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(成人指定)インランディア....渋谷塔一

(00/9/27-00/10/7)


10月1日

XENAKIS
Ensemble InterContemporain
Elisabeth Chojnacka(Cem)
Ensemble Xenakis
ERATO/8573-84254-2
3大テノールはカレーラス、ドミンゴ、パヴァロッティ。花の中3トリオは昌子に淳子に百恵。それに、マスターの日記によりますと、ニューフィルの3人娘はあっチャンとりっちゃんとさっちゃんだそうですね。こんな具合に、3人を一まとめにして扱うと、何かと便利なもの。そこで登場するのが、メシアンの3大弟子、カールハインツ・シュトックハウゼン、ピエール・ブーレーズ、そして、ヤニス・クセナキスというわけです。
同じ門下からこれだけ個性も、将来の活躍拠点も違った弟子が輩出したのですから、オリヴィエ・メシアンという人は大したものです。ただ、鳥の声だけを採集していたのではなかったのですね。
この3人の中では、私としてはもっとも好きなクセナキスの、90年代初めにリリースされた2枚のアルバムが、ワーナーのULTIMAというバジェットシリーズで出直りました(ブーレーズも一緒に出ましたが、こちらはパス)。1枚目は、アンサンブル・アンテルコンテンポランによる小編成の室内楽。1965年に作曲された独奏チェロのための「ノモス・アルファ」を除いては、すべて80年代の曲。2枚目は、チェンバロのホイナツカを中心にしたもので、やはり80年代のものが主です。
初期のクセナキスというと、作曲にコンピューターを使って、ある法則にしたがって音を管理して、いわゆる「音の雲」というサウンドを聞かせていたものでした。今回のアルバムの中の曲は、そのような作曲上のノウハウを積み重ねた結果、もはやコンピューターを使わなくても自分の中にイメージした物を作り出せるようになった時期の作品なのでしょう。5060年代に見られたようなある種の厳しさみたいなものは影をひそめ、もっと内面的なものが音に現れるようになってきているような気がします。
「ノモス・アルファ」にしても、かつてジークフリート・パルムが録音していた、いかにも難しい曲を一生懸命弾きましたというような刺激的な演奏ではなく、長年にわたって演奏されてきたことによって、ふくよかさみたいなものが加わってきていると感じられてしまいました。
チェンバロを中心とした曲では、初演者であるホイナツカの肉体の一部と化している音の塊たちが、実に生き生きと動き回る様が、とても魅力的。打楽器のシルヴィオ・グァルダと共演した「コンボイ」での音色の多様性には、目を見張るものがあります。
かつては頭でっかちで多少難解と思われていたものが、歳月を経ることによって肩の力が抜け、とても聴きやすく変貌してきたように思えます。もちろん、誰にも真似の出来ないクセナキス独自の音は健在です。(それこそ「癖無くす」では何の個性もなくなってしまいますね。)

9月29日

WAGNER
Die Meistersinger von Nürnberg
D.Barenboim/
Bayreuther Festspiele
TELDEC/3984-29333-2
(輸入盤)
ワーナーミュージック・ジャパン
/WPCS-10584/7(国内盤 1012日発売予定)
おやぢの好きなものは、じつはシュトラウスとワーグナー。でも、シュトラウスについては結構紹介してきましたが、ワーグナーをきちんと取り上げるのはこれが最初かも。
何と言っても、彼の作品は長すぎます。特に、この「マイスタージンガー」は通して聴くと4時間半。それに、やはりオペラは画像も一緒に楽しみたいもの。音だけで4時間半を集中してるなんて、根性無しの私にはとても無理、と思っていました。しかし、聴き始めたらそんな心配はウソのよう。まあ、さすがに1回では無理でしたが、気がついたらたった2日で全曲聴き終わってしまいました。
これは、去年のバイロイトのライブ録音。御大ヴォルフガング・ワーグナーによる新演出が話題になった公演です。そのリハーサルの様子が、以前テレビで紹介されているのをたまたま見たのですが、バイロイトの上下方向に広がる舞台を生かした装置が印象的でした。そのときの断片的な映像が頭にありましたから、音だけ聴いてもある程度場面を思い浮かべることが出来たのでしょうね。
指揮は、ダニエル・バレンボイム。先頃、芸能生活50周年(!)記念のコンサートをやはりテレビで見ましたが、もうこの人はピアニストとしての生命は終わっていると思いましたね。頭の中で考えているものが、実際に音になっていないもどかしさ、つまり、テクニックの衰えを認めたくないために、あえて高度なことに挑戦するのですが、結局は失敗してしまうという醜さを露呈していたのです。その代わりといってはなんですが、指揮者としては近年ますます磨きがかかってきています(後頭部にもますます磨きがかかってきています)。ここでも、オーケストラから実に雄弁な響きを引き出して、最後まで芯の通った音楽を聴かせてくれていました。それに応えて、バイロイトのオケも特に金管はさすが、第3幕の前奏曲などは、とろけるような贅沢な響きです。
それから素晴らしいのは、ノルベルト・バラッチュに率いられた合唱。この合唱が出てくるだけで、舞台全体が引き締まって感じられるほどです。
歌手は、ホルのハンス・ザックスはちょっと重すぎ、逆にシュミットのベックメッサーは知的すぎるかも。ザイフェルトのヴァルターも、ヘルデンテノールとしてはちょっと物足りないところがありますね。写真で見るとかなり押し出しが強そうなのに、音だけ聴くとなぜか存在感が薄く感じられてしまいます。まるで、空腹で声が出ない歌手みたいに(減る出んテノール…あっ、固まらないで!)。
UNITELの製作ですから、そのうちDVDあたりで画像も出ることでしょう。そうなったら、そこらへんのところももう1回見てみたいものです。

きのうのおやぢに会える、か。


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