kaerubungei

飯田　かなりエキセントリックな本だよね。

米光　初心者にもわかりやすく憲法を解説しているプレーンな本かと思って手に取ると、
びっくりする。
『北斗の拳』のカットがいっぱい使ってあって
「日本国憲法」が死んでいるとか生きているという発想はおもしろかったけど。

飯田　小室直樹だからね。
第10章「ヒトラーとケインズが20世紀を変えた」で
12章が「角栄死して、憲法も死んだ」。
同じ1章分を裂いてるのってバランス悪いよ。

麻野　オレは小室直樹好きなんで、この本はすぐ買った。
言い切っちゃうとこがおかしくていいんですよね。
なんか文体が講談みたいでおもしろいし。
この本はシマジが出てくるからちょっと違うけど。

米光　合の手役ね。一応編集者ってことになってる。

飯田　シマジがバカなことを言って
「やれやれこれだから編集者というものは世間から尊敬されないんだ」
とかやられる。この本は編集者批判、マスコミ批判もすごい。
そんなシマジが田中角栄のことになると急に饒舌になって
「なにせコンピュータ付きブルドーザーっと言われてたんでしょ？」
とか言うんだよね。

米光　きっとそのへんがいちばん書きたいんだよ。
ゲーム化するならそこなんだろうな。

飯田　小室直樹の思想をそのままゲームにする。

麻野　いいねえ。
オレやりたい、つくりたい（笑）。

飯田　今までゲームは、イデオロギーのあるものに対して腰が引けすぎていた。
われわれの思想信条とは関係なく、
一個人の主張に則って、偏った思想のゲームをつくってもよいのでは？

米光　じゃあやっぱり
10章までの議会政治の歴史とかの教養部分はばっさり切って、
12章からのスタート。
とすると、プレイヤーは角栄？

飯田　角栄が官僚、国民、議会とうまく関わってまとめて
日本国憲法が死なないようにコントロールしていくゲーム。

米光　あとで眞紀子に引き継ぐ（笑）。
いくらうまくやっても寿命がきちゃうから。

飯田　１回倒れても真紀子で挽回できるところがいい。
ゲームの3分の2くらいのところにオープニングがある（笑）。

麻野　角栄が死んだらオープニングなの？　
まあ、マトモに考えると、権力とその抑制がテーマになってる本だから、
それを軸にした歴史シミュレーションゲームにするのが
正当派ではあるんだろうね。

飯田　でも最初の方、テンション低いんだよ。
シマジもおとなしいし。
角栄出てくるとイキイキしてきちゃって。

麻野　いっそシマジを活かす？　
プレイヤーはシマジで、
小室直樹にほめられたりけなされたりするってのは？

飯田　それはありだな。
「ときめかないメモリアル」だ（笑）。

麻野　そうそう、「ときメモ」パターン。
1週間とか期間があって、
プレーヤーであるシマジは憲法とか権力について勉強する。
で、下校途中に小室先生とぶつかって会う。
そこで交わされる会話によっては、木の下で告白されたり（笑）。
もう、単純に小室直樹のゴキゲンを取るゲーム。最後に「痛快じゃ！」と言わせてそれでエンディング。

飯田　ダメだと「全然わかっとらん！」って怒られる。

麻野　小室ファンなら買いますよ、オレは買うな（笑）。
絵はやっぱり『北斗の拳』の原哲夫で。

米光　原哲夫の描いた小室直樹の顔がいっぱい出てくるの？　
怖いよー。

麻野　シマジは小室先生を誘うんですよ。
喫茶店行ったり、公園行ったりして好感度をどんどん上げて行くと……。

飯田「痛快じゃ！」って顔がメロメロになる。

米光　メッセージが出て「小室の目はうるんいでる」。

麻野　本に書いてある質疑応答をベースにして、
小室先生にどうツっこむかで評価が上下する。
正解ばっかりでもダメで、「65点のキミが好きだ」
とか展開は複雑（笑）。

飯田　アイテムに角栄とか三島由紀夫の写真があって、
出すタイミングが難しい。
「ここは角栄じゃないんだ！」とか怒られる。
まさに小室直樹のキャラクターを活かしたゲームになってきました。

麻野　クライマックスはなんだろうな。
合宿もあるはずだし、２人で（笑）。
あ、ライバルがいてもいいな。

飯田　ゼミの合宿中の話だ。

麻野　いいね。
ライバルが先に「痛快じゃ！」って言われちゃうと
もう一度始めからやり直し。

飯田　フロも入るよなあ。
「拭いてくれんかの！」（笑）

米光　濃いなあ。

飯田　女の子と仲良くなるとすごい怒られる。
「男女7歳にして席を同じうせず！」

麻野　そんなこと言ってないよ！

米光　イメージだけで言ってるな？（笑）

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『鳩よ！』2001／9月号掲載　

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