市民団体共同プレスリリース2007年2月20日
(GAIA, BAN, グリーンピースSEA, 化学物質問題市民研究会)
日本はアジアの隣人の腕を捻り上げて有害廃棄物を輸出
二国間"経済連携協定"は世界の廃棄物貿易のルールを損なう


情報源:Toxic Trade News / 20 February 2007
Japan "Twisting Arms" of Asian Neighbors to Take Toxic Waste
New Evidence Proves Japan’s Intent to Export Toxic Waste to Asian Countries
Citizen Group Joint Press Release

http://www.ban.org/ban_news/2007/070220_twisting_arms.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年2月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/070220_Joint_Press.html


 【2007年2月20日 バンコク、マニラ、シアトル、デリー】 環境団体[注i]は本日、現在は厳格に管理され禁止されている有害廃棄物の輸出を目指して国際法を覆そうと積極的な取り組みを行っている日本政府に抗議した。彼らは、日本政府がアジア地域で有害廃棄物取引を推進するためにその経済力を十二分に行使して、いわゆる二国間 "経済連携協定"(EPAS)[注ii]を通じて時代に逆行する戦略を積極的に追求していることを示す新たな証拠を発表した。

 アジア地域で有害廃棄物を他の国に輸出するという日本の意図を最近明らかにしたものとして、日本政府が昨年8月に行ったアジアにおける二国間又は多国間協定を廃棄物貿易に利用する方法を検討するための調査委託の公募書類があり、そこでは、 "我が国とアジア諸国で双方向の有害廃棄物等の移動を行うための協定について、課題の整理を行う"ことを求めている。この調査委託は神鋼リサーチ株式会社が受注した。(アジア地域での廃棄物輸出を推進しようとする日本政府のもっと多くの事例については 付属1を参照)

 ”この最新の証拠は我々が初めから疑っていたことを証明するものである。JPEPA推進側からの公式な否定にも関わらず、日本がその有害廃棄物をフィリピンに投棄することを許す手段としてこの協定を使おうとする意図をそれは明白に示している。我々は、この協定を有害及び放射性廃棄物自由化条項が削除されるまで批准すべきではないという以前からの要求を繰り返す。JPEPAと同様な二国間貿易協定は、もし長期間、我々が、我々の水、我々の土地、そして我々の人々を汚染することになるのなら、無益である”とグリーンピース東南アジアのキャンペーン担当ベアウ・バコンギスは述べた。

 現在、バーゼル条約[注iii]は、全ての国が自国の廃棄物を自国の国境内で管理する責任を求めている。同条約は廃棄物貿易に関する厳格なルールを規定しており、富める国から貧しい国への有害廃棄物の輸出を禁止する多くの決議を行ってきた。しかし、最近、日本がこの条約に抜け道を作る又は回避することにより、隣人であるアジア諸国の領域内に日本の廃棄物のためのゴミ捨て場を求めることを意図していることが明らかになった。

 "日本は、皮肉にもバーゼル条約の周囲に大金をばら撒き、そして開発途上国に開発援助の約束をしている一方で、実際には日本は同条約の当初の意図をつぶす目的を持って同条約の中でがんとなっている"とバーゼル・アクション・ネットワーク・アジア太平洋事務所のリチャード・グティエレスは述べた。"日本は、アジア地域で我々に開発と汚染を引き換えにする二国間貿易協定に署名するよう圧力をかけて開発途上国の"腕を捻り上げる"ことを企んでいる。"

 経済連携協定には、フィリピンが日本から家事及び介護労働の市場開放の約束をとりつけたように、あるいはタイがバンコクの高架鉄道の投資を受けようとしているなど、無言の見返りがしばしば含まれている。

 実際、最も恐ろしいことには、これらの二国間協定はすでに驚異的なスピードで交渉が行われているという事実であり、国際法の専門家によれば、これらはバーゼル条約及び有害廃棄物の開発途上国への輸出を禁止するバーゼル禁止修正条項を無効にするものである。

"日本はバーゼル禁止修正条項を批准する意図はなく、近隣諸国がこの禁止条項を実施するのを妨げるための措置を講じていることは、よく知られていることである"と東京の化学物質問題市民研究会の安間武は述べた。"日本にとって残念なことであるが、フィリピンのJPEPAやタイのJTEPAのような自由貿易協定は、バーゼル条約が歴史の本の中に追いやることを望んでいた廃棄物植民地主義を求める非道徳的な戦術である。"

EPA協定については下記のウェブサイトを参照のこと。

問い合わせ:

Richard Gutierrez, Basel Action Network Asia Pacific in Manila
Tel: +63 917 5067724 email: rgutierrez@ban.org

Beau Baconguis, Greenpeace Southeast Asia in Manila
Tel: +63 917 8036077; email: bbacongu@ph.greenpeace.org

Takeshi Yasuma, Citizens Against Chemicals Pollution in Tokyo
Tel: +81-3- 5836-4358, e-mail: ac7t-ysm@asahi-net.or.jp

Jim Puckett, Basel Action Network in Seattle
Tel: +1.206.652.5555 (office), +1.206.354.0391 (cell), e-mail: jpuckett@ban.org

付属1

最近の日本の反バーゼル行動と活動
  1. 廃棄物貿易を推進しようとする日本政府の戦略は、政府系研究機関である財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)から出版された政策文書『国際リサイクル特区とアジア域内ネットワークの構築』[注iv]に非常にあからさまに述べられている。その中で、"リサイクル資源の国際流通に対する障壁となっている"バーゼル条約の"煩雑な手続き"を回避するために二本の柱戦略が企図されている。この戦略は、リサイクリングを推進するという名の下に廃棄物に対する貿易障壁の排除を推進し、廃棄物における貿易障壁を排除するために二国間自由貿易を使用することを唱道し"3Rイニシアティブ"として知られている日本のG8プロジェクトを利用するよう主張している。

  2. 実際、日本の新構想であり、G8の枠組みの中でアメリカに支援されている3Rイニシアティブはアジア諸国政府との会議に大金をつぎ込んでいる。それらの会議はとりわけリサイクリング(回収)とリユース(再使用)という隠れ蓑の下に廃棄物の貿易障壁の排除という3Rの目標を推進するために組織されている。バーゼル条約は世界で最も知られた"廃棄物の貿易障壁2である。

  3. さらに日本は事実、経済連携協定(EPAs)として知られる自由貿易協定を打ち上げはじめたが、衝撃的なことにそれは有害廃棄物のリストが関税が撤廃されるべき "物品"のリストに加えられることを求めている。これらのEPAsは国のバーゼル条約へのコミットメントを無効にする効果をを持っている。日本はすでにそのような協定をシンガポール、メキシコ、及びマレーシアと締結しており、フィリピンとの協定(JPEPA)は調印され、ブルネイ、インドネシア、ベトナム、タイその他のASEAN諸国との協定も交渉中である。

  4. 日本はバーゼル条約が廃船の輸出に適用されないようにし、その代わり、産業界が支配する国際海事機関(IMO)の船舶リサイクリングに関する非常に弱い国際条約を推進するために立ち回っている。この新たな条約は環境正義に関する配慮が全くなく、汚染の負荷の大部分を先進国から開発途上国に押し付けようとしている。

  5. そして最後に、昨年11月にナイロビで開催された第8回バーゼル条約締約国会議で、日本は、1995年に締約国によってなされた決議であり、富める国から貧しい国への全ての有害廃棄物の輸出を禁止するバーゼル条約禁止修正条項に反対を表明した唯一の締約国であった。

[注i] プレスリリースに参加した団体
  • Global Alliance for Incineration Alternatives (GAIA),
  • The Basel Action Network (BAN),
  • Greenpeace Southeast Asia,
  • 化学物質問題市民研究会(Citizens Against Chemicals Pollution)
[注ii]
[注iii]
[注iv]
 このポリシー・ブリーフは日本政府の関連機関である財団法人地球環境戦略研究機関(Institute for Global Environmental Strategies)の研究員によって書かれたものである。


化学物質問題市民研究会
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