「ふう・・・」
「お疲れでございましたね。」
侍女の言葉に、オスカルは笑って答えた。
「主イエスが生まれたもう日に生まれるという大それた事をしでかした報いだ。甘んじて受けねばなるまい。」
「まあオスカル様、そのような事を!」
「誕生日の祝いが済んでも、これからしばらく・・・この箱の山の中身を確かめ、礼状を書かねばならないと思うとそんな気分になるよ。」
彼女は居間に積み上げられた贈り物の山を見ていった。
「執事さんのお話では、ほとんどご辞退させていただいたという事ですが・・・・」
「ああ、わかっている。毎年・・・少しは減っているのではと期待するのだが・・・・」
「昨年より・・・3個ほど・・・・減ったそうです。」
侍女は申し訳なさそうに告げた。
「・・・少しは善き方向へ向っているという訳だな。」
オスカルは苦笑した。
「まあいい。ところで・・・・セロー大佐から届いた品だが・・・・」
「はい。仰せの通りバルコニーに出してあります。」
侍女は窓の方を示した。
「ありがとう。後はわたしがするから、レモンピールとベルモットとグラスとカクテルの道具を一式と・・・それから、あと氷を持ってきて欲しい。それが済んだら下がってよいからね。」
「はい、それではすぐお持ちいたします。」

hard liquor オスカルは侍女が部屋から出て行くとすぐにバルコニーへ出た。
外は一瞬で身体を凍りつかせる様な痛い程の寒さで、彼女は木箱の中から1本を取り出すと急いで部屋へ戻った。
オスカルは、部屋の中で改めて壜のラベルを眺めると、嬉しそうに微笑んだ。
セロー大佐は、約束通り誕生祝いとしてジンを贈ってくれたのだ。
丁度その時、ドアをノックする音が聞こえ、先ほどの侍女が戻ってきた。
「申し訳ございません、オスカル様。実は・・・ベルモットを切らしておりまして・・・・明日10時には屋敷の方へ届くと、ジャンが申しておりますが・・・・・」
「1適もか?」
「は?は、はい!壜は全部片付けてしまったので・・・」
「・・・・・そうか・・・・・ああ!ご苦労だったね。もう休んでいいよ。」
「申し訳ありませんでした。それでは失礼いたします。お休みなさいませ。」
「おやすみ。」
侍女が出て行くと、オスカルは壜を見た。
ストレートで?それも悪くない。
しかし、2週間前の透明な黄金色の液体、あの味は・・・・・
「明日まで待った方が良さそうだな。」
彼女は呟いた。