The Concordian 2018年10月30日
セントローレンス川の
避妊ピルに由来する内分泌かく乱物質

モントリオールの研究者らは
ピルが淡水魚をどのように害するかを観察している。

エリーゼ・マーチン
情報源:The Concordian, October 30, 2018
Birth control residue in the river
by Elise Martin
http://theconcordian.com/2018/10/birth-control-residue-in-the-river/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年11月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/Canada/
181030_Concordian_Birth_control_residue_in_the_river.html

 カナダがん学会によれば、避妊ピルを利用する女性のうち 10,000 人は、生涯に一度、又は二度、がんに罹るリスクがある。思春期になる少女が避妊ピルを利用することは一般的になっている。研究は、ピルが体に有害な影響を及ぼすのみならず、環境にもまた影響を与えることがあることを示している。

 ”我々は、セントローレンス川の中に内分泌かく乱物質を見つけた”と、生殖毒性に関するカナダ研究講座の教授ダニエル・シール(訳注1)はフランス語で述べた。”それらはエストロゲン・ピルに由来する。人々は避妊用ピルを飲み、トイレを使用する。トイレの排水は下水処理施設に集められ、処理される。処理後の一部はセントローレンス川に流され、その他は飲料水にするために工場に行く”と彼は説明した。

 エストロゲンはフィルターを通過するので残留物を川で見つけることができる。”我々は2002年に、我々の調査結果を市当局と下水処理施設に送った”と、シールは述べた。しかし、現在までの所、状況を変える施策はまだ稼働していない。

 主要な問題はピルがどのような組成からなっているか、そしてそれがいったん体内に取り込まれたらどうなるかということにある。”このことは、魚は残留物を飲み込むことができ、そのことが魚類の生殖系に異常をもたらす原因となることを意味する”と、シールは述べた。

 シールと彼のチームはセントローレンス川の漁師により捕獲された魚を分析した。”最終的にはオスの魚はメスの魚に変わる”と、シールは述べた。これらの結果を知って、研究者らはその魚を乳授中のラットに与えた。”授乳された若いオスのラットは、母ラットの脂肪成分中にこの残留物が存在するために、精子数が減少していた”と、シールは述べた。

 これらの研究は、2002年から2004年の間に完了していた。現在、ケベック先端科学技術大学院大学(INRS)のアルマンフラピエ研究所は、協力者及び資金不足のために、これらに関連する研究だけを行っている。”それらは系統的な研究である”と、シールは述べた。”彼らは、2002年に我々がすでに発見していたことを発見したが、それは別の魚種であり、異なる場所である。例えば、彼らは最近、魚に高いレベルのエストロゲンを報告した。少女が成熟していくときに見いだされるのと同様なレベルである”。

 10月19日に、The Concordian(訳注:モントリオールのコンコーディアン大学の学生新聞)は環境研究学部の学生らとともに、ジーン・マーコット下水処理施設の元従業員で、現在は同施設の案内をボランティアで行っているマーク・ジラードから浄化処理プロセスについて説明を受けるめに、同施設を訪問した。同処理施設が一日に受け入れる排水の量は世界で3番目の大きさであるとジラードは説明した。

 学生らをその施設に連れて行く前に、ジラードは汚染水がどのように処理されるのかについて説明した。”水中に注入された薬剤は水中に存在する粒子から剥片状物を生成する。それらは重いので、タンクの底に沈み、後に集められて焼却される”と、ジラードは説明した。このシステムにより、我々は95%まで水を浄化する。以前は100%まで浄化するために水に塩素を加えていたが、このやり方はローレンス川の動物相と植物相に悪影響を及ぼした。我々はケベック先端科学技術大学院大学(INRS)とともにオゾン処理(O3)を用いる解決方法を見つけた”。オゾン処理は避妊薬のみならず、他の医薬品からの汚染物質も除去する。

 ジーン・マーコット下水処理施設は、生態系に不均衡をもたらす危険性を承知している。今回の訪問中にジラードは、同施設が3年前に4億ドル(約440憶円)のプロジェクトを立ち上げたと説明した。”我々はこの技術を使用した最初の下水処理施設であるということができる。我々は、我々のプロジェクトを継承してくれる協力者をまだ探している”と、ジラードは付け加えた。そのプロジェクトは今後3年のうちに稼働するであろう。

 The Concordian はそのプロジェクトの担当者に連絡したが、彼らはコメントすることを断った。

 世界最大の川のひとつは多量の避妊薬残留物を抱えたままである。シールによれば、魚により摂取され、さらにはその魚を食べる動物により摂取される避妊薬残留物の影響は、人間にも同様に当てはまる。人間は、まさに実験されたラットのようにセントローレンス川の魚を食べるので、”その影響の最初の兆候は、男性の精子数の減少と生殖系機能の不全かもしれない”。


訳注1:ダニエル・シール
Daniel Cyr (INRS)
内分泌かく乱物質が魚の生殖に及ぼす影響(自動翻訳)
 私たちは、セントローレンス川の魚が環境エストロゲンに曝されていることを示しました。この汚染はオタワ川に由来する。エストロゲンによる汚染の原因には、モントリオール都市コミュニティの下水排水が含まれる。エストロゲン性物質による水生生態系の汚染は、様々な化学的汚染物質と関連している可能性がある。エストロゲンによる汚染への曝露は、雄および未成熟魚におけるビテロジェニン(VTG)の発現を測定することによってモニターすることができるが、男性の生殖腺発達および生殖適性に対する誘導VTGの重要性についての情報は比較的限定されている。内分泌かく乱化学物質(EDC)の魚生殖への影響を評価することの難しさは、魚の精巣発生を評価するのに利用可能なツールが限られていることから生じる。このようなツールの開発は、EDCの精巣への影響を理解する上で重要です。 EDCsによるセントローレンスの汚染の程度と過去に特徴づけられた部位への特異的な影響を考慮すると、これは、EDCsが精巣に及ぼす影響を評価するのに必要なツールを開発する理想的な生態系モデルである。セントローレンスの汚染に関連する特定の効果を確立する。我々は、雄性生殖に対するEDCsの影響を研究するための様々なバイオマーカーを開発している。これらには、精子運動性、精子形成および性転換のマーカーが含まれる。我々は、オスのシャイナーが肝臓VTG mRNAレベルを上昇させた部位で捕獲されたスポッテラーシャイナーにおいて、精子数および運動性が変化することを示した。我々は現在、実験室ベースのアプローチを用いた精液品質へのEDCの効果をさらに確立し、フィールドベースのサンプリングアプローチを用いた精子形成および性決定の両方に対するEDCの効果を決定することに興味を持っている。

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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