challenge.9

色々なゲームになりそうだけど
本と同じくらいは売りたいよ

今月のテキスト
『新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論2』小林よしのり 幻冬舎/1900円
さまざまな反論本が出るなど物議を醸した『戦争論』の続編。同時多発テロから僅か2か月後の発行というタイムリーさも手伝って、たちまちベストセラーに。「ずいぶん字が多くなったな〜」と読むのに難儀した模様の3人。今回はいろんなゲーム化案が飛び出しました。

 

 

 


 

 

 

米光 この構造を見つけたのはエライよね。
「ごーまんかましてよかですか?」と言ってしまうことで、
今までの展開はともかく、結論は飛躍しますよって宣言しちゃう。
だから、論理が破綻してても白黒付けたっぽく読ませられる。

麻野 本人は破綻してるつもりないんだろうけどね。

米光 かもね。今の中高生とかが読むとスカっとするんだろうね。
時代に閉塞感をもっていたり、親の世代を汚く感じてるような。
思春期ってそうでしょ? 
大人にならずにそのまま老人になりたいよとか言ってたりするでしょ。
この本は、今のじぶんがダメダメなのも、世の中が悪いんだよと言ってる感じだから。

飯田「ワシ」以外はみんなカタカナの「サヨク」で敵、マスコミもみんな。
よしりんに言わせれば「読売」「サンケイ」ですらサヨクなんですよね。
その孤立感はすごい。

麻野 李登輝と中学生の「賢い」読者以外はみんなワルモン。

米光 大人たちが過去の日本を卑下してるせいで
若い僕たちまで汚されていくんだーということにして
閉塞感を打破しようとしているんだよね。
「水戸黄門」的面白さ。
旅してたら善良な村人たちが虐げられてて、
よしりん様がオトナ悪代官を最後に倒してよかったねという感覚でしょう。

麻野 ロ−ドム−ビー的なゲームにしますか。
よしりんには最初はたくさんの仲間がいる。
「ジャンプ」とは逆で、敵が味方になるんじゃない、
旅をしてるうちに仲間と険悪になっていく。
友が敵になっていき、どんどん孤立していく。

飯田 ジャンプの法則は「友情、努力、勝利」だっけ?。

麻野 じゃあ逆で「敵意、怠慢、敗北」(笑)。
だめじゃん、全然スカッとしない。

飯田 オレはシューティングかなあと思った。
激ムズシューティング。Bボタン連打でゴーマニズム砲! みたいな。
先に進めば進むほどひとりぼっちになっていく。
薬害エイズの川田龍平「新しい教科書をつくる会」も、みんな離れて敵になる。
画のタッチも急にすごい邪悪になって(笑)。
よしりんの絶望的なまでの孤立感に似合うと思うんだけど。

麻野 クイズシューティングにするのはどう? 
本を読んでないと正解がわからない。「南京大虐殺の犠牲者の数は?」。
一瞬にして解答しないとダメ。

飯田 それは新しいな。
トランスバイブレータと対応させて、正解しても間違ってもビリビリくる。
で、よしりんに「ビリビリしたかっ?」って聞かれる(笑)。
「もっとビリビリするところに行くぞ!」と導かれて、
第二次世界大戦とか台湾問題とかいろんなトピックに挑戦していく。

米光 よしりんの思想を伝えるんだったら、シミュレーションもいいよね。
PCで「バランスオブパワー」ってゲームあったじゃない。
世界情勢が全部入ってて、核戦争が起きてゲームオーバーにならないように、
ある国の首相になって政治をやっていくゲーム。
作者が本を出してて読んだんだけど、
テロの起こる可能性とか、世界情勢データは根拠のある計算式になってるの。

麻野 計算式って作り手の思想が入るもんね。

米光「バランスオブパワー」にはゲームとしての快感は殆どないんですよ。
ちょっと同盟を結ぶと、他の国が怒って核戦争。
気を遣ってヘトヘトになって楽しむどころじゃない。
でもこの本を元にすれば爽快感のあるシミュレーションができそう。

麻野 シミュレーションだったら、
あるいは「信長の野望」ならぬ「よしりんの野望」にして(笑)、
第二次世界大戦に勝つ。「こういう理由で便衣兵は殺してよい」というよしりん的理論武装があった上でね。
ABCD包囲網をかいくぐって勝ってゲームをクリアすれば、
よしりん的正しい日本の姿が見れる。
人々はみな礼儀正しくて国のために命をかける。
アメリカ人は悔しがってて、東南アジアの人たちは、日本人を英雄視する。

米光 プレイヤーはよしりん自身になると。

麻野 二重構造にしてもいいな。
こんな日本ではいかん!と過去に行って間違いを糺して戻ってくると、
よしりんの理想の日本に近付いている。
過去と現在を往復する。

飯田 それはいい。パラレルワールドだ。
糺すたびに現在のよしりんの姿がステータスアップしていっても面白い。

米光 オチとしては『戦争論』とか出す必要がなくなってて、
真逆なことを主張してると。

麻野『人権論』とか書いて、過激だと言われてる(笑)。

米光 あと、「南京大虐殺」を模擬裁判で検証する章があったよね? 
あれもそのままゲームになりそう。

麻野 GBアドバンス「逆転法廷」みたいなアドベンチャーね。
それも面白そう。
どんなゲームにするにしてもこの本くらいは売りたいよね。

米光 すごいんでしょ、何十万部って売れてるらしいよ。

麻野飯田 ええーっ!

麻野 じゃあ、本と抱き合せで売ろう。
ゲームは、表紙をジグソーパズルにしとくだけでいいよ。

米光 急に姑息なことを(笑)。

飯田 そんなに売れるんだったらオレ、
よしりんになってもいいな(笑)。
ひとつ不思議なのは三島由紀夫が出てこないことなんだよね。
右翼も左翼も味方じゃなくて、よしりんの会いたいのは死んだ「カミ」だけでしょ。
どうして三島に言及しないんだろう?

麻野 知らないんじゃ?

飯田 知らないのか三島!
それは盲点だったよ(笑)。

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『鳩よ!』2002/3月号掲載 

 

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