BAN 有害廃棄物ニュース 2006年10月31日
国際環境団体BANがフィリピン上院に
日比経済協定を拒否するよう要求


情報源:Toxic Trade News / 31 October 2006
Int'l group urges Senate to reject RP-Japan trade pact
by Blanche Rivera & Juliet Labog-Javellana, INQ7.net (Philippines)
http://www.ban.org/ban_news/2006/061031_group_urges.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月6日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/061031_RP_Japan_trade_pact.html


 【2006年10月31日 INQ7.net (Philippines)】 日本の意図は”非常に疑わしい”として、国際的な環境監視団体が10月31日(火)、フィリピンに持ち込まれる製品リストから有害廃棄物が外されない限り、議論ある日本との経済協定を拒否するようフィリピン上院に要請した。

 アメリカに拠点を置くバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)は、エデュアルド・エルミタ外務長官が上院に批准を求めて経済協定を提出するために外務省が作成した計画書の承認を求めてアロヨ・フィリピン大統領に向けたメモを発表した時に、このアピールを行った(訳注1)。
 エルミタ外務長官はこの協定は現在発効していると主張したがどのようにして発効したかの説明はない。

 シアトルに拠点を置くBANは、有害廃棄物を第三世界の諸国に廃棄することを禁止するバーゼル条約の遵守を監視する環境活動家のネットワークである。

 フィリピン人の看護士/介護士との交換でフィリピンは日本のゴミ捨て場になると環境活動家らに批判された後に開かれた日本・フィリピン経済連携協定(JPEPA)に関する上院の公聴会でも要求が行われた。

 その強い口調の声明で、BANはまた、フィリピン政府が廃棄物をJPEPAの関税削減プログラムの中に含めたことは単に技術的なことであると主張していることについて、これは”誤解させるものであり、全くの偽りである”とい言ってフィリピン政府をしかりつけた。

 ”フィリピン政府は、JPEPAに廃棄物貿易自由化条項を含めることの重要性について誠実ではなかった”とBANは述べた。

 この協定はアロヨ大統領と小泉純一郎首相によって、9月9日、フィンランドのヘルシンキでアジア・ヨーロッパ会議の間に署名された。

 BANは、廃棄物の輸出入を厳格に強化すると約束した最近の日本の声明は”大いに誤解を与える”と述べた。

 BANは、日本が1995年のバーゼル条約修正案を批准する意図は全くないということはよく知られていると主張した。仮にバーゼル条約修正に合意しても、日本は未だにその廃棄物を中国のような国に投棄しているとBANは述べた」。日本はまた、バーゼル条約は廃棄物を含む船に適用されないと主張して有害廃棄物を運ぶ船を禁止しようとしている条約に対して強力にロビーイングを行っているとBANは述べた。

 BANは東京における廃棄物会議(訳注:10月30、31日、11月1日 アジア3R会議)においてJPEPAに関する懸念表明を発表した。その声明はフィリピンにおいて環境団体エコウェイスト連合によって発表された。

 ”バーゼル条約の責務を様々な分野で攻撃している日本は、JPEPAに非常に疑わしい意図を持っている”とBANは述べた。

 ”実際に、廃棄物の自由貿易を抑制するために設計された既存の法律がこの協定の中に見出される廃棄物の関税低減という攻撃にさらされている。この協定から全ての廃棄物が削除されるまでこの協定の批准を阻止するために速やかに行動が起こされなくてはならない”とBANは述べた。

 BANは、”フィリピンの上院と日本の議会は廃棄物の全てのリストが関税低減条項から完全に削除されるまでこの協定の批准を拒否しなくてはならない”と述べた

 マニラの日本大使館は、10月30日(月)の声明の中で、日本が有害廃棄物をフィリピンに輸出するのではないかという”誤解があるように見える”と述べた。
 日本は厳格な輸出入管理を実施しており、”フィリピンを含む他国の政府がそのような輸出を承認しない限り、有毒で有害な廃棄物をそのような国に輸出することを許さない。”

 BAN代表ジム・パケットは日本大使館の声明は誤解を招くものであり、”言外に真意を表している”と述べた。

 日本は厳格に輸出入管理法を実施すると言っておきながら、関税リストから廃棄物を削除しようとせず、開発途上国にどのような種類の廃棄物をも輸出することに関心がないと言っていないと、ジム・パケットは述べた。

 ”事実は、JPEPA はフィリピンの国内法より上位に位置する条約であるというこである・・・日本のこの記述の削除の拒否、及び開発途上国への廃棄物貿易の放棄の拒否は多くを語っている”とパケットは述べた。

 BANは、その声明の中で、条約は一旦批准されてしまうと国内法と同等となり、締約国は条約と国内法の矛盾をなくそうとしてきたと述べた。

 ”この事実は、一体全体なぜ廃棄物がこの協定(JPEA)に含まれているのかについての疑問を巧妙にはぐらかしている。もし実際にそれらが矛盾であり又は関連がないのなら、それらの廃棄物がこの協定に含まれなくてはならない説得力のある理由は何もない”とBANは述べた。

 10月25日のアロヨ大統領へのメモの中で、エルミタ外務長官は、”JPEPA は両国政府が必要とする法的手続きが完了したことを伝える外交文書を交換してから30日後に発効する”と述べた。

 同メモは、通商産業省、通関当局、国家経済開発当局、知的財産当局、予算管理省、関税委員会、及び公正委員会(省)は”批准に合意した”と述べている。
 同メモは、JPEPA が発効すると、フィリピンから日本への輸出のほとんど95%が関税ゼロ対象となり、両国はほとんど全ての産業製品を発効後10年以内に関税を除かなくてはならないことを加えた。

 ”フィリピンのサービス業者の日本市場への参入は強化され、限定された例外を除いて非差別的待遇が保証される”と同メモは述べている。

 ”フィリピン人の看護士及び介護士の日本への受け入れのための公式な合意が確立されるであろう”と同メモは付け加えた。”

 エルミタ外務長官は記者らに彼は大統領からこの通商協定が上院による批准を必要とするかどうか大統領の確認を得る必要があると述べた。

 エルミタ外務長官は大統領が協定書の見直しを指示したということを否定し、同協定は有効であると述べた。

 ”JPEPAを見直すというような指示は知らない。署名された9月9日から10月9日までで、すでに30日経過しているので、すでに発効している。だから大統領の見直しの指示など知らない”とエルミタ外務長官は述べた。

 上院の外務委員会議長のミリアム・ヂフェンソールサンチアゴ上院議員及び他の上院議員らは、通商協定は発効するには上院の批准手続きが必要な条約であると述べた。

 ”私はダブルチェックをしなくてはならないが、あなたが言うように批准用に上院に提出しようと思う。さもないと上院がわめくから”とエルミタ外務長官は記者会見を締めくくった。

 彼はまた、”我々の法に反するどのようなことも許されない。JPEAにそのように書いてある。我々は環境法を持っている。我々は、我々の環境法の条項に違反することはできない。”


訳注1:
BAN/GAIA/GP SEA 共同声明 2006年10月30日/日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)の有害廃棄物貿易自由化条項に関する懸念と勧告(当研究会訳)


化学物質問題市民研究会
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