第9回バーゼル条約締約国会議
 BAN プレスリリース 2008年6月27日
国連廃棄物条約
長らく待たれてきた有害廃棄物輸出禁止
今回も延期

バーゼル・アクション・ネットワーク
情報源:Basel Action Network, 27 June 2008
Immediate Release:
United Nations Waste Treaty
Postpones Long Awaited Toxic Waste Dumping Bant
BAN_Press_Release_After_COP9.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年7月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP9/COP9_BAN_Press_080627.html


 【バリ、インドネシア、2008年6月27日】一週間にわたり開催された第9回バーゼル条約締約国会議は、地球規模の有害廃棄物輸出禁止(訳注:バーゼル禁止修正条項)が国際法として発効することを妨げる暗礁を打ち砕くことについて、ほとんど進展しないままに本日閉会した。1995年にバーゼル禁止修正条項に同意した諸国のうちの62か国ではなく、128か国の批准を求める日本、カナダ、ニュージランド、インドにより進められた活動(訳注1)は、早急の批准を求める多くのアフリカ及びアラブ諸国の激しい反対にあった。
 禁止条項はバーゼル条約に対する修正提案として1995年に採択されたものであり、その発効はバーゼル条約締結時以来、途上国の目標であった。現在63カ国により批准されたが、加盟国の全てが禁止条項の採択時に参加していたわけではないので、彼らの全てが禁止条項の発効に資格があるわけではない。

 ”富める国から途上国への有害廃棄物の輸出を止めさせるために世界の共同体がバーゼル条約禁止修正条項を採択して以来、現在まで13年間経過している。これ以上一日でもその発効を延ばすことは不道徳である”とバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)のケビン・ステアーズは述べた。”途上国は、飢餓、貧困、幼児死亡、疾病の惨害を既に十分に被っている。我々の有害廃棄物を途上国に送ることは、途上国やそこの人々、そして世界の環境の犠牲の上に、先進国が利益を増そうとすることであり、残酷にも傷口に塩をすりこむようなものである”。

 禁止修正条項を発効させるための数に関する合意に失敗したことを受けて、議長国インドネシアは”将来にむけて(Way Forward)”という文書を提案し、会議で採択された。同文書は、早期批准を容易にするよう加盟国が禁止修正条項の批准を促進するよう求め、さらに、発効までの暫定期間、禁止修正条項の目的を達成するための条件作りをするよう求めた。

 ”インドネシア政府は最善の意図をもっているが、残念ながら、誰かが魔法の杖を振って、日本やアメリカ、カナダが禁止修正条項の妨害を突然止めることなど誰も期待することはできない”とBANのジム・パケットは述べた。”しかし、この新たな声明は、この暗礁を打ち砕き、次回2011年の会議には発効を達成する推進力となるもっと多くの批准をもたらすであろう”。

 有害廃棄物の輸出、特に電子廃棄物という形での消費者の使用済み廃棄物と廃船が近年、実際に増加している。BAN は会議で、最近、(訳注2:2002年以来6年ぶりに)中国のグイユを訪問したが、アメリカ、カナダ、日本のような国から不法に輸入された電子廃棄物の、構成部品や電線の野焼き、電子回路基盤の加熱処理及び金を得るためのマイクロチップの原始的な酸ストリッピング等の原始的処理は過去6年間でさらに広範に行われていた。

 ”この不法な地球規模の有害廃棄物の投棄が明らかになってから6年後、バーゼル条約加盟国がこの惨事を終わらせる責任を取っていないということが、どうしてありえるのか?”とジム・パケットは述べた。”もし加盟国が自身の規則を実施し法的強制力を持たせることができないなら、バーゼル条約は張子のトラのようなものだ”。

 BANは、同条約会議がまた、国際海事機関で交渉されている廃船の安全なリサイクルを確実にするための新たな条約が、バーゼル条約の諸原則を考慮した時に同等のレベルの管理を提供しないかも知れないという懸念を示し、その評価をおこなうであろうとしたことに満足の意を示した。労働者が爆発や押しつぶされ事故て死亡しており、またアスベストやPCB類、重金属類等の致死的な有毒物質に曝されているバングラディシュ、インド、パキスタンの海岸における船舶解体に見られる恐ろしい状況は、ほとんど改善されていない。今月になってからでさえ、バングラディシュのチッタゴンで起きた事故で4人の労働者が殺された。バーゼル条約加盟国はIMO条約の評価を実施するであろう。

 ”IMO条約は残念ながら、船舶産業によって彼らのために起草された。それは国際的原則と法に対して大きく逆行している”とジムパケットは述べた。”船舶が国際的な最小限の基準に合致することを確実にするものは何もない。廃船が輸出される前にアスベストなどの危険な物質が除去されることを確実にするものは何もない。そして将来、船舶が有害性がより低い材料で建造されることを確実にするものは何もない”。

Contact:
Jim Puckett of BAN at 9th Conference of Parties in Bali from 23-28 June.
(206) 652-5555 (Seattle). Melia Bali Hotel: (62) 361-771510, Room 2229, jpuckett@ban.org
Kevin Stairs of BAN, +49.6221.809.941, (cell) +49.179.928.2037.



訳注1:バーゼル禁止修正条発効に必要な批准国数についての議論
(「バーゼル条約17条 条約の改正」の解釈の違い)
■禁止修正条項の早期発効推進派の主張
(EU各国、アフリカ、アラブ、アジア諸国など)
 批准国リスト:Ban Amendment to the Basel Conventionon
 バーゼル禁止修正条項は1995年の採択時にいた国数(82)の4分の3以上の批准国数(62)で発効する。

■禁止修正条項の発効阻止派の主張
 (日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどJUSCANZグループ)
 現在のバーゼル条約の加盟国数(170)の4 分の3、128 カ国の批准が必要である。

■2006年第8回バーゼル条約締約国会議(COP8)及び2008年第9回バーゼル条約締約国会議(COP9)で決着が付かず、JUSCANZグループは引き延ばしに成功。次回2011年のCOP10に持ち越された。

訳注2:2002年BANによる中国広東省グイユの調査

BAN制作/日本語版DVD『危害の輸出−アジアで処分されるハイテクごみ』
販売価格 個人・NGO:2,000円 企業・公共機関・教育機関:4,000円
申し込み: e-mail、FAX、電話等で当研究会

訳注3:関連情報:



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