FTAウォッチ プレスリリース 2007年9月23日
タイ政府 JTEPA発効を急いで新憲法に違反

情報源:Press Release FTA-Watch, 23 September 2007
Thai Government and the violation of new constitution in rushing JTEPA
http://www.ftawatch.org/autopage1/show_page.php?t=22&s_id=23&d_id=23

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2007年9月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JTEPA/070923_JTEPA_FTAWatch.html


 タイ政府は10月2日に日本政府と外交覚書を交わすことを決定したが、これにより30日後、2007年11月1日に、日タイ経済連携協定(JTEPA)は国家立法会議(NLA)の審議を受けることなく発効する。スラユット・チュラノン首相は傲慢にも、もし憲法裁判所への訴えがあり、彼の決定が憲法違反であると証明されたなら、彼は責任をとって辞職すると発表した。

 このような状況において、FTAウォッチは次のような意見を表明する。

  1. 政府のこの振る舞いは、行政府は議会の審議を経ずに国際条約を署名する権限を憲法によって与えられると解釈する点で、前政権となんら異るところがない。2007年憲法第190条は、国家の経済的及び社会的安定に広範な影響を与える、又は貿易、投資又は国家予算に重大な制限をもたらす条約は国会によって承認されなくてはならないと規定している。この条項は、1997年の前憲法の第224条にある欠陥を認めること及び、JTEPA、タイ米自由貿易協定のような二国間協定、及びその他の貿易及び環境協定は議会によって審議されるべきであるとする原則、に基づいて作りあげられた。したがって、第190条の意図は1997年憲法によって引き起こされた問題を正すことである。議会の審議を回避する政府のやり方は、政府自身が支持する規制に違反することに等しい。言い換えれば、それは新憲法を自らの手で裏切るものである。

  2. この透明性の欠如は、国際協力銀行(JBIC)(訳注1)が、スカイトレイン・プロジェクト(訳注2)のための借款承認を遅らせ、借款契約の改正を要求していたという事実を考慮すれば、首相と彼の顧問の意図について、及び彼らにある種の圧力がかけられている又は彼らはある種の取引を行っているという可能性について疑義を引き起こすものである。

  3. 政治的混乱と国の選挙制度の移行という時期に、首相がその決定に職を賭すということを表明することは、指導者としての無責任さを示すものである。それは国全体を人質にするようなものである。
 FTAウォッチは、首相はそのような不透明な行動をやめるよう求める。危機のときに首相がわが国の民主制度に信頼を取り戻すためになすべきことは、首相自身が積極的に支持してきた憲法を守ることである。首相は、意見の相違を解決するために議会の手続き用いるることにより、憲法の意図を尊重する範を垂れるべきである。そうすれば、前政権で見られたような憲法裁判所での争いや社会の分裂は避けられるであろう。


訳注1
国際協力銀行 (Japan Bank for International Cooperation)
http://www.jbic.go.jp/japanese/index.php
設立目的
国際協力銀行は、一般の金融機関と競争しないことを旨としつつ、わが国の輸出入もしくは海外における経済活動の促進または国際金融秩序の安定に寄与するための貸付け等ならびに開発途上にある海外の地域の経済および社会の開発または経済の安定に寄与するための貸付け等を行い、もってわが国および国際経済社会の健全な発展に資することを目的とする。

訳注2
Bangkok Skytrain
http://en.wikipedia.org/wiki/Bangkok_Skytrain

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