火曜日はチーズデー。

(26/2/1-26//)

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2月1日

ZENDER
Schubert's Winterreise
Allan Clayton(Ten)
Nicholas Collon/
Aurora Orchestra
SIGNUM/SIGCD964


2019年に鬼籍に入られたドイツの現代作曲家ハンス・ツェンダーは、1993年にこのシューベルトのリート・ツィクルス「冬の旅」の再構築版を作りました。それは、翌年、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツのソロに、ツェンダー自身が指揮をしたアンサンブル・モデルンのバックで録音され、大反響を招いていましたね。
それ以後、プレガルディエン親子の録音などもありましたが、今回は1981年生まれのイギリスのテノールで、オペラではヘンデルからブレット・ディーンまでを歌い切っているというアラン・クレイトンのアルバムが登場しました。録音されたのは2024年の3月です。
バックはニコラス・コロン指揮のオーロラ管弦楽団のメンバーです。その編成は、ブックレットによれば、弦楽器がファースト・ヴァイオリンからコントラバスまでそれぞれ1人の5人、フルートとピッコロ(+アルトフルート)が2人、オーボエ(+コールアングレとハーモニカ)が2人、クラリネット(+バスクラリネットとハーモニカ)が2人、ソプラノ・サックスが1人、ファゴット(+コントラファゴットとハーモニカ)が2人、ホルン、トランペット(+コルネット)、トロンボーンが各1人、打楽器(+ハープ、アコーディオン、ギター)が7人の、計24人です。
ただ、プレガルディエン盤ではヴィオラが2人となっていますし、スコアでの指示(↓)もやはり2人なので、これは何かの間違いでしょう。些細なことです。
久しぶりにこの曲を聴いたので、その内容はすっかり忘れていました。なにしろ、1曲目の「Gute Nacht」が始まっているはずなのに、スピーカーからは何の音も聴こえてこないものですから、配線の点検をしてしまいましたよ。もちろん、それは超ピアニシモでタム・タムの表面を指でなぞっている音なのですが、ヘッドフォンでないと最初の音は気付かないほどの弱い音でしたからね。
それは、オリジナルのピアノ伴奏のリズムをそのまま模倣しているのですが、それがどんどん発展していって金管楽器なども加わり、とてつもなく長い前奏が続きます。と、そこにヴァイオリンがオリジナルの前奏を奏で始めると、弦楽器だけの穏やかな世界になり、そこでやっとテノールの登場です。これは、オリジナルとは全く変わらない雰囲気の音楽、クレイトンの澄み切った声が心地よく響きます。
そんな感じで、2節目までは、ところどころ変なアクセントはあるものの、一応ノーマルな姿で進んでいきます。それが3節目に入って、「Lass irre Hunde heulen vor ihres Herren Haus!」という歌詞の部分になった途端、その「Hunde(犬)」に反応して、突然金管が激しい犬の鳴き声を模倣すると、歌手も一緒に叫び始めます。そのあとではもう「歌」はなくなり、「シュプレッヒゲザンク」、つまり「ラップ」が始まり、バックも大騒ぎ、太鼓は鳴るわ、ピッコロはとんでもない音程で叫ぶわと、カオスに突入です。その後は、長い間奏でなんとか平静に戻って、最後の4節がしめやかに歌われ、曲が終わります。
まあ、こんな感じで、もう何度も聴いた曲のはずが、全てに新しい発見があって、まさにサプライズの連続です。というか、全24曲を聴き通すには、かなりの体力が必要だな、と感じてしまいましたね。
最後の曲「Der Leiermann(ハーディ・ガーディ弾き)」などは、前奏のドローンの模倣の部分が、まるで雅楽のような雰囲気で始まります。管楽器が「笙」のように音を重ねて、クラスターを作っているのですね。そんな東洋風な雰囲気に乗って、リフに乗って、歌が始まります。そして、ここではそのリフを、エコーのように別の楽器が追いかけています。
それが後半になると、そのリフが別の調になって現れます。でも、歌のキーは変わりませんから、そこは我慢して歌い続けますが、バックは執拗に違うキーで攻めてきます。そんな挑発に頑として戦っているソリストは、本当に大変だな、と思ってしまいますね。
そして、歌い終わったところから、今度はリゲティの「Atmosphéres」のようなクラスターが始まり、それが長い時間をかけてフェイド・アウトしていくのです。感動的ですね。

CD Artwork © Signum Records


おとといのおやぢに会える、か。



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