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第2稿と第3稿の比較


フェルディナント・レーヴェ
 Part1で述べたように、ウィーンのグートマン社からの1889年の出版に際してはF・レーヴェの手による改竄稿が用いられました。この、いわゆる第3稿と第2稿との違いは、次の2点です。

1.第3・4楽章の一部をカット
第3楽章:
1回目のスケルツォの最後4小節をカット。トリオの後の繰り返しで25小節目から92小節目までの68小節をカット、245小節目の次に12小節のコーダを付加。差し引き全体で74小節カット。
第4楽章:
練習記号PからQまでをカット。そのままではQにつながらないので、Q全体を移調して新たに「作曲」、RからSまでをカット。トータルで36小節のカット。
Pといえば、Part2アナリーゼでおわかりのように、再現部の第1主題ですよ。それをカットするとは、大胆なことをやったものです。

2.オーケストレーションの改変
「ワーグナー風」のサウンドにするために、あらゆる箇所で音を重ねたりオクターヴ上の音を加えたりあるいは、第1楽章Pの遷移的なフレーズ(譜例5)のように、
Vnから木管に楽器を変えるようなことも行っています。
第3稿の譜例

特に第4楽章ではピッコロとシンバルを追加したり、新たに
14箇所にティンパニーを加えるなど、より効果的に盛り上げる「工夫」がなされています。ノヴァーク版を使用しているジュゼッペ・シノポリが、329小節目で思わずティンパニーを入れたくなってしまう誘惑に駆られる程、魅力的なオーケストレーションではあるのですね。後にマーラーがこの稿をさらに短くして、演奏会でたびたび取り上げています。詳細はこちらで。

(2013/8/29追記)
ベンジャミン・コースヴェットという音楽学者によって、この「第3稿」には作曲家の改訂の意志が反映されているとされ、彼の校訂による楽譜が「1888年稿」として、国際ブルックナー協会の全集の一環として、2004年に出版されました。最近は、この「コースヴェット版」を用いて録音を行っている指揮者も出始めています。

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