Health Europa 2022年3月18日
出生前のビスフェノール A への暴露は、
小児期の呼吸器の健康に影響を与える可能性がある

情報源:Health Europa, 18th March2020
Prenatal exposure to bisphenol A may impact respiratory health in childhood
https://www.healtheuropa.eu/prenatal-exposure-bisphenol-a-respiratory-health-in-childhood/114222/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年3月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/220318_Health-Europa_Prenatal_
exposure_to_bisphenol_A_may_impact_respiratory_health_in_childhood.html


 ヨーロッパの 6か国からの 3,000人以上の子どもたちの分析は、出生前のビスフェノール A への暴露が学齢期の少女の呼吸器の健康に及ぼす影響を調べた。

 BPA としても知られるビスフェノール A は、主にポリカーボネート・プラスチックの製造に使用するために大量に製造される化学物質である。飲料容器、おもちゃ、保護メガネなど、さまざまな日用品に使用されている。ビスフェノール A への暴露は通常食事経由によるもので食品や飲料が犯人であり、その結果、内分泌系を混乱させる可能性がある。欧州化学物質庁(ECHA)は、2017年に「非常に懸念の高い」物質のリストにビスフェノール A を含めた。

 バルセロナ・グローバルヘルス研究所(ISGlobal / Barcelona Institute for Global Health)が実施した新しい研究では、ヨーロッパの 6 か国からの 3,000を超える母子ペアを調査し、学齢期の少女のこの化学物質への出生前暴露と呼吸器系の健康状態の悪化との間に関連性があるかどうかを調べた。その結果はジャーナル EnvironmentInternational に掲載されている。

ビスフェノール A :胎盤関門を通過する

 以前の研究では、ビスフェノール類は母乳に存在し、胎盤関門を通過する可能性があると概説されている。研究者たちは、ビスフェノール A への出生前暴露が出生後の呼吸器系の健康問題に関連しているかどうかを調べることにした。

 著者らは、1999年から 2020年の間に収集されたスペイン、フランス、ギリシャ、ノルウェー、オランダ、および英国の女性らから妊娠中に採取された尿サンプルを使用した。また、数年後にアンケートを通じて収集された子どもたちの呼吸器系の健康に関するデータを照合した。

 彼らは、尿サンプルの 90%で、ビスフェノール A の存在が高いことを発見した。しかし、他の種類のビスフェノール類はサンプルではあまり目立たなかったが、オランダからのサンプルで他のビスフェノール類の顕著な存在が確かにあることを発見した。

呼吸器系の健康への影響

 学齢期の少女の呼吸器系の健康状態の悪化と母親の妊娠中のビスフェノール A への暴露との間に関連性が見られた。特に、ビスフェノール A の濃度が 2倍に増加すると、呼吸器系症状のリスクが 13%高くなった。驚いたことに、この関連性は男の子や他の種類のビスフェノール類では見られなかった。

 ”私たちの結果は、ビスフェノール A が小児期の呼吸器系の健康に悪影響を与えることも報告している以前の研究の結果と一致している。この影響は、ビスフェノール類が胎盤関門を通過し、発達段階で子どもたちの呼吸器系と免疫系に悪影響を」与える可能性があるという事実に起因するかもしれないと考えている”と、バルセロナ・グローバルヘルス研究所(ISGlobal)の研究者で研究の筆頭著者である アリシア・アベランは説明した。

 少女と少年の間で観察された違いについては、ISGlobalの研究者であり、研究の最終著者であるマリベル・カサスは、”ビスフェノール類は内分泌かく乱物質であり、性ホルモンを妨害する可能性がある”と指摘している。私たちの調査結果が示唆しているように、これは、暴露した人の性別によって、それらが持つ影響に違いをもたらす可能性がある。”


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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