デンマーク工科大学(DTU) 2016年4月19日
低用量ビスフェノールAは
生殖系と行動に影響を及ぼす

ミリアム・マイスター

情報源:Technical University of Denmark (DTU), April 19, 2016
Bisphenol A in low doses can affect the reproductive system, behavior
by Miriam Meister
http://www.food.dtu.dk/english/News/2016/04/Bisphenol-A-in-low-doses-can-affect-
the-reproductive-system-and-behaviour?id=ee009a3b-e421-4858-8be1-6103080a9978


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年5月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/160419_DTU_BPA_in_low_doses.html


 もしラットが発達早期に低用量でビスフェノールAに暴露すると、それは精子数の減少、肥満、及び乳房の発達と行動に変化をもたらすことができる。これらはデンマーク工科大学・国立食品研究所の新たな研究の結果の一部である。この結果は、低用量のビスフェノールAが生殖系及び神経系はもとより、代謝系の発達に影響を与えることができることを示した以前の動物研究を裏書きするものである。

 例えば、レシートの熱転写紙はもちろん、缶の内面ライニングやある種のプラスチックで使用されている化学物質ビスフェノールAは、人間に有害健康影響を引き起こすことが疑われている。

 国立食品研究所は、胎児期及び授乳期中にビスフェノールAに暴露させたラットによって、この内分泌かく乱化学物質の影響を検証するために大規模な動物研究を実施した。

 研究者らは、ラットの成長、脳の発達、及び乳腺の発達を含んで生殖系への影響を検証した。

 調査された用量は、人々が暴露するかもしれないものと同等の低用量から高用量までの範囲にわたった。

特に低用量での影響

 結果は、特に低用量のビスフェノールAが動物の発達に影響を及ぼすことを示している。テストした中で最も低い用量に暴露したメスラットは成獣になってからの体重が大きく、行動はオスの行動に似た方向に変化した。このことはメスの脳のオス化を示していると言える。最低用量に曝露したオスのラットは乳腺組織の成長増加、及び成獣になってからの精子数の減少を示した。

 ”ビスフェノールAの健康リスクは、高い暴露を被る消費者に特に懸念がある。このことは、低用量曝露で起きるかもしれないビスフェノールAの有害影響に特に敏感な妊婦又は授乳中の女性と子どもたちに当てはまる”。

 これらの影響はもっと高い用量のビスフェノールAでは観察されなかった。

 乳がんの初期段階を暗示しているかもしれない乳腺の変化は二番目に低い用量のビスフェノールAに暴露した熟年ラットに観察された。

 その結果は、特に低用量のビスフェノールAは動物の発達に影響を及ぼすが、一方より高い用量では異なる影響を及ぼすことを示す以前の研究を支持するものである。

 ”我々の研究は、発達中の低用量ビスフェノールAへの暴露は、オスの精子数に影響をもたらし、メスの行動に影響を与え、肥満の一因となる一方、ラットのオスとメスの両方の仔に乳房発達の影響をも引き起こすことを示している”と、国立食品研究所のウラ・ハス教授は説明している。

もっと低いビスフェノールAの制限値が推奨される

 以前に、他の動物研究が同等の用量で同様な影響を示した。国立食品研究所の計算によれば、人間においてビスフェノールAの内分泌かく乱影響に関して十分に保護的であるためには耐容一日摂取量(TDI)は、0.7μg/kg体重/日、又はそれ以下である。2015年2月に欧州食品安全機関(EFSA)は、ビスフェノールAの耐容一日摂取量(TDI)を 4μg/kg体重/日と設定した。国立食品研究所は、この TDI は、ビスフェノールAの内分泌かく乱影響に対して十分な保護とはならないと評価した。

 ”ビスフェノールAの健康リスクは、高い暴露を被る消費者にとって特に懸念がある。このことは、低用量曝露で起きるかもしれないビスフェノールAの有害影響に特に敏感な妊婦又は授乳中の女性と子どもたちに当てはまる”とウラ・ハスは付け加えた。

更なる情報:

 国立食品研究所のこの研究は、 Andrology(男性学)誌に発表された二つの科学論文の中で記述されている。
Low-dose effect of developmental bisphenol A exposure on sperm count and behaviour in rats
(pdf). Low-dose effects of bisphenol A on mammary gland development in rats (pdf).

 2015年2月23日のプレスリリース中の EFSA の健康評価に関する国立食品研究所の評価をお読みいただきたい。
National Food Institute maintains its assessment of bisphenol A


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る