第9回バーゼル条約締約国会議
2008年6月24日 バリ、インドネシア
電子廃棄物問題に関する干渉
バーゼル・アクション・ネットワーク
ジム・パッケト

情報源:Basel Action Network, 24 June 2008
Intervention Regarding e-Waste
By Jim Puckett
Intervention_on_e-Waste.pdf(英語版PDF)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP9/COP9_BAN_e-waste.html

 バーゼルアクションネットワークは、バーゼル条約が家電廃棄物の取り扱い問題を非常に懸念していると言いながら、もっとも酷いケースのほとんどはその多くが違法でアメリカから輸出されている電子廃棄物の越境移動によって引き起こされているという事実を無視しているように見える傾向にあることに気付き、困惑している。

 我々は、中国やインドのような国で非正規業者らが行っている原始的な電子廃棄物管理を非難するが、この非正規業者らは、頻繁に大規模に行われている違法な取引のおかげで繁栄しているということを我々は認識していない。この違法な取引により、非正規業者らは、あるいはそれを統率するボスと言うべきかも知れないが、大きな力と富と影響力を得ている。このような形でこれらの非正規業者らが繁栄することを許される限り、彼らによる輸入には勝てないので、それらの国で環境的に適切な管理(ESM)を確立することは決してできないであろう。

 したがって、電子廃棄物管理における環境的に適切な管理(ESM)を行うための必要条件は、先進国から途上国への電子廃棄物の国境を越える移動、特に現在世界中で行われている大量の違法な取引を防止しなくてはならないということは明らかだ。基本的には貿易規制条約であるはずのバーゼル条約がこの負託を無視し、その代わりに、由来が違法であろうとバーゼル条約の管理下になかろうとおかまいなしに、廃棄物管理に焦点をあてていることを、私は非常に奇妙に思う。

 6年半前にBANは、中国のグイユとして知られる地域に主に日本、カナダ、及びアメリカから輸出される電子廃棄物に関する映像を初めて世界に紹介した。これらの映像は世界中を震撼させた。彼らは違法取引の結果であるコンピュータ時代の悪夢を描き出した。それについて何かすることはバーゼル条約の仕事であり、我々の仕事である。3週間前、私は最初の訪問以来初めて、再びグイユを訪問した。

 グイユの状況は、中国政府も完全に認識してきたのにもかかわらず、前回よりもはるかに悪くなっているということを報告しなくてはならないのは大変遺憾である。様々にある作業の中で最も危険である電線や構成部品の野焼き及び酸ストリッピングが劇的に拡大しており、悲劇的にも65,000にとも推測される移住労働者の健康と生活に影響を与えている。労働者らは、もしジャーナリストや外国人に彼らの経験について何かしゃべれば、彼らのボスに殴られると密かに打ち明けた。

 6年半後の現在も違法な有害物質貿易による惨事があり、この貿易の犯人が誰であるかわかっているのに、このことを放置することがなぜ許されるのであろうか? 中国の人々の生活や環境に対する影響は、6年半にわたる重金属や多環芳香族炭化水素(PAHs) やダイオキシン類の絶え間ない放出と暴露による惨事であり、コートジボワールのアビジャンで一週間あまりで証明されたプロボ・コアラ号"スキャンダルと同様に悲惨であるということを我々は本当に信じられるであろうか?
 国際的な抗議の声はどこにあるのか? 訴訟はどこにあるのか? グイユでは日々起きている、そして小規模に世界中の多くの都市で起きている、スローモーションバージョンのプロボ・コアラ号スキャンダルに取り組むための数百万ドル(数億円)の金ははどこにあるのか? 我々は開会のスピーチでバーゼル条約は電子廃棄物問題に取り組んでいると聞いた。ナイロビ宣言があるから心配は要らないと聞いた。私はそうは思わない。我々には心配するべきことが多くある・・・法的強制力のある国際法であるということを我々が忘れてしまった様に見えるこのバーゼル条約自身の内側に心配事がある。多くの宣言を起草し、多くのEMSガイドラインを起草するけれども、それを我々自身の規則として実施できず、する気もないという条約に我々がなってしまったのならば、我々の心配事は山のようにある。

 電子廃棄物投棄の疾病は流行病になり始めている。BANは、全てのバーゼル条約加盟国と1署名国に対し、あなた方の国の関税当局と一緒になって内省(反省)し、優先順位を再編し、違法な有害電子廃棄物があなた方の国から輸出され、あなた方の国に輸入されることを止めさせる取り組みを大事急(一番の優先事項として)開始することを強く要求する。

ありがとうございました。


訳注:関連情報


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