EHP 2006年4月 特別号 論文集
野生生物に化学的に引き起こされる内分泌かく乱の生態学的関連
イギリスの河川における予測されたステロイド・エストロゲンへの暴露が
広く見られる魚の性的かく乱に関連する

スーザン・ジョブリン(ビヨンド・ザ・ベーシック社、ブルーネル大学環境研究所/イギリス)ら
(アブストラクトの紹介)
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number S-1, April 2006
Pesticide Mixtures, Endocrine Disruption, and Amphibian Declines: Are We Underestimating the Impact?
http://www.ehponline.org/docs/2006/8051/abstract.html
Tyrone B. Hayes, Paola Case, Sarah Chui, Duc Chung, Cathryn Haeffele, Kelly Haston, Melissa Lee, Vien Phoung Mai, Youssra Marjuoa, John Parker, and Mable Tsui

Laboratory for Integrative Studies in Amphibian Biology, Department of Integrative Biology, Museum of Vertebrate Zoology, Group in Endocrinology, and Energy and Resources Group, University of California, Berkeley, California, USA

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年6月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp_2006_April_S-1/06_04_ehp_s-1_UK_Rivers.html

 アブストラクト
 主にヒトの排泄に由来するステロイド・エストロゲン(女性ホルモン)は、下水処理場からの廃水で汚染された河川でコイ科魚類であるローチ(Rutilus rutilus)の野生個体群に広く見られる内分泌かく乱を引き起こすことに主要な役割を果たしているように見える。もし、この問題が広い範囲で起きているなら、河川流域におけるエンドクリンかく乱の場所と程度を予測し、これらの汚染物質を除去するために下水廃水の規制が必要な地域を特定するためにリスク評価モデルが必要である。
 この調査で我々はイギリスの河川のローチの内分泌かく乱の程度をヒト集団に由来するステロイド・エストロゲンへの予測される暴露に関連付けようと試みた。各河川におけるステロイド・エストロゲン暴露の予測は、各下水廃水の河川への排水直後の予測希釈濃度を持った17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、及び17−エチニル・エストラジオール(EE2)の個々のモデル化された濃度を組み合わせることによって決定された。
 このモデルはイギリス中の39河川の45地点に適用された。調査された各地点は、様々なコイ科魚類種について発表されている研究データから計算された3つのエストロゲンの仮定された加算的な効力に基づく、高、中、低の”リスク”のいずれかとして分類された。
 我々は、予想される、高、中、低のリスク河川地点から1,438の野生ローチを採取し、エンドクリンかく乱の証拠とその程度を検証した。野生ローチの間性(訳注:オスとメスの中間)の発生と程度は、予測された天然エストロゲン(E1 と E2)及び避妊用ピルのエストロゲン(EE2)の存在と著しく関連していた。
 しかし、予測されたステロイド・エストロゲン暴露は、同種の魚で測定された血漿中のビテロゲニン濃度とは十分には関連していなかった。(訳注(参考):ビテロゲニンによる環境ホルモン影響調査)さらに、我々は測定したローチの評価項目と、調査した河川に流れ込む工場廃水の割合との間には関連性を見いださなかった。
 総体的に、我々の結果は、ステロイド・エストロゲンがイギリスの河川における淡水魚の間性を引き起こす主要な役割を果たしているという仮説を裏付ける実体ある証拠を提示し、これらの内分泌かく乱影響の場所と程度を予測することができることを示した。

 キーワード:かく乱、エンドクリン、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エチニル・エストラジオール、間性、ローチ、ビテロゲニン

Environ Health Perspect 114(suppl 1) : 32-39 (2006) . doi:10.1289/ehp.8050 available via http://dx.doi.org/ [Online 21 October 2005]


化学物質問題市民研究会
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