、及びEFSAの結論の後に提出されたコメント及び説明(背景文書 C)の重要さに鑑み、これらの文書もまた、このレビュー・レポートの一部と考えられる。

2. このレビュー・レポートの目的

 背景文書及び付属書を含んでこのレビュー・レポートは、指令 91/414/EEC Annex I にイミダクロプリドを含めることに関する指令2008/116/EC4の支持の下に、加盟国が指令の条項、特に 4(1) 及び Annex VI に規定される一様原則に従い、イミダクロプリドを含む個々の植物防疫製品に関する決定を行うことについて、加盟国を支援するために作成され、最終決定された

 このレビュー・レポートはまた、上述の一様原則の A.2.(b) 及びこれらの原則のpart B のいくつかの特定条項の下に求められる評価を規定するものである。これらの条項の中で、加盟国は、認可の申請と付与において、Annex Iに活性成分を含める目的で提出された、指令の Annex II の活性成分に関する情報を、これらのデータの評価の結果とともに、考慮に入れべきであると規定している。

 規則(EC) No 1490/2002の13項に従い、加盟国はこのレビュー・レポートを関心ある組織による協議(訳注:パブリックコメントのこと)のために、あるいは彼等の特定の要求に応じて、利用可能にするであろう。

 このレビュー・レポート中の情報は、少なくとも部分的には指令91/414/EEC の条項の下に機密又は保護される情報に基づいている。したがって、このレビュー・レポートは、指令91/414/EEC の脈絡以外、例えば第三国、申請者がこのレビュー・レポートが根拠とした情報への法的アクセスを持っていることを実証していない場合、どのような登録をも支持するために受け入れることがないよう勧告する。

3. 指令 91/414/EECでの全体的な結論

 評価からの全体的な結論は、イミダクロプリドを含む植物防疫製品(訳注:農薬)は指令 91/414/EEC の 5(1)(a)及び(b)に規定される安全要求を満たすであろうと期待してもよいということである。しかし、この結論は、各加盟国が認可を付与する又はレビューする植物防疫製品が含む個々のイミダクロプリドについて、この報告書の4、5、6、7 項の特定要求及び、指令 91/414/EEC の4(1)項の実施及び Annex VIに規定される一様原則に従うことを条件とする。

 さらに、これらの結論は、主データ提出者によって提案され、支持され、利用可能なデータによって支持されているリスト中で述べられている用途の枠組みに達した(添付 appendix II)。

 上述の範囲を超える用途パターンの拡大は、提案された用途拡大が指令 91/414/EEC の4(1)項及び Annex VI に規定される一様原則の要求を満たすことができるかどうかを調べるために、加盟国レベルでの評価が求められるであろう。

 下記の参照値はこの再評価の一部として決定された。
  • ADI 0.06 mg/kg bw/day
  • ARfD 0.08 mg/kg bw
  • AOEL 0.08 mg/kg bw/day

 特に残留農薬については、このレビューは、適切な植物防疫方法(good plant protection practice)に基づく使用の結果として生じる提案用途からの残留は、人または動物の健康に有害影響を及ぼさないということを明らかにした。理論最大1日摂取量(TMDI;水と動物由来の製品を除く)は、60kgの成人についてのWHO欧州ダイエットに基づけば1日許容摂取量(ADI)の7%;独ダイエットによれば1日許容摂取量(ADI)の10%である。
 水と動物由来の製品を加えた摂取は、摂取問題を引き起こすとは予測されない。
 このレビューは、散布者、労働者、及び近隣者のためのいくつかの許容できる暴露シナリオを特定したが、それは、上述した一様原則の関連事項に従って、それぞれの植物防疫製品について確認されるべきことを求める。

 このレビューはまた、提案され支持された用途の条件の下では、もし、この報告書の6項で詳述されているように、ある条件が考慮されるなら、指令91/414/EEC 4 (1) (b) (iv) 及び (v) で規定されているように、環境への許容できない影響は存在しない。

4. 基本データ

 イミダクロプリドの基本データは Appendix I に示される。
 活性成分は最低純度 970 g/kg (appendix I)に準拠すること。
 FAO 仕様はこのレポートのAppendix Iに示される。
 主データ提出者によって通知された活性成分に対し、現在入手可能な情報に基づけば、毒性学的又は環境的懸念となる製造不純物は存在するとみなされないことを確立した。

5. エンドポイント及び関連する情報

 認可の付与又は見直し時に、指令91/414/EEC の4(1)及び同司令のAnnex VIに規定される一様原則の条項を適切に適用することを加盟国に役立たせるために、最も重要なエンドポイントが再評価プロセス中に特定された。これらのエンドポイントは EFSAの結論及び本レポートの3項にリストされている。

6. イミダクロプリドを含む植物防疫製品の認可に関連して、
  短期的視点から加盟国が考慮すべき特定の条件


 Appendix IIにリストされている提案され支持された用途に基づき、認可の付与、修正、または撤回の枠組みにおいて適切なら、全加盟国から特定の短期的視点の注意として下記の特定の課題が特定された。

 加盟国は下記について特別に注意を払うべきである。

  • 散布者と労働者の安全、及び使用条件が適切な個人防護の装備を確実に記述すること
  • 種子消毒は、職業的種子処理施設においてのみ実施されるべきこと。これらの施設は、保管、輸送、及び散布の間、粉じん雲(dust clouds)の放出を防止を確実にするために最良の利用可能な技術をて適用しなくてはならない。
  • 土壌中での高度の結合と使用時の漏えいのの最小化を確実にする適切な装置の使用
  • 水生生物への影響
  • 目標外の節足動物への影響
  • ミミズやその他の土壌中の生物(macro-organisms)への影響
  • ミツバチの保護、特に散布時に
 認可条件は、適切な場合にはリスク軽減措置を含むべきである。

7. 実施されるべき調査リスト
 (略)
8. データ守秘の主張のある調査に関する情報
 (略)
9. このレビュー・レポートの更新
 (略)


訳注1:欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database) について



2009年3月16日に立ち上げられた欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database)からは、
活性成分(Active Substances)と残留農薬基準(MRLs)に関する情報が得られる。

■活性成分(Active Substances)
下記のStaus を選択できる 。(entries数は2009年5月22日現在)
  • All 全活性成分対象:1209 entries
  • Inclided:認可されている成分(理事会指令91/414/EEC の Annex I にリストされている):334 entries
  • Not included:認可されていない成分:766 entries
  • Pending:保留:67 entries
  • Not a plant protection product:農薬には使われていない:42 entries
■残留農薬基準(MRLs)
下記のアプローチができる。
  • 特定農産物(Product)の全活性成分の残留基準値
  • 特定の農産物の特定活性成分の残留基準


訳注:関連情報


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