2012年10月2日 NGOs から
欧州委員会ダリ委員及びポトチュニック委員への書簡


情報源:October 2, 2012 Letter from NGOs to European Commission
Commissioner John Dalli, EU Commissioner for Health and Consumer Policy and
Commissioner Janez Poto.nik, EU Commissioner for Environment
http://www.chemsec.org/images/stories/2012/news/2012_10_02_
Jt_NGO_Letter_to_Commissioners_on_EFSA_EDC_mandate_FINAL3.pdf


訳:野口知美(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年10月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/121002_NGO_Letter_to_EC_on_EFSA_EDs.html


ダリ欧州委員会委員殿
ポトチュニック欧州委員会委員殿


 下記に署名したわれわれ環境団体、職業・労働者団体、保健団体は、欧州食品安全機関(EFSA)が内分泌かく乱物質の人の健康と環境へのリスクに関する科学的意見を作成するよう欧州委員会により要請されたという昨日のニュース(訳注1)についての説明を求めて、本日質問状を書いている。

 これまでに少なくとも1年間は環境総局主導のもと、内分泌かく乱物質のための共同体戦略や内分泌かく乱物質の特定・評価基準を策定する農薬・殺生物剤法の規定に関する科学的プロセス及び政策課題プロセスが実施されてきた。こうしたプロセスに関与しているのは健康・消費者保護(Sanco)総局、雇用総局、共同研究センター、欧州化学品庁、加盟各国、産業関係者、公益関係者、専門家会議、ED専門家諮問サブグループ会議などである。特に専門家諮問サブグループ会議は、欧州委員会や加盟国の専門家グループに対して助言を行い、内分泌かく乱物質の特定に関する科学的側面についての報告書を作成している。これらの団体はOECDの刊行物や「内分泌かく乱物質の最新評価」報告書2012年度版などの科学的資料について話し合っており、会議ではすべての参加者が多大なる資源と時間を費やしてきた。EFSAのウェブサイトのニュース記事と当該任務に関する文書によれば、この任務は「欧州委員会」から委託されたものということであるが、既に着手されている環境総局主導のプロセスと著しく重複することになる全く新しいプロセスを欧州委員会全体が主導したというのはどうも信じがたい。さらに、本質問状では当該任務について、特にSanco総局から委託されたものであるということが明らかにされている。

 われわれは、この新しい科学的意見をどのようにして既存のプロセスに適合させるのかについて説明を受けることを求める。特に、内分泌かく乱物質に関する基準を作成する欧州委員会の業務を環境総局が主導していることとどのように両立させるのであろうか。殺生物剤法は、内分泌かく乱物質の特性を決定する基準と殺生物剤に関する基準を定める委任法令を一刻も早く採択することを求めており、このプロセスは環境総局が主導している。上記の専門家サブグループのもと、環境総局は基準についての専門的なアドバイスをするために、内分泌かく乱物質に関する専門知識を持った加盟国や利害関係者の代表からなるグループを既に設立しているので、さらに新たな科学専門家グループを関与させるのは非生産的のように思われる。この新たな科学専門家グループのメンバーは全員が内分泌かく乱物質の問題に関する必要な専門知識を持っているわけではないというから、なおさら非生産的といえよう。

 われわれはまた、この新しい科学的意見をどのようにしてすべての関係法令にまたがる横断的基準の必要性と両立させるのかについて説明を受けることを求める。関係法令とは、食品・飼料、工業化学物質、化粧品、水などの分野の法令のことである。特に内分泌かく乱物質の特性には相加効果があることから、内分泌かく乱物質のための共同体戦略の実施に関する第4次報告書(2011年8月)において横断的基準の必要性が明確に記載されている。

 内分泌かく乱物質に関するEFSAの刊行物が発行されたときから、既に議論は巻き起こされていた。物議をかもしたのは、EFSAが内分泌かく乱物質に関する新たな科学的洞察を行うことを怠ったからである。EFSAの意見の妥当性については議論が続いており(Vandenbergらによる2010年5月のEnvironmental Health Perspectivesなどの出版物参照)、EFSAと他の加盟国との意見にも依然として隔たりがある(食品容器中のビスフェノールAについてのフランス食品環境労働衛生安全庁[ANSES]による2011年9月の記事"Effets sanitaires du bisphenol A"など参照)。さらに、内分泌かく乱物質に関するEFSAの刊行物の信頼性や公平性については一般市民も強く懸念を示している(欧州議会議員が最近、EFSAの予算を抑える決定をしたことにも表されている)。

 われわれは、欧州委員会がどのようにして現在重複しているプロセスをさらに進めていくつもりなのか、加盟国などの利害関係者の専門知識を将来どのようにして関与させていくのかについて説明を求める。内分泌かく乱物質に関する報告書の中心は欧州議会であることを考えれば、EFSAの当該任務に関する欧州議会の報告書について欧州委員会がどのように見ているかを理解することも有益であろう。この任務を主導したのは欧州委員会全体ではないにしろ、資源と個別プロセスが大幅に重複しているように見えることから、EFSAはもちろん欧州委員会の業務の信頼性や動機付けについても疑問が投げかけられている。緊縮予算とEU金融危機のこの時代、欧州市民は資源や加盟国代表・専門家を最も効率的かつ効果的に利用するよう確保することを欧州委員会に対して期待している。EFSAの当該任務について考えてみると、この新しいプロセスがそうした目的にかなうかどうか確信が持てないし、この新しい動きについて十分に説明してもらう必要があると思われる。

 最後に、われわれが最も重要であると考えているのは、内分泌かく乱物質のための戦略や基準に関するプロセスが透明性を保ち、すべての利害関係者が関与し続けることであると指摘しておきたい。内分泌かく乱物質の定義や基準を設けることによって、内分泌かく乱物質であると見なされた物質はおそらく規制対象となり、それ以外の物質が規制を受けることはなくなるであろう。それゆえ、科学的な基準や定義の策定について市民が監視することが必要であり、科学的意見や定義、基準は継続的な民主的参加や意思決定を要求し、予防原則を具体化する幅広いプロセスの一環になると思われる。

 われわれはこの件に対する一般市民の関心を考慮して、本質問状の内容について広範に知らしめるつもりである。この件に関して緊急に貴殿がわれわれと話し合う機会を設けるよう要求する。

本件の重要性を踏まえ、迅速な対応を期待している。

リゼッタ・ファン・ブリエ
化学物質・慢性病予防上級政策アドバイザー
健康環境連合(HEAL)

Alliance for Cancer Prevention
Breast Cancer UK
BUND /Friends of the Earth Germany
Cancer Prevention and Education Society
Center for International Environmental Law
CHEM Trust
Client Earth
Danish Ecological Council
European Environment Bureau
Health Care Without Harm Europe
International Chemical Secretariat (ChemSec)
Intituto Sindical de Trabajo, Ambiente y Salud (ISTAS)
Generations Futures
Greenpeace
Organizacion para la Defensa de la Salud (Health Defense Organisation), Vivosano Foundation
Pesticide Action Network Europe
Reseau Environnement Sante
Swedish Society for Nature Conservation
Women in Europe for a Common Future


訳注0:参考
ケムセック(ChemSec)2012年10月1日 欧州委員会が欧州食品安全機関(EFSA)に内分泌かく乱物質の人と環境へのリスクに関する特定の意見を求める

訳注1
■2012年8月1日 欧州委員会健康・消費者保護総局(SANCO)から欧州食品安全機関(EFSA)への書簡: http://www.chemsec.org/images/stories/2012/news/EC_Request_SC_EndocrineDisruptors_Aug2012_60410.pdf
SANCOからEFSAへの書簡の当研究会による日本語訳
件名:内分泌かく乱物質(EDs)の人の健康と環境リスクに関する意見をEFSA科学委員会に求める
 添付は、EFSA科学委員会に対する件名EDsの任務に関するものである。
 件名EDsは世間及び科学界で大きな注目を浴びている。加盟国、欧州議会、及び理事会は、EDsを特定し評価するための基準を含めるために、欧州委員会に法令の全ての関連部を更新するよう要求した。
 植物防疫製品規則(PPPR)、食品接触材料規則、医薬品規則、及び化粧品規則を含む欧州委員会健康・消費者保護総局(SANCO)のいくつかの法令は、EDsを参照するか、又は、EDsを特定し評価するための特定の基準を開発するための特定の条項を含んでいる。
 植物防疫製品規則(PPPR)については、SANCO委員長はそのような基準を2013年末までに法令に反映させるための提案をすることが義務付けられている。化粧品については期限は2015年末である。その他の健康・消費者保護総局(SANCO)権限轄範囲外のEU法令(例えばRECHや殺生物剤)もまた、同様な条項を含むよう更新する必要がある。従って、内分泌かく乱物質を特定し評価するための定義、基準及び方法論に関する適切な科学的助言が緊急に必要である。



化学物質問題市民研究会
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