2010年12月1日
船舶解体に関するNGOプラットフォーム 
バングラデシュのシェイク・ハシナ首相への手紙

情報源:NGO Platform on Shipbreaking December 1, 2010
A Letter to Ms Sheikh Hasina, Prime Minister of Bangladesh
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/PM=Ship_breakingFinal.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年12月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/NGO_Platform_101201_letter_to_Bangladesh_PM


バングラデシュ国総理大臣
シェイク・ハシナ閣下

拝啓
 この手紙は、船舶解体に関するNGOプラットフォーム及びその傘下の全ての組織(脚注1)、並びに末尾に署名した個人及び組織が、バングラデシュの環境と貴重な天然資源を守るための貴政府の約束と指導力に対して大いなる感謝を述べるものです。
 バングラデシュにおける持続可能性に向けてのそのような約束は、持続可能な将来の世界のために、私たちの脆弱な地球への希望を支えるものです。この手紙をもって、私たちは、主に海外・西欧の船主による有害な廃船の処理に対する貴殿の思慮深い適切な介入を求めるものです。
 この有害な廃船処理は、バングラデシュの労働者と沿岸の環境の乱用をもたら続けています。欧州諸国が自分たちの海岸と労働者を守るために、自分たちの施設で自分たち廃船を解体又は事前の汚染除去をする責任を拒否するということは受け入れることができません。
 廃船を適切な施設で安全で適切な事前汚染除去と解体を行なうことによる高いコストのために、船舶産業界はバングラデシュのような国を、アスベストス、PCB類、有害な塗料、殺生物剤、燃料残渣、その他の有害物質などの非常に危険な有害廃棄物が船内に残留したままの廃船の捨て場所として使用しています。

 これらのあくどい船会社と彼らの代理を務める国は、そのような持続可能でない搾取的な輸出をやめようとする国家政府のどのような試みにも反対するための組織を作り上げています。
 一方、バングラデシュの海岸での船舶解体は、かつてない速さで拡大し続けており、それに比例して石綿症やがんのような労働疾病による死亡と事故の増大を招いています。(有害な重金属、PCB、アスベストの影響を受けた労働者の数はまだ反映されていません。)そして、この無法な産業のために、警告を発すべき速度で、沿岸漁業や林業を消滅させています。
 これらの船がまだ現役の間は運用管理していた先進国の中で、自国の海岸で有害な廃船を扱うことを許す国はひとつもないということに留意するのは価値のあることです。

 古くなった船をスクラップにするために、金持ちの船会社や国からそれらの船をバングラデシュやその他の南アジア諸国の海岸に送り出すことは、国連のバーゼル条約(現在、使用済みの船舶に適用される唯一の有効な国際条約)が阻止しようとすることはとんでもないことです。
 バーゼル条約の決議VII/26は、廃船を有害廃棄物のひとつの形態として積極的に適用するよう全ての国に求めています。バーゼル条約は特に、各国に廃棄物の国境を越える移動を避け、環境的に適切な方法(例えば、船舶解体に関するバーゼル条約ガイドライン)で処理することのできない施設や国にそのような廃棄物が行くことを決して許さないようにすることを求めています。
 さらに、バーゼル条約は、Annex VIIに示される国(OECD/EU 及びリヒテンシュタイン)から、それ以外の全ての国への有害廃棄物の輸出をいかなる理由であっても禁止する決議(III/1)を採択しました。

 Annex VIIに示される国及びバングラデシュ領土外の船主により事前の汚染除去がなされずに先進国からバングラデシュに解体目的で船舶を輸出することは、バーゼル条約とその決議III/1の字義と意図に反することは明らかです。
 さらにバーゼル条約の定義に従って環境的に適切であると定義される施設のみが、それらの船を受け入れることができます。その定義は、人の命と環境の保護を確実にする全ての実行可能な措置を取ることを求めています。
 バングラデシュでの事例はこのことから全くかけ離れています。長年、これらの法的要求は、船主/輸出業者により戦術的に回避されてきたので、バングラデシュの環境は、その生態系及び人々に対する取り返しのつかない危害を受け続けてきました。このことは、経済という名目でなされてきましたが、人の健康と環境に対する長期的なダメージの経済的コストは、利益と言われているものをはるかに上回ります。
 そしてそのようなバングラデシュに課せられる外部コストは、短期的な利益を吸い上げている人々には都合が悪いので、説明されていません。
 少なくとも第一には全ての有害廃棄物を船から除去し、第二にはこれらの産業をチッタゴンの海岸からドックに移すという責任を船舶産業に義務付けずに、開発途上国における致命的で汚い船舶解体を許し続けることは、産業がこの国にもたらす利益とは比べものにならない人と環境への災害を永続させることを意味するだけです。

 現在、私たちはバングラデシュ最高裁判所がついに、この船舶解体産業を取り巻く無秩序と偽善に目を向けており、昨年、船舶解体産業を規制するために国際的及び国家の法を遵守することを求める画期的で正しい審判を下したということ特筆します(訳注1)。
 最高裁の命令は、バングラデシュの領土に入る全ての船舶は事前に汚染が除去されていることを求めているので、輸出国の法的責任と調和するものです。
 さらに、最高裁はバングラデシュの全ての環境規制に従うことを求めています。このことが、すなわちそれらの船舶を輸出に先立ちAnnex VIIに示される国(OECD/EU 及びリヒテンシュタイン)で汚染を除去することが、バングラデシュの領土内に船を輸入できる唯一の法的手段なのです。

 しかし、この進歩的な展開にも関わらず、船舶及び船舶解体産業からバングラデシュの全ての関係者に国家の利益のために正当で適切なことをするよう求める圧力が高まっていますが、それは、もしバングラデシュが国際的な環境への約束を遵守し始めたら、他のどのような諸国も同じことをしないわけにはいかず、最終的に産業界は改革され、世界の投棄場所が足りないことに乗じたその振る舞いの不正を一掃せざるを得ないからです。

 貴殿の公正な考えと人道主義的な指導力への私たちの信頼に基づき、私たちは、全ての国際的なそして国家の法的要求を船舶の所有者/販売者及び船舶解体業者が遵守すること求めることについて、貴殿の全面的な支持を謹んでお願いするものです。
 これに関して私たちは、最高裁の判決の履行を確実にするための貴殿の支持を強くお願いするものです。貴殿の献身的で分別ある指導力によって、私たちはバングラデシュがこの産業界の国際的及び現地の関係者からの不当な圧力に抵抗しなくてはならないという確信を持つことができます。
 もしバングラデシュが国際法への遵守を確実にすることができるなら、バングラデシュは、いくつかの裕福な先進国の搾取的手法による不当な圧力から国家権益を守る世界的な指導者であるとみなされるでしょう。さらに、そのような展開は、真の世界的な解決−船の事前汚染除去と私たちの世界の貴重な海岸から離れた場所の適切な(グリーンな)リサイクル施設に導くでしょう。

 最後に私たちは、異議を唱える公益団体を非合法化し脅迫しようとする船舶解体業者らの企みに貴殿が目を向けるよう切に望みます。私たちは、そのような船舶解体業者の行為を非難する一方、私たちは貴殿が世界中から届く私たちの懸念を考慮し、適切な介在と指針をもって、環境と労働者の犠牲の上に世界の投棄場所として利用されることを防ぐために活動し闘うバングラデシュの私たちのメンバーを守り支援するよう希望します。

 私たちは、この重大な問題に関する私たちの共同の懸念に対する貴殿の親切で注意深い配慮をいただければ幸甚であり、貴殿の公正な対応を期待しています。

敬具

下記に署名する個人と組織は、バングラデシュ首相が、持続可能でなく不法な船舶解体をバングラデシュの海岸で行なうことを止めるよう求めるバングラデシュ最高裁判所の決定を支持し、またこの危険で不法な産業の改革を求める個人を支持し保護するよう要請します。

個人名 組織名


脚注1

 船舶解体に関するNGOプラットフォームは、現在の船舶解体の実施方法による環境と人権の無視を覆し、安全で環境に適切な寿命の尽きた船舶の解体を確実にするために働く、環境、人権及び労働者の団体の世界的な連合体である。現在のプラットフォームのメンバーは下記の通りである。

  • The Basel Action Network (BAN),
  • Greenpeace,
  • the International Federation of HumanRights (FIDH),
  • the European Federation of Transport and Environment (T&E),
  • Bellona,
  • the North SeaFoundation,
  • the Ban Asbestos Network,
  • Prevention of Hazardous Shipbreaking Initiative Turkey,
  • Young Power in Social Action (YPSA),
  • Bangladesh Environmental Lawyers Association (BELA),
  • Bangladesh Institute of Labour Studies (BILS),
  • Bangladesh Occupational Safety,
  • Health and Environment Foundation (OSHE),
  • Toxics Links,
  • Gujarat Occupational Safety and Health Association.

訳注1
BAN Toxic Trade News 2009年3月18日 安全な作業と環境の勝利 高等裁判所 バングラデシュ海岸の死の船舶解体をとめる

バングラデシュ、シェイク・ハシナ首相への手紙について

世界中の環境、労働、人権問題に取り組むか活動家の皆さんへ

 私たちは、南アジアにおける船舶解体現場における船舶産業による搾取を止めさせるための闘いの歴史の中で非常に重要な位置を占めることとなるバングラデシュ首相への手紙に署名という形で皆さんの支援をお願いしています。

 船舶解体に関するNGOプラットフォームは、環境と労働者の犠牲の上に世界の投棄場所として利用されることを防ぐために活動し闘う私たちのバングラデシュのメンバーを守り支援するために、添付のバングラデシュ国シェイク・ハシナ首相への手紙を読み署名していただきたくお願いするものです。(中略)

 どうぞこの手紙をあなたのNGOネットワークに転送し、組織としての署名をお願いしてください。それらの署名は12月16日(木)までに、この手紙の末尾に表記されるべき組織代表者名、組織名、国名を明記してGrazia Cioci宛 grazia@shipbreakingplatform.org に送ってください。

 この非常に重要な問題に対して時間を割き、支援していただくことに感謝します。質問があれば、どうぞ遠慮なく私たちにお知らせください。

どうぞ宜しくお願いします。

Grazia Cioci and Jim Puckett

NGO Platform on Shipbreaking
Rue de la Liniere 11
1060 Bruxelles
Tel: +32 (2) 6094420
Mob: +32 (0)495 832441
Email: grazia@shipbreakingplatform.org
Website: http://www.shipbreakingplatform.org



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