2007年10月4日〜6日、ボン
3Rイニシアティブ G8高級事務レベル会合に関する バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)と 化学物質問題市民研究会の声明 情報源:Statement of Concern Regarding the 3R Initiative of Basel Action Network (BAN) and Citizens Against Chemicals Pollution For G8 Senior Officials Meeting on the 3R Initiative Bonn, 4-6 October 2007 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/Bonn_3R/BANPaperforBONNFinal.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2007年10月4日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/Bonn_3R/BAN_Paper_Bonn.html 代表団の皆さん NGOs が3Rイニシアティブの会合に出席するためには予算の制限があり資金も欠如しているために、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)と化学物質問題市民研究会(日本)は、今週行われる会議に出席することはできなかった。しかし、我々の願いは、市民社会の声がこれらの会議の中で無視されてはならないということである。我々は、出席者の中のどなたかが我々の声明を読み、その懸念を提起してくださることを期待する。 バーゼル・アクション・ネットワークは、最初の公式会議(訳注:2005年4月東京・3Rイニシアティブ閣僚会合)から3Rイニシアティブに関与しており、このイニシアティブをあるべき姿に変えるために、我々は次のことを確実にするよう最初に要求した。
我々の最大の懸念であり今回の会合の議題の多くにも関連することは、バーゼル条約とバーゼル禁止修正条項の義務が実際には存在しない、あるいは拘束力がないと(3Rイニシアティブが)言い抜け続けていることである。日本が3Rイニシアティブを先頭に立って推進していることは、よく知られていることである。また日本がバーゼル条約とバーゼル禁止修正条項に対する強硬な敵対者でることも非常によく知られている。日本は前回のバーゼル条約締約国会議(訳注1:COP8/ナイロビ 2006年12月)において、全ての締約国が再度の決議の中で、バーゼル禁止修正条項の発効は優先事項であり緊急事項であると宣言した後でも、バーゼル禁止修正条項を非難した唯一の国である。 さらにもっと警戒すべきことは、日本は現在、近隣のアジアの開発途上国と、バーゼル条約及びバーゼル禁止修正条項に反して有害廃棄物及びその他の廃棄物の貿易を自由化する二国間経済連携協定(JEPAs)の交渉を行っているという事実である(原注:添付要約書参照のこと)。 世界に有害廃棄物貿易の道を開き、国連環境計画においてなされた国際的な合意を回避する又は崩す日本によるこれらの取り組みについては、よく報告されている。我々は、日本が先頭に立って推進しており、”3R物品等の国際流通に対する障壁の低減”という目標を持つ、3Rイニシアティブの中に、同じ意図が内包されていることを知っている。3R物品等が意味することを正確に示すものが存在せず、完全な明確さがない3Rイニシアティブは、世界の有害廃棄物貿易を終わらせることを目指す世界の共同体の約束と国際法を弱体化させるよう故意に仕組まれたもうひとつの手段となり得る。 この会合において3Rイニシアティブがバーゼル条約の義務、定義、及び決議を明確に支持する措置を速やかにとることを我々は強く求める。
論点:どのようにすれば既存の定義アプローチ(廃棄物、非廃棄物、使用済み製品)を首尾一貫した国際的な分類体系に統合することができるか? 廃棄物と非廃棄物を区分するためのどのような試みもバーゼル条約下の適切な会議で行われるべきである。バーゼル条約は有害廃棄物とその他の廃棄物の問題について権限を有するものであり、3Rイニシアティブがバーゼル条約の外で廃棄物の定義を取り扱うことは不適切である。 論点:各国は、環境的に適切な廃棄物管理の観点から、3R関連の物品、物質、製品の国内及び他国への流れに関し、どのような困難をお互いに持っているのか? こ問題提起は、3Rイニシアチブの人を誤らせるさせる胡散臭い目的と手法の一例である。故意にあいまいにした3R関連の物品、物質、製品をまず議論の最初に討議することが本質的に重要である。もし3R関連物品が有害廃棄物及びその他の廃棄物を含むなら、故意に誤解を与える3R関連の物品、物質、製品という言葉ではなく、一般的に法的に受け入れられている”廃棄物”及び”有害廃棄物”という定義に基づく言葉が用いられるべきである。今までの3Rイニシアティブ会合における議論を見れば、”3R関連の物品、物質、製品の国内及び他国への流入に関する・・・困難”とはバーゼル条約及びバーゼル禁止修正条項の規則のことを言っている。170か国以上の国がバーゼル条約及びバーゼル禁止修正条項の定義と規則の下に法的に拘束されているにもかかわらずである。同様に、バーゼル禁止修正条項はまだ法的に効力を発していないが、同修正条項が適用する(決議V/1、付属書Z)39か国中32か国においては、すでに法的拘束力を持つようになっている。(訳注2)バーゼル条約及びバーゼル条約が強制力をもって実施されない時にどのような困難が生じるのかという問題提起の方がもっと適切ではないのか? バーゼル禁止修正条項は1980年代に頻発した開発途上国への有害廃棄物の投棄に目を向けて立案されたということを想起したい。これらの悲劇的な事件は、富める国がコストを外部化して貧しい国に押し付ける経済的な動機に基づく有害廃棄物貿易を阻止するために、国際的な共同体が”貿易障壁”を確立することになるきっかけとなった。最近の出来事(すなわち、南アジアへの有害廃船の投棄、アジアやアフリカにおける電子廃棄物の投棄、コートジボアールにおける有害廃棄物投棄の悲劇)は、そのような貿易が今日、かつてないほど大量に行われているので、バーゼル条約及びその禁止修正条項が以前にもまして必要となっていることを我々に想起させるものである。 論点:クリーンで効率的な3R技術 地球上の廃棄物危機に対し技術が唯一の解決策ではないということを想起することが重要である。定義されている環境的に適切な管理(ESM)は単なる技術的解決よりはるかに包括的であるが、社会的、財政的、及び法的検討など”全ての実行可能な”措置を考慮しなくてはならない。持続可能な有害廃棄物管理は本来、単なる技術的挑戦課題ということではなく、経済政策、ガバナンス(統治)とインフラストラクチャー(基盤施設)、施行能力、訓練、労働者と共同体の権利と知識、法的枠組、及び安全に関する知識、訓練及び施設など・・・に目を向ける必要がある。例えば、政府や企業によって引き起こされる被害や不当な扱いに対する不満を正すために市民と労働者はどのような権利と能力が必要なのか? 4番目のRR(Responsibility)が、これらの非技術的、社会的問題に我々が適切に目を向けることに役立つ。 論点:環境的に適切な廃棄物管理ために、どのような種類の標準が国際的なレベルで必要か? 現在、環境的に適切な廃棄物管理のための標準を確立するための多くの取り組みが行われている。これらの多くは技術指針としてバーゼル条約の枠組みの中で行われている。今回の議論はすでにできているものを作り直すための疑わしい試みである。 我々は、バーゼル条約とは切り離して、3Rイニシアティブの脈絡の中でこの議論を取り上げることの意味は、環境的に適切な廃棄物管理が適用される限り有害廃棄物を途上国に輸出することが許されるという考えに逆戻りしていることを議題が隠そうとしていないことである。この主張は一見、論理的であるが現実の世界に照らすと間違っている。基本的な欠陥は下記の通りである。 The fundamental flaws are as follows:
NGOとビジネス、NGOと政策立案者−など様々な関係者間の協力を推進するために重要な要素は透明性と情報公開である。3Rイニシアティブの最初の会合以来、我々は、政策の策定と文書、意思決定、及び会合の運営がいかにNGOと市民社会に対して閉ざされていたかを指摘した。この点に関して、3Rの今日に至る記録は全くひどいものである。 論点:開発途上国における環境的に適切な廃棄物管理に、非公式な事業者はいかに関与することができるか? これは非常に重要な問題提起である。非公式な事業者は基本的に公式な事業者に変わるまでは有害廃棄物を取り扱うべきではないことは明らかである。しかし、先進国から輸出される膨大な量の電子廃棄物のために非公式事業者は大いに繁栄している。船舶解体で起きているように、このような貿易を許すことはそれらの事業者に大きな経済的影響力を持たせることになる。このような取引は最初にバーゼル条約の執行により禁止されなくてはならない。そうすることによって公式な事業者が競争力を持ち、リサイクリングの価格が上がってコストを内部化できるようになり、非公式な労働者が公式な産業分野の一部となる。 論点:廃棄物削減を求めることの困難さ 3Rイニシアティブは、3Rの最初のR(Reduction)、廃棄物と危険物をその源で削減することに努力の大部分を注がなくてはならない。積極的なリサイクリングは、実際には廃棄物削減の意欲をそぎ、緩和する働きをする。例えば、もし携帯電話が安易に溶鉱炉に投げ込まれ、(訳注:貴金属が)回収されているなら、長寿命の携帯電話を作り出す動機が希薄になる。短寿命にして消費者製品をどんどん製造するいう精神構造は、消費と廃棄を最小化することに比べて、物質とエネルギーの大いなる浪費である。製造者責任のような市場原理を通じて環境設計に目を向けるだけでなく、例えば企業によるリースやインターネットの電子サービスによる製品の長寿命化が奨励されるメカニズムの検討が重要である。 あなたのご親切な配慮に感謝します。 ユカ・タカミヤ、ジム・パケット バーゼル・アクション・ネット・ワーク (www.ban.org (英文)) 及び 化学物質問題市民研究会 (http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html(日本語) に代わって 原注:添付要約書
http://www.bmu.de/english/international_environmental_policy/g8_presidency_2007/doc/39172.php 訳注1:第8回バーゼル条約締約国会議バーゼルアクションネットワーク報告/2006年12月2日 ナイロビ(当研究会訳) 訳注2: 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(PDF 環境省訳) 訳注3:バーゼル禁止令 決議 III/1(当研究会訳) これがいわゆるバーゼル禁止修正条項である。 1995年、9月22日、スイス、ジュネーブにおける第3回バーゼル条約締約国会議(COP3)で採択された。 訳注4:ボン/3Rイニシアティブ G8高級事務レベル会合における議題 G8 Senior Officials Meeting on the 3R Initiative Bonn, 4-6 October 2007 International Progress in Reduce, Reuse, Recycle (3R) Annotated agenda http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/3Rkonferenz_programm_engl.pdf |