欧州委員会 プレスリリース 2022年9月28日
循環型経済:
欧州委員会は使い捨てプラスチックによる
廃棄物を削減するための措置をとる


情報源:European Commission, Press release, 29 September 2022
Circular economy: Commission takes action to
reduce waste from single-use plastics
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_22_5731

訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年10月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/EC/220929_Circular_economy_
Commission_takes_action_to_reduce_waste_from_single_use_plastics.html



 欧州委員会は本日、特定のプラスチック製品が環境や人間の健康に及ぼす影響を軽減するために、「使い捨てプラスチック指令」の実施を強化するよう求めて、11の加盟国に対して法的措置を講じることにした。ベルギー、デンマーク、エストニア、アイルランド、フランス、クロアチア、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、及びフィンランドは、指令の完全な国内法化(transposition)を確実にするために必要な措置を委員会に報告していなかった。

 使い捨てプラスチック製品は、我々の海岸、海、外洋に蓄積している。それらは一度だけしか使われずに捨てられるか、又は短期間しか使用されないので、再利用されずに我々の海に行き着く可能性が高くなる。プラスチックは便利で有用で価値のある素材であるが、散らかったプラスチックは環境を損ね、我々の経済に悪影響を及ぼす。海のごみの 80% 以上がプラスチックであり、環境に損害を与え、特に海洋生物や鳥に直接的な害を及ぼし、またマイクロプラスチックに分解すると、人間の食物連鎖にも入り込む可能性がある。散らばったプラスチックが経済に及ぼす悪影響は、観光、漁業、海運などの分野で見られる。

 「欧州グリーン ディール」(訳注1)の下で、欧州委員会は循環型経済(訳注2)に向けた政策と行動を提案した。この循環型経済では、プラスチックはより持続可能な方法で使用され、再利用及びリサイクルされ、廃棄物と汚染が減少し、浄化コストが削減される。「使い捨てプラスチック指令」(訳注3)は、海洋ごみを回避する持続可能な代替品の生産と使用を促進するため、欧州委員会の「プラスチック戦略」と「循環経済行動計画」の不可欠な要素である。この指令は、公衆の健康、環境、及び気候中立(訳注4)に利益をもたらす EU の公害ゼロの目標にも貢献している。 2030年までに海のプラスチックごみを少なくとも 50%削減することを目指している。

使い捨てプラスチック指令の施行

 指令は 2019年7月3日に発効し、加盟国は 2年間でその法令を国内法化し(transpose)、指令に基づく義務が加盟国内で実施され始めた。ただし、全ての加盟国が設定された期限までに指令を国内法化したわけではない。

 加盟国が EU 指令の条項を国内法に完全に組み込む措置を国内法化期限までに導入できなかった場合、市民はそれから生じる利益と権利を享受することができない。

 2022年1月、欧州委員会は義務違反手続き(infringement procedures)を開始し、最初のステップとして、「使い捨てプラスチック指令」を完全には国内法化していない 16の加盟国に正式な通知書を送付した。これらの 16件のケースのうち、1 件 (スペイン) は 7 月の義務違反審査中に終了し、他の 4 件 (キプロス、リトアニア、ルクセンブルグ、スロバキア) については必要な措置が講じられたため今日終了した。 2 つのケース (チェコとマルタ)については措置の分析が保留中である。しかし、ベルギー、エストニア、アイルランド、クロアチア、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、及びフィンランドについては、国内法化措置がまだ不十分であるとして、欧州委員会はこれらの諸国に合理的な意見を発出することを決定した。関係する加盟国は、必要な措置を講じるための猶予期間を 2か月与えられているが、間に合わなければ欧州委員会は財政的制裁を課す提案とともに、本件を欧州連合司法裁判所に付託することを決定するかも知れない。

 さらに、デンマークとフランスは当初、国内法化が完了したことを示したが、分析の結果、欧州委員会はいくつかの条項が欠落していることを発見した。そのため、欧州委員会はこれら 2 つの加盟国に正式な通知書を送ることも決定した。デンマークとフランスは現在、回答して状況を改善するために 2 か月の猶予を与えられている。

背景

 欧州委員会による本日の執行措置は、市民と環境をプラスチック汚染から保護すると同時に、成長と革新を促進することを目的としている。より持続可能で循環型の経済への移行を支援し、ヨーロッパの企業と消費者を、海洋ごみや海洋汚染を回避し、地球規模の問題に取り組む持続可能な代替品の生産と使用における世界的リーダーとしての地位を確立するのに役立つ。

 「使い捨てプラスチック指令」の下で加盟国が講じなければならない主要な措置は次のとおりである。
  • 持続可能な代替品を簡単に入手でき、それが手頃な価格であるときには、使い捨てプラスチック製品が市場に出るのを防ぐ。これは、ヨーロッパの海岸でで最もよく見られる 10種の使い捨てプラスチック製品廃棄物に当てはまる。すなわち、綿棒、カトラリー(訳注:ナイフ、フォーク、スプーンなど)、皿、ストローとマドラー、風船と風船用の棒、食品容器、飲料用カップ、飲料容器、たばこの吸い殻、プラスチック袋、小袋(パケット)、包み紙(ラッパー)、ウェットティッシュ、生理用品。これらは、漁具と合わせると EU の海洋ごみ全体の 70% を占める。

  • 食品容器や飲料用カップの消費を減らし、再利用可能な代替品を促進する。

  • 使い捨てプラスチック製品の拡大生産者責任制度を確立する。これにより、生産者に、廃棄物収集、データ収集と報告、及びこれらの製品から生じるごみの清掃の費用を負担させることを確実にすることができる。

  • 例えば預かり金制度(deposit refund schemes)を通じて、2029 年までに使い捨てプラスチック飲料ボトルの 90% を回収する。さらに飲料ボトルにはある最小限の量の再生プラスチックを使用するという製品設計要件が適用される。飲料容器のキャップとフタは本体に取り付けられたままにする必要がある。

  • 使い捨てカップ、生理用品、たばこ製品にラベル表示要件を導入する。ゴミのポイ捨てによる悪影響を避けるために、製品にプラスチックが含まれていることを一般の人々に知らせ、適切な廃棄方法について助言する必要がある。

  • プラスチックを含む漁具の生産者は、港の受入施設からの廃棄物の収集とその輸送及び処理の費用を負担する必要がある。また、啓発活動の費用も負担する。
指令によって設定された具体的な目標:
  • 2025 年までにペットボトルの 77% を分別回収し、2029 年までに それを 90% に増やす必要がある。

  • 再生プラスチックの 25%を 2025 年から PET 飲料ボトルに組み込み、30% を 2030 年から全てのプラスチック飲料ボトルに組み込む必要がある。
 EU 条約に規定されている義務違反手続きは、指令をタイムリーかつ正確に国内法化することをできなかった加盟国に対して欧州委員会が法的措置を講じることができることを規定している。

 環境規則は、人間の健康と環境への悪影響を回避し、最新の健康及び技術的証拠を反映するために確立されている。環境法と政策の不十分な実施は、社会に環境的、経済的、社会的コストをもたらし、経営者らにとって不平等な競争の場を生み出す。


訳注1:欧州グリーンディール
訳注2:EU 環境型経済 訳注3:EU 使い捨てプラスチック指令 訳注4:気候中立(クライメイト・ニュートラル)と炭素中立(カーボンニュートラル)
  • 気候中立(環境省/EIC ネット 2021年7月15日)
     人、企業、団体などが、日常生活や製造工程などの活動により排出する温室効果ガスを、その吸収量やその他の削減量を差し引いて総排出量を算出し、実質(ネット)ゼロにするという取り組み。
     「カーボンニュートラル(炭素中立)」と「クライメイト・ニュートラル(気候中立)」はほぼ同義であるが、その違いは二酸化炭素などのカーボンに焦点をあてる「カーボンニュートラル」に対し、「クライメイト・ニュートラル(気候中立)」は、二酸化炭素だけでなく、メタンや一酸化窒素(N2O)など、全ての温室効果ガスを対象とする。
  • カーボンニュートラルとは(環境省/脱炭素ポータル)
     カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します


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