07
オスカルの学校への送迎は、車を使う。
電車を使っても家まで30分もかからないが、ジャンヌ曰くそれは無理だそうだ。
不特定多数の人間のいる場所でのガードが厄介なこともあるが、もう一つ大きな問題があったからだ。
「もう5年も前、今思い出してもあれは・・・異様な光景だった。」
ジャンヌは言った。
「最悪だ。」
オスカルも思い出すのも嫌だというように言った。
「溜息交じりで見つめられるは、手紙を渡されるは、告白されるは・・・・電車には10分も乗らなかったけれど、二重三重それ以上?しっかり囲まれてね。あそこは逃げ場所ないから。」
そう言って、ジャンヌは肩をすくめた。
「注目の的って事?でもそれって、いつもじゃないのか。」
「・・・・男だ。」
「へ?」
「全員男なのだぞ!」
「な、なんで?」
「知るか!」
そういうと、オスカルは席を立って行ってしまった。
おれはオスカルの後姿を見送ってからジャンヌに尋ねた。
「ジャンヌ、女じゃなくて全員男って・・・それってどういうこと?」
「男心をそそるでしょ?優李の制服姿って。よーく解るわよね、勇?」
ジャンヌは横目でおれを見て、にやりと笑った。
「なるほど・・・制服ね。」
よーくわかりました、はい。
オスカルの私服はいつも男物の身体の線が出ないやつで、まんま男なんだけど・・・・・・・
制服みたいに女装(?)だとほんとに、びっくりするくらい!全然!雰囲気変わる。
あれだけ背が高いのにすごく華奢で、それからえーっと・・・・・他にも色々あって・・・・・・・
その中でも一番は、やっぱり真っ青な瞳!サファイヤ色の瞳だ。
あの目で見つめられると・・・・・確かにまずいよな。
だけど、オスカル自身にはそういう意識はない。
相手が自分の方を見ているから “なにかな?” って見る、その程度の感覚。
まったく!自分の事全然判ってないよな。本当に無頓着なんだよな。電車の中がどんな光景だったか目に浮かぶよ。
「注目だけならいいけど、ちょっかい出す馬鹿もいたし、あたしもやたら蹴りくれてやるのも面倒でね。」
蹴られる奴も気の毒に・・・・・骨なんか簡単に折れちゃうぞ。
ジャンヌはすごいから・・・・
おれは蹴られる奴に少しだけ同情した。
ジャンヌは龍ではなく対人間用のガードで打撃系格闘技を得意とする。
実は、龍以外にもオスカルには色々大変なことがある。
オスカル自身が目当ての、誘拐やストーカーをするような危ない奴もいるが、一番怖いのはジャルジェ家の財産目当てらしい。
板倉さんは、誘拐が全てオスカル自身だといったが圧倒的に多いのが営利誘拐。
だから子供の頃から必ず龍と人間に対応する・・・少なくとも2人のガードが付いていたそうだ。
おれは溜息をついた。
「制服の時は大変だ。そんなんじゃ、学校帰りに友達と遊びに行ったりもできないよな・・・・」
四六時中ガードもつくし、オスカルはほんと不自由だ。
「あの子、誰とも遊んだりしないわ。」
おれはジャンヌを見つめた。ジャンヌは言った。
「誘拐未遂。ずいぶん前らしいけど・・・巻き込まれて怪我をした子がいて、それ以来。」
「そんな・・・・・」
おれ・・・友達と遊びに行ったりしないのは、おれがガードに不慣れだから気を使ってだと思ってた。
何で気づかなかったのだろう?
よくDVDやビデオで映画見るのは時間がつぶれるからだ。
おれ・・・・
今度から字幕がどうのとか、文句言うのはやめよう!そして、ちゃんと一緒に見てやろう!
それから・・・
オスカルがしたいことがあるなら付き合ってやろう!絶対に!
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