初めのオスカルの印象は・・・・カミソリみたいに切れて冷静で皮肉屋で冷たいやつ。
でもすぐわかった・・・全然違うって事が。
この前だって、結局DVDは見ずにおれの宿題遅くまで手伝ってくれたし・・・
本当はやさしくて・・・シャイ。
それを隠す為に皮肉言ったりする。
それから、クールに見えるけど実はホット。
見た目とは全然違う。
本当に違うんだ。
そして・・・・気が強い。
ほんと!気が強くて!その上・・・・・負けず嫌い。

 誠がインラインスケートを持ってオスカルのところへやって来た。
 「お姉ちゃん。遊ぼうよ!一緒に青葉公園でやろうよ!」
 「零と行くんじゃなかったのか?」
オスカルは尋ねた。
 「ばか零はやだって!ママンは一人じゃだめだって。ねえ行こうよ。フラン。」
誠はオスカルの手を引っ張って言った。
オスカルは笑って
 「わかったよ。準備するから少し待って。」
と言って・・・それからおれを見た。
 「足のサイズは?」
 「28」
 「それなら、零のが使えるな。」
 「おれもするの?」
 「わたしもするんだ、当たり前だろう。」
オスカルはにやっと笑った。

その公園は珍しくインラインスケートをしてもいい所だった。
だから休日はかなりの人が集まってすごいらしい。
オスカルは小学生の頃、毎日のように来ていたらしいが、最近はほとんどやってないと言っていた。
でも、そんな風には見えない。
スケーティングのお手本みたいにきれいに滑る。
最初は誠が滑るのを2人で見てやったりしてたんだけど、人もいないし公園を一周して競争してみようという事になった。
オスカルはかなり自信があるようだ。
だけど、おれは・・・・

このスロープを下ればゴールだ。
でも、スピードは十分乗ってる、これならいける。
ジャッ!
さらに加速してスロープの横の階段の方へ突っ込んで・・・・空中へ飛び出す!
両膝を曲げ右手で左足をつかむ。うまく空気に乗れた!
滞空時間が伸びて・・・階段からずっと離れた誠がいる所あたりで着地、左足でブレーキをかけて止まる。

 「すごいだろ?」
おれは誠に笑いかけた。
 「飛んだ!1・2・3・4・・・12・13・14。14段!14段だよ!すごい!すごい!すごい!」
最後のスロープを滑ってオスカルが戻ってきた。

 「アンドレ!今飛び降りただろう!一歩間違えば骨折だぞ!」
オスカルは怒鳴った。
 「大丈夫、おれ5年間の実戦経験あるんだ。」
おれは笑いながらオスカルに言った。

 「実戦経験てなんだ?」
オスカルは不機嫌そうに聞いた。
 「寮生活の必需品。真夜中に買出しに行く時使う。」
おれは言った。

 「夜中にインラインスケートで道路を走るのか?アンドレ、そういう危険な事は・・・」
 「でも、寮をこっそり抜け出して買いに行くからさ。結構距離あるし、荷物もすごい沢山だし、急いで戻らないと見回りがやってくるし・・・それから回りはでかい公園に神社。夜は人通り全然ないし。だから少しぐらいは・・・いいかな?と。」

 「そして昼間持ち込めないような物を買いに行く。か?」
 「えっーと、それはまあ・・・それよりも!買出しの品物−菓子とか本とか・・・そういうもの賭けてクラスとか寮別対抗で競争とかする。」
 「滑れない人はどうするの?」
誠が聞いた。

 「大丈夫。体育でインラインスケートやらされるんだ。だから皆滑れる。」
 「で、見つかったらどうするんだ?ただじゃすまないだろう。」
 「まあね、3ヶ月間の外出禁止!危ないのはわかってるんだけどさ。ほんとおれ達って・・・・」
 「・・・・ばかな事に熱を上げられるくらい・・・・退屈してる・・・か?」

 「まあそんな所。でも、これってさ何処でも滑れるからおもしろいんだよな。階段の手すりの上とか、段差とかも、どんな急な坂道だって・・・家の前の坂道あるだろう?あれぐらいなら一気に降りれる。」
 「南側の・・・あの坂をか?信号のあるとこまで?」
 「ああ。思いっきりスピードだせば・・・ほら、そこからまた坂を上がってくとコンビニがあるだろ?あそこぐらいまでいけるかもな。でも誠は絶対やっちゃダメだぞ。危ないからな。」
 「ぼく、そんなことしないよ!」誠は叫んだ。

オスカルはちょっと呆れた様子でおれを見た。
それから少し考え込んで言った。
 「それが5年の実戦経験か。わたしだって前はよくここで遊んでいた。コツを思い出せば・・・あんなに遅れない。アンドレ、もう一度やるぞ!」
本当に失敗した。最初に手を抜いてやればよかったんだ。

 「それじゃもう一度。」
 「まだ・・・・やるのか?」
おれは聞いた。
 「当然!」
オスカルはすまして言った。

これで・・・・何回やったっけ?13回?いや15回?もっとだった?ああもう!とにかくたくさんだ!
 「オスカル、日も暮れてきたし・・・・そろそろやめて・・・・」
 「わたしは平気だ。」
おれは困ってジャンヌを見た。
ジャンヌはおれを見て笑った。
 「誠はもう帰った。心配しなくても好きなだけやればいい。あたしは見ててあげる。」

それって・・・・とことん付きあえって事?
 「わたしは朝まででも大丈夫だ!ああ、それからアンドレ・・・・・」
オスカルはふっと笑った
なんだ?この笑みは・・・・・・
なんか・・・まずい?
これは・・・・

 「さっきみたいに手を抜いてみろ!絶対に許さないからな!」
だ、誰か〜オスカルを止めてくれ!

インラインスケート
元々はアイスホッケー・スピードスケートの屋外練習、スキーのオフシーズン練習用に作られたものらしい。ローラースケートと違いウィル(ホイール、車輪の部分)が縦一列に3から5個ほど並んでいる。用途によって様々な種類のシューズがある。“アグレッシブ” タイプと呼ばれる専用のシューズを使えば、階段の手すり(直径5センチほどのパイプ)の上を滑り降りたりとか、かなりの高さからジャンプしたり、壁面!を滑ったりが可能。