challenge.2

歩留まりよく、安く作って
大儲けできるゲームにしようよ

今月のテキスト
『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン著 門田美鈴訳・扶桑社/838円
『バターはどこへ溶けた?』ディーン・リップルウッド・道出版/838円
「古いチーズに固執せず、新しいチーズを求めてポジティブに生きて行こう!」という大ベストセラーの啓蒙本としての独特の構造が、ゲ−ム化にあたっての要となった。ついでに「新しいバタ−を探してるうちに何か大切なものをなくしてませんか?」と問いかける後発のパロディ本のゲーム化にも挑戦。

 

 

 


 

 









飯田
 これは『DOOM』ですよ、3Dダンジョンゲーム。
ネットワークでチーズを探して走り回るんだけど、
壁にいろいろ書いてあるの。

米光 そのまんまやん!

飯田 だって設定が迷路だし。
しかし、こういうものが売れるのかあ。

米光 構成が凄いよね。94ページの薄さなのに
「チーズはどこへ消えた?」って物語が始まるのが19ペ−ジ目で、
71ページ目で終わってしまう。
他の3分の1は「この本はすばらしい!」っていう自慢話なんだよね。
企業で配りなさいとかお友だちに見せなさいっていう博士の言葉、
そして同窓会という読者の目線になって。

麻野 驚いた。
ひっくり返りそうになった。
話が終わったらみんなで席を変えて、さあ、語り合おうという。

米光 そう。みんなで読んだら会社が良くなった、
じゃあ、家に帰って夫とか子供に読ませようって。
実際に
企業でまとめ買いして社員に読ませてるところもあるらしい!

飯田 これはメタ文学、ハイパーモダンメタ文学だよ。
三島賞あげたいくらいだなあ、
中原昌也に匹敵するよ(笑)。

麻野 もの凄く安く効率的に作って、
大儲けするゲームにしないと。

飯田 CD3枚組にしようよ。
この本は、凄い親切さ……物語の読み方から売り方まで
全部書いてあるというメタ構造が大切なわけだから、
ゲームも洗脳のプロセスをそのままやる。
章立てが変わったところで次の盤にうつらせる、
ここが結構重大だと思うんですよね。
だから無駄に3枚使う。

米光 2枚目の物語部分を
3Dダンジョンゲームにすればいいんだ。

飯田 どういうふうにこの迷路を通っても、
特定の壁に来たら、
メッセージが順番通りに現れ、順番通りに啓蒙されるシステム。
でも、ユーザーにエディタを解放もしたいですよね。
自由に文言を変えられる。
相田みつをとか326とか、好きなバージョンでできる。
そうしておけば
『バターはどこに溶けた?』バージョンもすぐ制作できるし。

麻野 同じフォーマットで作るのね。
『バター〜』もCD3枚組。
内容のみならず
フォーマットをそのままパロディにしたアイデアに敬意を表して。

米光 1枚目には、
『チーズ〜』を褒めたたえるホームページの作り方とか、
推薦メールのサンプルも入ってる。
ここにあなたの名前を入れて、お友だちに送りましょう(笑)。

麻野 ビル・ゲイツの推薦ムービーも欲しいね。

飯田 おお、似合いそう!

麻野 開発費は
そこにみんなかけてもいいんじゃない?

飯田 冒頭に出て来てほしいな、字幕付きで。
「こんにちは、ビル・ゲイツです」

米光 チーズ持ってるんだよね。

麻野 で、外人っぽくうしろにポンって投げて
「これがもし、なくなったら……」って続くの(笑)。

米光
 3枚目で チーズの山を背負って再登場。

飯田「こんなに食べ切れないよ」(笑)。

麻野『バター〜』には、Mr.オクレが出ててね。

米光 なんでまた?

麻野 いや、誰でもいいんだけど、
金持ちにならなそうな、寝てるだけがいいみたいな人がいいな。

米光 プログラマーとデザイナーと企画とで3人。
そのぐらいで作っちゃいましょう。

飯田 2ヶ月かかんないかも。
歩留まりいい仕事(笑)。
でもほんとはここまで自己完結したものって作れないよね。
解説と批評とコンテンツをセットにしてパッケージするっていうゲームは今までないでしょう。
あったらイヤだし。

米光 そこまで割切れない

飯田 勝ち組に入りたければそうしろと。
扶桑社ってこういうのうまいよね。
『国民の歴史』もそう
。なんというか「批判上等!」みたいなスタンスで作っている。

米光 マーケティングが凄い。
帯もむちゃむちゃ変えてるよね。
最初は確かビジネスマン、次がOL向けって感じで、
ターゲットをシフトさせて展開したり。

飯田 わかってるなあ。

麻野 最初、
この本のメイキングをゲームにしても面白いかなとは思った。
扶桑社側からのゲーム。
『バター〜』を訴えるところまでの(笑)。

飯田
 本そのものに対する絶望がベースにありますよね。
もうここは荒野だ、文化も何もないという。
ゲームはこの境地に達するまでにはあと3回くらいクラッシュしないと。
今、1回目?(笑)。
でも、まだ夢のある世界だから。
出版のほうが歴史が長い分、絶望している。

米光
 両方まともに読んじゃった人はどうなるのかな。

麻野 案外平気なんじゃない?
「ためになった!」ってメシ食って終わり(笑)。

 

ゲーム企画書へ

『鳩よ!』2001/8月号掲載 

 

return