欧州委員会プレスリリース 2007年5月22日
欧州委員会 より安全な船舶の解体に関する緑書発表

情報源:EC Press Release IP/07/693, Brussels, 22 May 2007
Environment: Commission issues Green Paper on safer ship dismantling
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/693&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月3日

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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/EU/EC_070522_Press_Ship_Dismantling.html


 欧州委員会は本日、いかにして廃船の解体を作業者や環境にとってより安全なものとするかに関する協議(訳注:パブリック・コメント)用文書を発表した。よりよい船舶解体に関するこの緑書(Green Paper)は、この分野におけるEU戦略の策定における重要なステップを意味する。多くの船が現在、南アジアの海岸において危険で環境を汚染する状況の下で解体されていることを強調しつつ、この緑書は、現在計画されている安全な船舶のリサイクリングに関する国際条約の策定及び施行までの間にEUレベルでとるべき行動の一連の選択肢を挙げている。パブリック・コメントのの目的は、EU諸機関、加盟国、利害関係者及び社会全般からこの健康、安全及び環境に関するこの深刻な問題解決の最良の方法についての意見を得ることである。

 環境委員スタブロス・ディマスは次のように述べている。”ヨーロッパや世界各地からの多くの船舶が、毎年数百人の死亡や死傷者を出し深刻な海岸汚染を引き起こす、ぞっとするような状況の下で解体されている。EUは労働者の健康と安全を守り、これらの行為が引き起こす汚染を低減するために行動を起こす義務がある。拘束力のある国際的なルールが緊急に必要であるが、国際的な解決が見つかるまで、EUは加盟国が所有する船舶及び戦艦の解体によって引き起こされる問題に取り組まなくてはならない。”

問題

 欧州委員会は2006年4月に船舶解体に関するEU全体の戦略を策定するための作業を立ち上げた。貴重な金属スクラップを求めて世界中で年間200〜600隻の大きな商業用船舶が解体されているが、今後数年間で一重殻石油タンカーがもっと安全な二重殻船にとって替るので、この数字はもっと大きくなるはずである。船舶解体産業の多くはバングラディシュ、インド、及びパキスタンにあり、そこで数千の雇用を生み出している。しかし環境及び健康の保護対策の欠如は、労働者の事故発生率が非常に高くなり、解体作業により広範な海岸地帯が汚染されることを意味する。廃船は、アスベスト、PCB類、トリブチルスズ、大量の油及びその残渣などの有害物質を含んでいる。

 この状況は、世界を航海する船3隻のうちほとんど1隻はEU加盟国の旗を掲げている船舶なので、この状況はEUにとって大きな懸念となっている。

 開発途上国への有害廃棄物の輸出は、まだ批准はされていない国連の有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の修正条項(訳注:1995年禁止修正条項)にしたがって、EUの廃棄物輸出規制[1]によって禁止されている。実際には現状の国際ルールを船舶に適用することは難しいので、国際海事機関(IMO)は安全で環境的に適切な船舶の解体に関する強制力のある条約を準備している。

緑書の概要

 協議(パブリク・コメント)用文書として、この緑書は出来合いの計画を示すのではなく、加盟国と利害関係者との対話を深め、将来の行動のための基礎を準備することを意図する一連の選択肢を提案している。

 長期的には、この緑書は、国際船舶リサイクリング条約の制定のために現在行われている作業をEU自身の強い役割をもって、EUは支援すべきでことを提案している。緑書はクリーンな船舶解体のための持続可能な資金計画の必要性を指摘しているが、それは海運業界に資金を課して”船舶解体基金”というような形で設立することができるであろう。

 この緑書はまた、短期的及び長期的効果を得る措置を提案している。それらは、ヨーロッパの港でのもっと多くのチェック、EU当局間のもっと体系的な協力と情報交換、及び”クリーン”な船舶解体施設のリストのような指針の刊行などによって、”廃船規制(Waste Shipment Regulation)”のより効果的な施行等を含んでいる。ヨーロッパの”クリーン”な船舶解体能力は、政府の船舶スクラップのもっと厳格で調和の取れた公共調達規則を通じて増強されるであろう。ヨーロッパにおけるクリーンな施設のための国の援助とEUの補助金が可能か、又は当を得ているかは今後の評価にかかっている。

次のステップ

 EU諸機関、加盟諸国、EU域内及び域外の利害関係者、及び社会全般は2007年9月30日までに緑書へのパブリック・コメントを寄せることに招かれている。寄せられたコメントに基づき、欧州委員会はEU船舶解体戦略の策定をどのように達成するか決定するであろう。

更なる情報

DG Environment web page on ship dismantling
http://ec.europa.eu/environment/waste/ships/

[1] Regulation (EEC) No 259/93 of 1 February 1993 on the supervision and control of shipments of waste within, into and out of the European Community, as amended by Regulation (EC) No 1013/2006 of the European Parliament and of the Council


訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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