バーゼル条約 COP12 2015年5月9日
BAN/BAN Toxics 発言
カナダからの不法な廃棄物輸出
弁護士リチャード・グティエレツ

情報源:Basel Convention COP12 BAN Intervention
BAN/BAN Toxics Compliance Intervention: Illegal Waste Shipment from Canada, 9 May, 2015
By Richard Gutierrez
http://ipen.org/sites/default/files/documents/
BAN%20Toxics%20Intervention%20on%20Compliance%20and%20Illegal%20Waste%20Shipment%20from%20Canada.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年5月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP12/
COP12_Intervention_Compliance_and_Illegal_Waste_Shipment_from_Canada.html


 議長及び卓越した代表者の皆さん、ありがとうございます。

 バーゼル条約遵守メカニズムの協議の間、BAN は締約国に対して、市民社会組織が不遵守事項を報告するための場がないということは間違っていると表明しました。国際刑事裁判所(ICC)メカニズムへのアクセスがないので、BAN はこの発言の場を借りて、バーゼル条約の監視団体として我々が長年が見てきた不遵守行為の中で最も重大なもののひとつに関して締約国及び事務局に訴えます。
 卓越した代表者の皆さん、抵抗のあらしがフィリピンで荒れ狂っています。カナダから不法に輸出され、ほぼ700日以上の間マニラ港に留め置かれ、腐敗、悪臭をはなつ廃棄物にフィリピン人は怒りの声を上げています(訳注1)。

 この不法な輸出について私の母国及びカナダが直面している問題は、両国間だけでなく条約にも重大な懸念をもたらしています。それはバーゼル条約の根幹、その効果と基本的な義務、すなわち、事前同意、不法な貿易の管理、そして再輸入の義務(訳注:不適正な輸出や処分行為が行われた場合の輸出国の引き取り義務)にかかわる懸念です。

 不遵守の事実は明らかです。カナダからの50個の40フィートコンテナーについてリサイクル可能なプラスチックであると偽った申告がなされました。2013年1月のフィリピンでの検査の結果、その船荷は主に、付属書Uの廃棄物(訳注:家庭ごみ)でした。フィリピンはこの問題を解決するために措置を取りましたが、カナダはバーゼル条約実施国内法が不適切であり、不法輸出は私的な商業行為であると主張して、バーゼル条約の義務から逃れようとしています。

 コンテナーの差し押さえ以来700日以上経過してもその廃棄物はまだフィリピンにあります。この事件は、多くの疑問を提起しています。すなわち、 バーゼル条約に従わないこの附属書U(家庭ごみ)の取引が、どのくらい長い間、どこの国に送り込まれていたのであろうか? そして、このことを再び起こさせないようにするために何をするのか? という点です。フィリピン政府は、12の訴因をもって輸入者を告発しましたが、カナダ側の犯人は告発されていません。私たちはカナダがその義務を認めず、不法な廃棄物輸出者を告発しないなら他の違反者を大胆にさせるだけであり、バーゼル条約締約国、特に発展途上締約国をリスクにさらすということを懸念します。

 ほとんど2年もたってから、カナダから圧力をかけられた我が国の外務省が、今週行われるフィリピン−カナダ首脳会談に備えて、いかに圧力に屈し、その廃棄物をフィリピンの土地に埋めることに同意したかということを目撃して当惑させられます。外交的いじめは、フィリピンのバーゼル条約を実施するという決意を消滅させました。 従って、たとえフィリピンがこの不遵守の件を実施遵守委員会に持ち込むことを渋っているとしても、そのような不遵守は簡単になかったことにすることはできません。二国間不遵守は、バーゼル条約の下で許されません。

 フィリピン民衆は、カナダからの汚れたおむつ、電子廃棄物、汚染プラスチック、その他家庭ごみを受け入れるという侮辱に怒りを示すために、数日間、街頭でデモを続けており、フィリピンの納税者はカナダの廃棄物のために170万ドルの滞船料を支払わせられており、我が国の司法省はフィリピンの輸入者の刑事責任を問うためにそのリソースを費やしているのですから、カナダの輸出者がそのような廃棄物を投棄して有罪になっても我々には何も損はありません。

 皮肉にも損をするのは我々ではなく、力の強い国がその力を弱い国を搾取するために使用したということです。非常にダイナミックなバーゼル条約はまさにそのようなことを止めるために設計されており、それが今、我々がここにいる理由です。

 卓越した代表者の皆さん、この条約で、そして世界中で条約をよりよく実施するために、そして不法な取引を阻止するために、私たちは総力をあげていますが、もし締約国自身が不法な取引の共犯者になるなら、私たちは希望のない状況にいることになります。もしこの件がバーゼル条約によって取り上げられることがないなら、同条約はフィリピン民衆を見捨てたことになります。私たちの政府は、外交的に沈黙させられています。私たちはカナダが自身の不遵守を発議することは全く期待していません。私たちはカナダに対しこの件を議論するために私たちと会うよう何度も求めましたが、彼らは拒否しています。

 フィリピンの友人たち及び市民社会パートナーとともに、BAN は条約事務局に対してバーゼル条約の不遵守メカニズムを発議するよう求めます。これは私たちの条約です。それは生きた条約です。もし、カナダがその廃棄物の引き取りとその犯罪的取引を告訴されないなら、この会議室にいる全ての人々の面前で大変な不正義が行われたことになります。私たちは、そのようなことが起きることを許すことはできず、私たちはこの件について事務局に書面を提出するでしょう。

 議長、ありがとうございました。


訳注1
BAN Toxic Trade News 2015年3月31日 カナダはフィリピンでの廃棄物投棄事件で法的義務を無視しているとして非難される


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