出版以前
ベーレンライター社がノーマン・デル・マーの校訂によるベートーヴェン全集の出版を開始したのは、1996年の12月でした。しかし、それ以前からデル・マー版による(とされる)演奏は行われており、CDも出ています。
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全集盤 ロイ・グッドマン、モニカ・ハジェット指揮 オスロ・カテドラル合唱団 ハノーヴァー・バンド Nimbus(86〜88年録音) |
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全集盤 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 モンテヴェルディ合唱団 オルケストル・レヴォリュショネール・ エ・ロマンティーク Archiv(91〜94年録音) |
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第九 クラウディオ・アバド指揮 スウェーデン放送合唱団、 エリック・エリクソン室内合唱団 ベルリン・フィル Sony Classical(96年4月録音) |
出版以後
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ベートーヴェン/交響曲第5番・第6番
デイヴィッド・ジンマン指揮 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 (ARTE NOVA 74321-49695-2) |
「ベーレンライター版による世界初録音」と銘打った、ベートーヴェンの交響曲第5番と第6番のCDです。
ドイツのベーレンライター社から新しく出版されたノーマン・デル・マーの校訂によるベートーヴェンの交響曲全集については、以前から「かいほうげん」紙上でご紹介してきましたので、みなさんご存じのことと思います。実は、このベートーヴェン全集の楽譜は、今のところ第3番、第8番、第9番の3曲しか出版されておらず、ここに録音されている2曲とも現時点では実物の入手は不可能です。(第6番は今年の末、第5番は来年の末に発売予定)したがって、実際に譜面を見ることができませんので、確定的なことは何とも言うことはできませんが、今までの演奏とはずいぶん変わった音が聞こえてきますので、ちょっとご紹介してみましょう。
私たちが最近演奏した「田園」から、その顕著な実例をお目にかけます。
ただ、正直言ってこれらの変更にはちょっとびっくりしました。というのは、このデル・マー版というのは、前にも書いたように、J・E・ガーディナーによる演奏などですでに使われており、CDも出ていますが、そこではこんなとんでもないことはやってはいないのです。実物を見るまで断定はできませんが、これらの変更は実際に楽譜に書いてあるわけではなく、指揮者のジンマンが「原典版の精神」にのっとって自由に装飾をつけた結果なのではないでしょうか。
しかし、「田園」第3楽章のHrのスフォルツァンドについては、どの版にも無いような不思議な吹き方をさせていますので、もしかしたらきちんと記載されているのではないかという気もします。
どういう事かというと、sfの場所が
小節 | 257 | 258 | 259 | 260 |
ブライトコップフ版(現行版) | sf | sf | sf | sf |
ペータース版(昨年のニューフィルの演奏) | sf | |||
ベーレンライター版?(ジンマンの演奏) | sf | sf |
というように私には聞こえるのです。
まあ、もう1年もすれば印刷譜が入手できるのですから、その時にはまたちゃんとしたレポートをお届けしましょう。それまでには、また別の曲が発売になっているかもしれませんし。
最新情報
(ARTE
NOVA 74321 56341 2)
その後、ジンマンの新しいCD(97年12月録音)が出ました。7番と8番が入っています。
ベーレンライターの楽譜は第1番も出版され、まもなく第2番も出るはずです。(なりゆき上全曲を予約してしまったので、入荷と同時に手元に届きます。)このCDについての詳報はこちらをご覧下さい。