市民団体共同プレスリリース(2006年11月29日)
日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の
関税削減リストから全ての廃棄物を削除すべき

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環境・健康・人権市民団体
掲載日:2006年11月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JPEA/Press_061129.html


 私達は環境問題、健康問題及び人権問題に取り組む市民団体です。

 2006年9月9日に小泉純一郎総理(当時)とフィリピンのアロヨ大統領により署名された日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)は衆議院において11月14日に承認され、現在参議院で審議されようとしています。

 このJPEPAの関税削減対象のリストには廃棄物が含まれています。したがって、バーゼル条約でその移動が厳しく管理されている有害廃棄物のフィリピンへの輸出に道を開くものとして、フィリピンの市民や市民団体はこの条約の批准に反対して抗議行動を起こしており、また国際的にも大きな懸念が寄せられています。
 フィリピン上院では11月27日、外交委員長が、JPEPAの発効により日本からの有害廃棄物持ち込みが促進されるとの懸念が高まっていることを考慮し、協定批准の是非を全員協議会で審議するよう上院議長に要請しています。

 JPEPAにおいて、日本からフィリピンへの輸出物品の関税率を示す「フィリピンの表」には、ヒ素、水銀などを含む残渣、焼却灰、医療廃棄物、生活ゴミ、下水汚泥、有機溶剤などの廃棄物が関税ゼロの物品として記載されています。一方、フィリピンから日本への輸出物品の関税率を示す「日本の表」にはこれらの廃棄物は記載されていません。

 ところが、外務省の英語版テキストには「日本国の表」と「フィリピンの表」の両方が記載されているにもかかわらず、日本語版テキストには「日本国の表」しか記載されておらず、「フィリピンの表」は省略となっています。したがって、日本語版テキストでは廃棄物が記載されている「フィリピンの表」を見ることはできず、このことは廃棄物輸出を日本国民の目から巧妙に隠していると言われても仕方がありません。すでに行われた衆議院の審議でも廃棄物については一言も触れられていません。議会の審議が廃棄物の記載がある「フィリピンの表」の日本語版テキストなしで行われたとすれば、十分な情報提供を受けずに行われていたということで重大な問題です。

 したがって、私達は添付に示す「市民団体共同アピール/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の関税削減リストから全ての廃棄物を削除すべき」を発表しました。

 参議院での審議に当たっては、関税削減リスト中に廃棄物を含めることについて十分審議し、わが国で発生する廃棄物の処理を途上国に押し付けることで、自国の廃棄物問題の軽減をはかり、その結果、途上国の人々の健康と環境を脅かすということがないよう、関税削減リストから廃棄物を削除すべきであると考えます。少なくとも廃棄物をフィリピンに輸出しないと明確に宣言すべきです。



化学物質問題市民研究会
「『日比友好50周年』を問い直す市民・NGOのつどい」実行委員会
フィリピンのこどもたちの未来のための運動(CFFC)
ジュビリー関西ネットワーク
石綿対策全国連絡会議
市民がつくる政策調査会
化学物質過敏症支援センター
バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)


問い合わせ: 安間 武
(化学物質問題市民研究会TEL: 045-364-3123 e-mail: ac7t-ysm@asahi-net.or.jp)

参考資料:
資料1 - 2006年11月29日 市民団体共同アピール
資料2 - JPEPA関税率表
資料3 - BAN有害廃棄物ニュース
さらに詳細については: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/jpepa_master.html



市民団体共同アピール(2006年11月29日)
日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の
関税削減リストから全ての廃棄物を削除すべき


 2006年9月9日に小泉純一郎総理(当時)とフィリピンのアロヨ大統領により署名された日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)には廃棄物が関税削減対象のリストに含まれており、バーゼル条約でその移動が厳しく管理されている有害廃棄物のフィリピンへの輸出に道を開くものとして、フィリピン市民、フィリピン上院はもとより国際的にも大きな懸念が寄せられています。日本は1999年にフィリピンへ医療廃棄物を違法輸出して国際的な非難を浴びた末に再輸入(引き取り)をした過去があります。JPEPAにより、廃棄物の貿易障壁が低減されることにより、今後その危険性が更に高まることは必至です。

 日本政府は廃棄物の国境を越える移動の管理に関する1989年バーゼル条約には批准していますが、リサイクル目的であってもOECD/EU/リヒテンシュタインの先進国からそれら以外の諸国に有害廃棄物を輸出することを禁止する1995年バーゼル禁止修正条項には、日本はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどとともに反対し、批准していません。
 また、2005年4月に東京で開催されたG8/3R閣僚会議において、"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を打ち出し、資源の国際循環という名の下に、有害物質を含む中古品や廃棄物を開発途上国へ輸出して、製品としての寿命をほとんど終えた中古品や廃棄物の処分を途上国に押し付けようとしています。

 さらに、日本フィリピン経済連携協定と同様の二国間経済協定をアジア地域の各国と結び、これらの協定を利用して日本の中古品や廃棄物のアジア地域内での処理を推進しようとしていることは明らかです。

 バーゼル条約及びわが国の廃棄物処理法においても、廃棄物の「国内処理の原則」を明確に規定しています。それにもかかわらず、わが国で発生する廃棄物の処理を途上国に押し付けることで、自国の廃棄物問題の軽減をはかり、その結果、途上国の人々の健康と環境を脅かすということは環境正義の観点から許されません。

そこで、私たちは日本政府に対して、以下のことを求めます。
  1. 日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の関税削減リストから廃棄物を削除する。
  2. 今後締約されるアジア地域内を含む途上国の二国間経済協定に廃棄物を含めない。
  3. 廃棄物及び中古品の処理には厳格に「国内処理の原則」を適用し、開発途上国での処理に依存するような政策をやめる。
  4. 廃棄物の発生削減を最優先として、国内循環を基本にした3R政策を推進する。
  5. 3Rイニシアティブから"物品・原料の国際的な流通に対する障壁の低減"を削除する。
  6. バーゼル禁止修正条項を批准し、リサイクル目的を含めて有害廃棄物の途上国への輸出を禁止する。
以上
化学物質問題市民研究会
「『日比友好50周年』を問い直す市民・NGOのつどい」実行委員会
フィリピンのこどもたちの未来のための運動(CFFC)
ジュビリー関西ネットワーク
石綿対策全国連絡会議
市民がつくる政策調査会
化学物質過敏症支援センター
バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)

問い合わせ: 安間 武
(化学物質問題市民研究会TEL: 045-364-3123 e-mail: ac7t-ysm@asahi-net.or.jp)


日本フィリピン経済連携協定(JPEPA) JPEPAの関税表

■JPEPAの関税表
 JPEPA の関税表には、「日本国の表」 と 「フィリピンの表」 がある。「日本国の表」 はフィリピン産物品の日本への輸入関税用であり、「フィリピンの表」 は日本産物品のフィリピンへの輸入関税用である。
外務省の英語版テキストには 「日本国の表」 と 「フィリピンの表」 の両方が掲載されているが、日本語版テキストには 「日本国の表」 しか記載されておらず、「フィリピンの表」 は省略となっている。
日本からフィリピンへの(廃棄物)輸出に関しては 「フィリピンの表」 が適用されるにもかかわらず、フィリピンへの輸出物品(廃棄物)の分類と関税を示すこの 「フィリピンの表」 が日本語テキストに示されていないということは、 JPEPA に廃棄物輸出が含まれていることを非常に分りにくくしている。これは廃棄物輸出を日本国民の目から巧妙に隠しているといわれても仕方がない。
すでに行われた衆議院の審議でも廃棄物については何も議論されていない。議会での審議が廃棄物の記載のある「フィリピンの表」の日本語テキストなしで、十分な情報提供を受けずに行われていることは重大な問題である。



◆外務省の日本語版テキスト
附属書一(第二章関係) 第十八条に関する表(PDF)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/philippines/pdfs/fuzoku01.pdf

◆外務省の英語版テキスト
Annex 1 referred to in Chapter 2: Schedules in relation to Article 18 (PDF)
http://www.mofa.go.jp/region/asia-paci/philippine/epa0609/annex1.pdf

■「フィリピンの表」 に示される関税ゼロの廃棄物 (日本語テキストではこの表は省略されている)
(化学物質問題市民研究会訳)
関税率表
番号
JPEPA で関税がゼロになる廃棄物
2620.6000 灰と残渣(鉄鋼メーカからのもの以外)で、ヒ素、水銀、タリウム、又はそれらの混合物を含み、ヒ素又はこれらの金属の抽出に用いられた、又は化学的化合物の製造のために用いられた類のもの
2621.1000 一般廃棄物の焼却による灰及び残渣
3006.80
(3006.8010,
3006.8090)
医療廃棄物
38.25 及び
その小見出し
化学又は類似産業の残渣で、他で特定されていない又は含まれていないもの。都市廃棄物、下水汚泥、その他この節章の備考6で規定されるもの
3825.1000 都市廃棄物
3825.2000 下水汚泥
3825.3010 医療廃棄物−粘着性手当て用品及びその他の物品、ガーゼ包帯、手術手袋
3825.3090 その他の医療廃棄物
3825.4100
3825.4900
有機溶剤−ハロゲン化合物、その他の廃棄物
3825.6100
2825.6900
他の化学物質又は類似産業からの他の廃棄物−有機成分、その他を含む
3825.5000 金属浸漬溶液、油圧作動油、制動油、不凍液、中古衣類、その他中古物品
6309.00 中古衣類及びその他中古の物品
6310.00 中古又は新品の衣類、スクラップの麻ひも、縄類、ロープ、ケーブル、及び、麻ひも、縄類、ロープ、ケーブル、及び紡織用繊維の中古の物品

■「日本国の表」
 日本語テキストにある 「日本国の表」 には、上記の表に示す品目は示されておらず、次のような大分類項目が示されているだけである。
 ・第二六類 鉱石、スラグ及び灰
 ・第三〇類 医療用品
 ・第三八類 各種の化学工業生産品
 ・第六三類 紡織用繊維のその他の製品、セット、中古の衣類、紡織用繊維の中古の物品及びぼろ

■原産品の定義(廃棄物関連)
協定書 第二十九条(四八頁)
1 略
2 1(a) の規定の適用上、次に掲げる産品は、締約国において完全に得られ、又は生産される産品とする。
(a)〜(h) 略
(i)当該締約国において収集される産品であって、当該締約国において本来の目的を果たすことができず、回復又は修理が不可能であり、かつ、処分又は部品若しくは原材料の回収のみに適するもの
(j)当該締約国における製造若しくは加工作業又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回収のみに適するもの
(k)本来の目的を果たすことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、当該締約国において回収される部品又は原材料

■シンガポールとフィリピンの比較

 シンガポールとは2000年に日本・シンガポール新時代経済連携協定を結んでいるので、廃棄物の記載についてフィリピンと比較したところ、両国共通にリストされているのは:
  • 第三八類 化学工業において生ずる残留物 都市廃棄物 下水汚泥
  • 第六三類 紡織用繊維のその他の製品、セット、中古の衣類、紡織用繊維の中古の物品及びぼろ
だけであり、それ以外のフィリピンにリストされているヒ素、水銀、タリウム、又はそれらの混合物を含み、ヒ素又はこれらの金属の抽出に用いられた、又は化学的化合物の製造のために用いられた残渣、医療廃棄物、焼却による灰及び残渣、化学又は類似産業の残渣等の廃棄物はシンガポールにはリストされていない。

 日本政府やフィリピン政府は、「廃棄物が、関税撤廃の対象リストに入ったのは、過去の協定と同様で他意はない」、「廃棄物がリストに含まれているのは単に形式上の問題」、という説明をしているが、実際には、国毎に念入りに選んでリストされていることが分る。


BAN 有害廃棄物ニュース 2006年11月9日 GAIA 報告
ユース・グリーン戦士らが日本に怒りの声
フィリピンは廃棄物の自由貿易区域ではない

情報源:Toxic Trade News / 9 November 2006
Youth Green Warriors Tell Japan: Philippines is Not a Free Waste Trade Zone
by GAIA
http://www.ban.org/ban_news/2006/061109_green_warriors.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/061109_GAIA_youth_green.html


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エコウェイスト連合の若者達が日本大使館とフィリピン上院の前で、もし日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)が批准され実施されれば、壊滅的な廃棄物植民地となるという寸劇を演じた。この有害物質協定はフィリピンの環境法によって禁止されている有害廃棄物の輸入を解禁させることになるかもしれない。”エコウェイスト連合”やその他の関係団体は日本の議会とフィリピン上院に同協定を拒否するよう求めている。アロヨ大統領と小泉純一郎首相(元)の9月9日の署名後2ヶ月目のこの日、様々な抗議行動が行われた。 Image GAIA
【2006年11月9日(パサイ市)】 エコウェイスト連合のグリーン・ユース戦士らが日本大使館とフィリピン上院の前で、もし日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)が批准され実施されれば、壊滅的な廃棄物植民地となるという寸劇を演じた。この有害物質協定はフィリピンの環境法によって禁止されている有害廃棄物の輸入を解禁することになるかも知れない。エコウェイスト連合やその他の関係団体は日本の議会とフィリピン上院に同協定を拒否するよう求めている。アロヨ大統領と小泉純一郎首相(元)の9月9日の署名後2ヶ月目のこの日、独創的な抗議行動が行われた。

 極めて有害な廃棄物の国外からの輸入にドア開くことについて、どこに論理と正気があるのか、そのような有害な廃棄物の取り扱いを我々自身でできるということについて、いつ我々は知ったのか? エコウェイスト連合はその声明の中で、”我々は、有害廃棄物貿易を合法化することを通じての現代的な植民地主義の醜悪な形態に強く反対する”と強調して、このように問いかけている。

 ”我々は(日本の)廃棄物のゴミ捨て場になるのか? 我々は国内の不法投棄問題の処理で手一杯なのではないか?” これが数百万の Juan and Juana de la Cruzes の問いかけである。すでに我々の環境は、我々自身が管理できていない都市廃棄物、医療廃棄物、そして有害廃棄物からの影響で目に見えて悪化している。我々の政治家達はこのことが見えないのか?

 ”JPEPA の発効を阻止する連合”から参加している”エコウェイスト連合”は、フィリピン、日本、又はその他の国によってなされるどのような形の廃棄物の投棄にも反対する立場を支持する次のような事実を引用している。

 年間、840万トンの廃棄物が,500万人のフィリピン人によって生成されている。首都マニラだけで、毎日発生するゴミの85%が排水溝、小川、河川、そしてマニア湾に捨てられている。

 250万トン近くの有害廃棄物が、農業、商業、産業、そして家庭からも発生している。28万トンの有害廃棄物のうち、50%が現場でリサイクル又は処理され、13%が運送業者/処理業者によって引き取られ、残りの37%は、近くの現場に、離れた敷地に、あるいはどこかに違法に投棄されている。

 我々の地域の病院、診療所、伝染性廃棄物の生成者らは、医療廃棄物の適正な取り扱いと処理に関する法律の要求に四苦八苦している。それらの多くはいまだに野積みの処分場に廃棄されている。

 投棄を違法とする法律があるにもかかわらず、国家固体廃棄物管理委員会と地方当局は、国中で1,000か所以上の不法投棄を取り締まることができないでいる。

 我が国の法律は、我々と我々の子ども達を有害な排気ガスと焼却灰から守るために、廃棄物の野焼きと焼却を禁止し違反には罰則を設けている。それなのに、なぜ、日本は焼却灰と残渣をフィリピンに投棄することが許されるのか。

 廃棄物危機に対するエコロジカルな解決を追求するエコウェイスト連合と多くのその他の団体は、JPEPA は我々の環境中の有毒物質問題を悪化させるだけであり、我々の脆弱な生態系を汚染し続ける不法な投棄を止めさせる努力を台無しにするものである。

 この協定によって、我々の政治家はこのフィリピンに日本の有害廃棄物という形での侵略を歓迎しようとしているのと同然である。この協定全体は、骸骨のシンボルの烙印が捺され、フィリピン上院及びフィリピン国民全員によって拒否されなくてはならない。

 ”JPEPA の発効を阻止する連合”からの参加団体”エコウェイスト連合”は、JPEPAの下での有害廃棄物の貿易自由化に強く反対することを強調している。



化学物質問題市民研究会
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