BAN 有害廃棄物ニュース 2006年12月7日
韓国 反バーゼル陣営から離脱
環境団体はこの動きを賞賛し、日米の有害廃棄物輸出政策を批判

BAN、グリーンピース、GAIA 共同プレスリリース

情報源:Toxic Trade News / 7 November 2006
South Korea Breaks Rank with anti-Basel Ban Block
Environmental Groups Laud Move, Critical of Japan and US Toxic Trade Policy
Joint Press Release from BAN, Greenpeace, and GAIA

http://www.ban.org/ban_news/2006/061208_south_korea.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年12月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/061207_Korea.html


 【2006年12月7日 マニラ、ナイロビ】−環境団体は、11月27日〜12月1日にケニアのナイロビで開催された第8回バーゼル条約締約国会議における討議の過程で、アラブ地域(the Arab region)、エチオピア、タンザニア、ノルウェーとともに韓国が、先進国が貧しい諸国に有害廃棄物を輸出することを禁止するバーゼル条約禁止修正条項の早期発効を支持したことを賞賛した。

訳注:バーゼル禁止修正条項発効の議論
 現在、禁止修正は63か国が批准しているが、発効については二つの解釈がある。ひとつは1995年の採択時に実際にそこにいた国(82カ国)の3分の2以上の批准で発効するとし62の批准で十分であり早期発効すべしとするものである。韓国は、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージランドとともに JUSCANZ グループとして禁止修正に反対して、現在のバーゼル条約の加盟国数(168)4分の3、すなわち128カ国の批准が必要であると主張してきたが、ナイロビ会議で早期発効を支持した。この議論はナイロビでは決着がつかなかったが、EUは早期発効派を代表して、次回のCOP9までに決着をつけるべしと発言した。

 バーゼル禁止修正条項の論争は、欧州連合が、条約改正の効力発効に関するバーゼル条約17条(5)(訳注1)の不明瞭な点を解決するよう各国を促したことが引き金となった。アメリカとカナダは韓国の解釈に同意せず、アメリカは討議の間中、バーゼル禁止修正に声を大にして反対し続けた。

 韓国の動きは、JUSCANZ、すなわち1995年のバーゼル禁止修正案の導入以来、その修正案に激しく反対してきた日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、及びニュージランドを含む反バーゼル陣営諸国に著しい亀裂を与えるものである(訳注:JUSCANZ 中の S はSouth Korea の S である)。それはまた、先の9月に7人の死亡者と多くの被害者を出したコートジボアールの有害化学廃棄物投棄事件[原注1] (訳注2)に対する世界的な憤激が起きた重要な時期とも重なる。

 ”コートジボアールのような国を悩ませ続けた悲劇と不正義は昨日で終止符を打った。アメリカやカナダのような少数の諸国がバーゼル禁止修正条項の早期発効に反対する妨害工作を止め、世界の残りの国々の意思を尊重すべき潮時である”とバーゼル・アクション・ネットワークのアジア−パシフィック担当リチャード・グティエレスは述べた。

 ナイロビ会議に出席した環境 NGOs はまた、二国間自由貿易協定(FTA)を利用してアジアに廃棄物帝国を作り上げようとする日本の取組を批判した[原注2]。日本の二国間協定(FTA)は、バーゼル禁止修正の環境正義条項とともに有害廃棄物の発生と国境を越える移動を最小にするというバーゼル条約の義務を潜り抜けてアジアの貧しい近隣諸国に有害廃棄物を歯止めなく輸出する道を開く条項を含んでいる。

 ”我々は有害廃棄物のないアジアを目指すアジアの先進工業国を必要としており、日本は惨めにもその資格がない”とグリーンピース・サウスイースト・アジアのビュー・バコングイスは述べた。脱焼却グローバル連合(GAIA)のマニー・カロンゾは、”ナイロビで示された韓国の見解により、日本の有害廃棄物植民地化から離れてアジア地域の残りの諸国を導く新たなリーダーが出現する希望がでてきた”と付け加えた。

連絡先:
  • Richard Gutierrez, BAN Asia-Pacific, Tel: +63.02.9290376, e-mail: rgutierrez@ban.org
  • Beau Baconguis, Greenpeace Southeast Asia, Tel. +63.02.4347034, e-mail: beau.baconguis@ph.greenpeace.org
  • Manny Calonzo, Global Alliance for Incinerator Alternatives (GAIA), Tel. +63.02.929.0376, e-mail: mannyc@noburn.org

原注1:
For more information see BAN Press Release at:
http://www.ban.org/ban_news/2006/060926_activists_call.html

原注2:
日本の最近の動きは、日本とフィリピンが先の9月9日、日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)に署名したことである。この条約は両国によって批准の手続きが行われている。詳細は下記を参照:
http://www.ban.org/Library/JPEPA_Report.pdf


訳注1:
有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(環境省訳)
第17条 この条約の改正
  1. 締約国は、この条約の改正を提案することができるものとし、また、議定書の締約国は、当該議定書の改正を提案することができる。改正に当たっては、特に、関連のある科学的及び技術的考慮を十分に払うこととする。
  2. この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。議定書の改正は、当該議定書の締約国の会合において採択する。この条約及び議定書の改正案は、当該議定書に別段の定めがある場合を除くほか、その採択が提案される会合の少なくとも6箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、改正案をこの条約の署名国にも参考のために通報する。
  3. 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、当該会合に出席しかつ投票する締約国の4分の3以上の多数票による議決で採択するものとし、寄託者は、これをすべての締約国に対し批准、承認、正式確認又は受諾のために送付する。
  4. 3に定める手続は、議定書の改正について準用する。ただし、議定書の改正案の採択は、当該会合に出席しかつ投票する当該議定書の締約国の3分の2以上の多数票による議決で足りる。
  5. 改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書は、寄託者に寄託する。3又は4の規定に従って採択された改正は、改正を受け入れた締約国の少なくとも4分の3又は改正を受け入れた関連議定書の締約国の少なくとも3分の2の批准書、承諾書、正式確認書又は受諾書を寄託者が受領した後90日目の日に、当該改正を受け入れた締約国の間で効力を生ずる。改正は、他の締約国が当該改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書を寄託した後90日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。ただし、関連議定書に改正の発効要件について別段の定めがある場合を除く。
  6. この条の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。
訳注2:


化学物質問題市民研究会
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