challenge.11(最終回)

やばい! このままでは
エクセルにしかならない本だ

今月のテキスト
『世界がもし100人の村だったら』池田香代子再話、C.ダグラス・ラミス対訳 マガジンハウス/838円
世界貿易センターテロ直後、世界中に広まったEメールをまとめた1冊。「世界がもし100人の村だったら、52人が女性です 48人が男性です」……と世界情勢を端的に表現することで平和へのメッセージを込めたベストセラーのゲ−ム化に挑戦。

 

 

 



 


麻野 しかし「世界が100人の村だったら」って
切り方はわかりやすかったね。

飯田 現代を知るって意味では
『地球白書』とかよりこっちのほうがわかりやすい。

麻野 でもこの内容だったら、エクセルになってしまう。

飯田 ゲームの目的を一体何にしたらいいんだろう。

麻野「(100人のうち)33人がキリスト教徒です」
へえ、意外と多いなってびっくりするけど、
事実の羅列だからスト−リ−性はないし。

米光 わかんないから、もうギャルゲーにしちゃおうか。
回りがみんな妹で「世界がもし100人の妹だったら」……わ、ウソです。ごめん(笑)。
ええと、本のデータをベースに箱庭的なシミュレーションにすることはできるよね。
最初は100人。1年ごとに1人増え、当然どんどん資源が足りなくなる。
そこをうまくバランスを取っていく。

麻野 でも、すべての状況の人を同数にするのが
いいってことでもないしなあ。

飯田 目的はユーザーに委ねてもいいかもしれない。
100人全員を白人にするのが理想だったらそうさせる(笑)。

麻野 最後の最後まで抵抗する黒人とかおるんやろな。

米光 プレイヤーは、この中でも最も悲惨な境遇にある人間で、
どう生き残るかというのは? 
安全な水は飲めない、危険にさらされている、自由に発言もできない。

麻野 文字も読めない、と。最悪やな。

飯田 101人目の赤ちゃんとして生まれてきてね。

米光 サバイバルして、富める側になっていく。

飯田 皮肉が効いてていいかもね。
最終的には肥ったアメリカ人になる。

米光 うわ、うれしくねー。

麻野 プレイヤーは100人の上にお釈迦様のように、 蜘蛛の糸を垂らすのは?(笑)
UFOキャッチャーみたいな感じ。
すんごい恵まれてて英語喋ってるヤツをいきなり掴みあげて、ベンガル語の地域に移す。
逆に水も飲めないような地域の人を、コンピュータ持ってるところに連れて行ったり。
そこで起こるあたふたを上から見て楽しむ。

米光 邪悪だなあ。
きっと100人の中にはビル・ゲイツくんとかいるんだよね。

麻野 ヤツはどこに置いても成功するのかな。
ゴミ捨て場とかに連れてってもそこでなんとか富を得ていくんだろうな。
くそー、なんか腹立つ。

米光 しかもその富は、ほとんど回りに拡がらないんだよね。
この本でオレの感情パラメータがいちばん上がったのは
「すべての富のうち6人が59%をもっていてみんなアメリカ合衆国の人です」
ってところだった。

飯田 それじゃビン・ラディンも出てくるわけだよ。

麻野 アメリカが嫌いな人だったら、
100人中88人はいると思うよ。

飯田 嫌米っていう市場が確実にあるから、
そこに売るゲームにしようか。

米光 でも買えない人も多いはず。
コンピュータもってるのは「100人中2人」だし。

麻野 ものすごい低いスペックの中古パソコンで動くようにしておかなきゃ。

飯田 OS「Linux」で。

麻野 WINDOWSで動かそうとすると爆発する(笑)。

米光 ……どんどん本の考え方から遠ざかってるね。

麻野 社会構造を何で変えられるかというのが問題。
プレイヤーは何を道具にすればいいのか。政治なのか経済なのか思想なのか。
反戦、反共運動とあったけど、テロ以降の社会には何が有効なのか。

飯田 100人全員が幸せそうに笑ってるというのは、
どうしても無理なんだよね。

麻野 飯田さんのつくった「アクアノートの休日」ってゲームあるじゃない? 
ああいうのはどうかな。
プレイヤーに特に目的はない、手も下さない、見てるだけっていう。

飯田 で、君はどうよ? どんな気分よっていう?

米光「ぼくは栄養が十分でなく、水もなくて」という人が居る。
反対側へ行くと
「ぼくは世界の80%のエネルギーを使ってるよ、そんな6人のひとりだよ、はっはっは

麻野 当然アメリカ人さ!

飯田 肥ったアメリカ人さ! いいかも。告発系ゲームだ。

麻野 本と考え方は同じ。

米光 後は自分で感じろ、考えろと。
キャラクタはデフォルメしたポリゴンでわかりやすくしたいね。

麻野 パソコンを起動するたびに、その100人の生活が見れる。
毎日状況が違う。

米光 いろいろ喋りかけてくる。こっちからも質問ができる、
「シーマン」みたいに。

飯田 それがみんな妹でもいいんじゃないですか?(笑)

麻野 キリスト教の妹、仏教の妹、白人黒人、みんな妹。

米光 瀕死の妹、レイプや拉致に怯える妹がいて。

飯田 金持ちで肥った妹もいる(笑)。
で、ひとりひとりと面談していくと、なにか感情が芽生えるじゃないですか。
この妹はかわいい、助けたい、とかこの妹は好きじゃないとか。
それを入力していくと最後に「あなたはこういう人です」って占われる。

麻野 そんなオチが待ってるとは(笑)。

飯田 オレのイチオシの妹は今日も生きているだろうか。
まさに「世界がもし100人の妹だったら」だ。

麻野「2ちゃんねる」にスレッドが立ってるかもな。

米光 ああ!「6人がメガネっ娘で」とかマニアックな(笑)。
チクショー、やってそうだあ!!

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『鳩よ!』2002/5月号掲載 

 

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