オスカルのガードはおれで19人目だ。
3歳までは例の占い師、そして12歳まではアーロンというこの世界では超有名な凄腕の人物がガードを勤めていたそうだ。
問題はそれから今に至る5年間、16人が変わった。
早い奴で5日、長いので7ヶ月。
うち2人は龍との戦いの怪我が原因、残りの14人は依願退職と・・・・解雇。

 「つまりアクション起こそうとしたのが解雇。そうじゃないのが依願退職。監視カメラと複数の人間だ。アクション起こせばどうなるかわかるだろう?」
 「ジャンヌの蹴りが・・・決まる?」
 「まあそんな所さ。お前の前任者は全治3ヶ月だった。」
ジャンヌ、強すぎる・・・・

 「ガードの平均は3.5ヶ月だ。わかるだろう?あの青い瞳と四六時中一緒なんだ。これはもう不可抗力さ。そして、もう一つの原因は・・・優李はガードが嫌いなことだな。」
 「ガードが・・・嫌い?」
 「ガードが要る生活が楽しいとでも?」
確かにその通りだ。必要だけど・・・必要じゃない・・・・

 「でも・・・嫌われてるから、辞めるんですか?それってちょっと無責任・・・」
 「皆一流さ。仕事などいくらでも選べる。いくら法外な報酬とはいえ不愉快な思いをして続ける理由はない。それに!自分に当てはめて見ろ。もし、お前に好きな子がいてその子に心底嫌われていたら・・・それでも側でガードなんてしたいと思うか?」
 「そりゃそうですけど・・・・でも、今みたいだったら絶対に護らないとだめです!」
板倉さんは笑った。
 「お前ならそうするかもな。さすが24年もガードし続けただけはある。」

 「先輩!いい加減にしてください!その話は・・・・」
板倉さんは少し離れた所でジャンヌと何か話している優李をちらっと見てから言った。
 「優李には知られたくないのか?」
 「当たり前です!おれだって信じてないんですよ!」
 「わかった、わかった。そんなに怒るな。とにかくそういう事だから優李に嫌われてると感じても気にするな。それから!お前も、もしどうしてもダメだと思ったら・・・・ぼくでもジャンヌでも警備主任の高橋でも・・・誰でもいい、すぐに言うんだ。わかったな。できるだけ4ヶ月間はがんばって欲しいが、何かあってからでは・・・・」
 「何があるっていうんですか!心配ありません。絶対!大丈夫です!」

前の奴とは違うんだからな!
おれは、夜になっても板倉さんの言葉に腹を立てていた。
おれがオスカルにするはずないじゃないか!
そりゃ相手がオスカルだって知らない時は、自信がないなんて言ったけど・・・
今は違うんだぞ!

それに・・・
奴が来る、銀龍だ。
ほとんどが夜だけど・・・いつ来るかわからないんだぞ!
そりゃ本体はジャルジャ家を護っていて動けないから、分身のようなものがやって来るけど・・・
だけど!これだってすごい力だ!
だからおれは何かあってもすぐ対処できるように、オスカルの側にいなきゃいけない。
今みたいに夜もオスカルの側に、同じ部屋にいる。
確かにこれって、普通ならちょっとまずい。
でも!普通じゃないんだ!
多分前のガードは自分の力に絶対の自信でもあったんだろう。
だから自信のある分、余計な事を考えられたんだ。
だけど、おれには無理!絶対だ!

それに!板倉さん言ってたじゃないか!
オスカルは、“ガードが嫌い”だって!
大体、嫌われてるのに・・・好きになるなんて・・・
辛いだけじゃないか!
おれは辛い思いなんてしたくないんだ!
おれはそんなの絶対に嫌だからな!
絶対に!絶対に!絶対に・・・・・・・・・・・

あれ?
おれも・・・ガードだよな?
じゃあ・・・・おれも・・・嫌われてる?
でも・・・・・・
そんな感じじゃないよな?
なんで?

 「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
あっ!まずい・・・
 「・・・考え事してて・・・・ごめん、起こして。」
 「・・・・別にいい。わたしも眠れなかったから・・・」
暗闇の中、オスカルがベットの中で動く気配。ドアの側にいるおれの方を向いたのだろう。

 「聞いてもいいか?」
 「今の事?」
 「違う、別のことだ。」
何だろう、一体・・・

 「何故、ガード引き受けたんだ?」
オスカルは聞いた。
 「・・・・・バイト料がすごい!から。」
おれは答えた。
 「それだけの事をさせられるんだぞ!今のところはほとんど何もない。でも12月に入ったら・・・大怪我するかもしれない。辞めるなら・・・・今のうちだ。」
おれの心配なんかしなくていいのに!おまえの方がもっとずっと大変なのに!

 「皆に自慢しちゃったし、今更辞められないよ。」
 「自慢って・・・何を?」
 「“めちゃくちゃ可愛い、きれいなお嬢様のガード” だって。」
 「・・・・・“可愛い” だけは余分だったな。」
あっ・・・照れてる。
こういう所はかわいいんだよな、うん。

 「何がおかしい?」
 「いや、別に。」
 「・・・・笑ったぞ!」
 「笑ってないよ。」
 「絶対笑った!」

むきになって・・・・本当に子供みたいだ。
くすくす・・・かわいいよな。
「ほらみろ!やっぱり笑っているじゃないか!」