ニュー・インディアン・エクスプレス編集者宛 駐インド副総領事の書簡への インド、フィリピン、日本の NGOs の反論 情報源:Letter to Shri. Kamalendar Kanwar Editor, The New Indian Express http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JIndiaEPA/Response_to_Rejoinder_070609.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2007年6月10日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/JIndiaEPA/070609_New_Indian_Express.html カマレンダール・カンワール殿 ニュー・インディアン・エクスプレス編集者 II Main Road, No. 29 Ambattur Industrial Estate Chennai 600 058 2007年6月9日 拝啓 本書簡は、日本国総領事館副総領事ユージ・オカダ殿から貴殿にに宛てられた日本によるインドへの有害廃棄物輸出についての書簡(訳注1)に関するものです。我々、末尾に示す署名者は、オカダ殿によってなされた様々な主張に対する説明と回答をしたいと望むインド、フィリピン及びその他の諸国の懸念する市民です。 訳注1: オリジナル:Letter from Mr.Yuji Okada, Depty Consul, Consulate Geneal of Japan to Shri. Kamalendar Kanwar, Editor, The New Indian Express 当研究会訳:ニュー・インディアン・エクスプレス編集者宛−駐インド副総領事の書簡 1.申し立てられた日本の有害廃棄物輸出 日本は有害廃棄物をインドに輸出したことはないとするオカダ殿の主張は下記ウェブサイトに掲載されたインド政府の公式統計に反します。 http://www.commerce.nic.in/eidb/default.asp 日本からインドに輸出されたと報告される有害廃棄物及びスクラップ用有害廃船を含むリストを本書簡の Annexure 1に示します。 2.日本インド経済連携協定と有害廃棄物輸出との関係 書簡 2(i)項でオカダ殿は、同協定は日本からインドへの有害廃棄物貿易を合法化する企てであるという我々の懸念を追認しており、オカダ殿が直接的には述べていない日本の意図をまさしく伝えています。声明の中でオカダ殿はバーゼル条約締約国は有害廃棄物を他国に対し同意なしには輸出することはできないと述べることにより、有害廃棄物をインドに輸出するという選択の余地を残しています。例えば、我々がスクラップ用廃船の問題で経験しているように、インド政府は有害廃棄物貿易に関する政策に一貫性がなく、時々これらの脅威がインド領海に入ることを公然と許しています。インドの同意の背後に隠れて日本が同様な状況を利用するであろうことを推測することは決して想像の域にとどまりません。 オカダ殿はまた、日本が廃棄のためであろうとリサイクリングのためであろう先進国から開発途上国への有害廃棄物の輸出を完全に禁止する取組に反対していることを認めることを怠っています。バーゼル条約締約国はこの不正義な抜け穴をふさぐための努力を行い、OECD諸国(日本など)が非OECD諸国(インドなど)に有害廃棄物を輸出することを禁じることを明確に述べているバーゼル条約決議II/12 、及びバーゼル条約を修正してまさにこの禁止を含めることを求めた決議 III/1(バーゼル禁止修正条項)など、一連の決議を採択してきました。有害廃棄物貿易を支持する日本の政策のひとつの例として、最近ケニアのナイロビで開催されたバーゼル条約締約国会議(訳注:2006年11月開催 COP8)において、日本政府はサイドイベントの会場で有害電子廃棄物の日本から開発途上国への輸出を支持するか否かを問われ、彼らは肯定的に答えました。日本はまた日本にとって容認できないとしてバーゼル禁止修正条項を非難するために会議中に起立して発言した唯一の締約国です。 決議 II/12 と III/1 は Annexure 2 に示します。 書簡 2(iii)項で、オカダ殿はDDTやPCBのような物質は日本の法の下に厳格に規制されていると強調しています。しかし彼は、インドの様々な港における輸入目録に基づきインド政府商務省によって編集された貿易統計資料に反論するどのような証拠をも出していません。 書簡 2(iv)項でオカダ殿は、”日本政府はインドとEPAを締結することにより、有害廃棄物の他国への輸出に関する規制を緩和する意図は全くないと”述べています。インドとのEPAが日本から他の国への廃棄物輸出に関する規制を緩和するなどという主張を我々はどこでもしていません。二つの主権国家が第三の非締約国に廃棄物を投棄することに同意することなど不可能です。逆に、我々の論点は、GATTのような他の国際条約が、世界の環境改善を装ってバーゼル条約に置き換えるために使用されるということです。我々の懸念が妥当であるということは、日本商品(廃棄物を含む)のフィリピンへの輸出を促進することを目的とする日本フィリピン経済連携協定の下に特恵関税を与える”商品”のリストから有害廃棄物を外すことに対する日本の攻撃的な拒否の事実によって裏付けられています。 同じ項でオカダ殿はまた、貿易パートナーの健康と環境を保護することが加盟国の義務であると称するGATT20条に言及していますが、あいまいな言葉で言い表しています。 注意深くそのオカダ殿の書簡を読めば、日本政府はインド日本経済連携協定が有害廃棄物及び禁止又は制限されている物質の取引を排除することを保証していないことは明らかです。 我々は、貴殿が本件に関するどのような説明を行う場合にも、上記の点を考慮するよう貴殿に要求します。我々は法的及び技術的ことがらに関し、どのような説明でも喜んでする所存です。 敬具 署名者 T.K.Ramkumar Advocate-Partner Ram& Rajan& Associates Nityanand Jayaraman, Collective for Economic, Social and Environmental Justice, Chennai Yasuma Takeshi, Citizens Against Chemicals Pollution, Tokyo, Japan Manny Calonzo, Global Anti-Incinerator Alliance (GAIA), Manila, Philippines Richard Gutierrez, Basel Action Network, Manila, Philippines
Annexure 2 決議 II/12 1994年、3月25日、スイス、ジュネーブにおける第2回バーゼル条約締約国会議(COP2)で採択された。 締約国会議は、 1992年11月30日〜12月4日、ウルグアイで開催された第1回バーゼル条約締約国会議におけるG-77諸国の要求を想起しつつ: OECD諸国から非OECD諸国への有害廃棄物の国境を越える移動が、この条約によって求められる有害廃棄物の環境的に健全な管理が行われないリスクが高いということを認識しつつ: 1. OECD諸国から非OECD諸国への最終処分を目的とした有害廃棄物の国境を越える全ての移動を速やかに禁止することを決議する。 2. OECD諸国から非OECD諸国へのリサイクリング又はリカバリーを目的とした有害廃棄物の全ての国境を越える移動を、1997年12月31日までに止め、同日をもって禁止することを決議する。 3. 有害廃棄物輸入禁止令を持たず、リサイクリング又はリカバリーを目的とするOECD諸国からの有害廃棄物の輸入を1997年12月31まで許可する非OECD諸国は、許容可能な廃棄物のカテゴリー、輸入量、使用されるリサイクリング/リカバリーのプロセス、及びリサイクリング/リカバリーの結果生じる残渣の最終処分の行方、を特定することによって、リサイクリング/リカバリーを目的とするOECD諸国からの有害廃棄物の輸入を許可する旨、バーゼル条約事務局まで連絡すべきことを決議する。 4. 締約国に対し、上記3項の下に許可される有害廃棄物の国境を越える移動の詳細を含む、この決議の実施状況に関して、事務局に定期的に報告することを求める。さらに、事務局に対し、無期限特別委員会の検討用に概要を用意し報告書を作成することを求める。これらの報告書を検討した後に、無期限特別委員会は事務局によって用意された情報に基づき報告書を作成して、条約加盟国会議に提出するであろう。 5. 締約国に対し、この決議が効果的に実施されることを確実にするために協力し積極的に活動することを求める。 決議 III/1 バーゼル条約修正 1995年、9月22日、スイス、ジュネーブにおける第3回バーゼル条約締約国会議(COP3)で採択された。 締約国会議は、 第1回バーゼル条約締約国会議において、産業先進国から発展途上国への有害廃棄物の輸出の禁止要求がなされたことを想起しつつ: 会議での決議 II/12 を想起しつつ: 以下について留意しつつ: −技術作業部会は、バーゼル条約の対象となる廃棄物の有害性特性化に関する作業を継続するよう会議から指示された(決議 II/12 ): −技術作業部会は、有害廃棄物及び条約の対象とならない廃棄物のリストの作成に関する作業に着手していた: −これらのリスト(UNEP/CHW.3/Inf.4)はすでに有用なガイダンスを提案するものであるが、まだ完成しておらず、又は完全には承認されていない: −作業部会は、当事者又は国家の主権が有害廃棄物の国境を越える移動に関する第11条の下に、これらを含む協定又は取り決めを締結することを支援するために技術ガイドラインを作成する。 1. 技術作業部会は、締約国会議の第4回会合に承認用として提出できるようにするために、有害性特性化に関する作業及びリストと技術ガイドラインの作成を完成することを最優先するよう指示する。 2. 締約国会議は第4回会合でリストに関する決定を行うことを決定する。 3. 条約に対する下記修正を採択することを決定する。 ”第7節に新たな前文を挿入する: 有害廃棄物の、特に発展途上国の国境を越える移動は、この条約によって求められる有害廃棄物の環境的に健全な管理が行われないリスクが高いということを認識しつつ: 新たに第4A条を挿入する: 1. 付属書 VII にリストされた各国は、付属書 IV Aによる処分作業を目的として、付属書 VII にリストされていない諸国に、有害廃棄物の国境を越える全ての移動を行うことを禁じなくてはならない。 2. 付属書 VII にリストされた各国は、付属書 IV Bによる処分作業を目的として、付属書 VII にリストされていない諸国に、条約の第1条1(a)の下で有害廃棄物の国境を越える全ての移動を行うことを1997年12月31日までに止め、同日をもって禁止しなくてはならない。そのような国境を越える移動は、もし、当該廃棄物が条約の下に有害であると特性化されないならば、禁止されてはならない。 付属書 VII OECD、EC の加盟国及びリヒテンシュタイン 訳注: 附属書IV 処分作業 A:資源回収、再生利用、回収利用、直接再利用又は代替的利用の可能性に結びつかない作業 B:資源回収、再生利用、回収利用、直接再利用又は代替的利用に結びつく作業 第1条 条約の適用範囲 1 この条約の適用上、次の廃棄物で国境を超える移動の対象となるものは、「有害廃棄物」とする。 (a) 附属書I に掲げるいずれかの分類に属する廃棄物(附属書III に掲げるいずれの特性も有しないものを除く。) |