昂さんがオスカルを抱きしめて、それから何か言った。
オスカルが青ざめた顔で笑って・・・・ “大丈夫” と一言だけいうのがわかった。
無理やり笑って・・・・
誰が聞いても “大丈夫” しか言わない。
家族も昂さん以外出来るだけそばへ近寄らせない。
危ないから、巻き添えにならないように。
だけど・・・・
彼だけは別。
オスカルの一番大切な、一番好きな奴。

 愛している

違う!
違う・・・オスカルを愛しているのはおれじゃない!
きっと・・・アンドレだ!
おれのどこかにアンドレの記憶が残っていて・・・きっとそれが悪いのだ。
そうだ!おれじゃない。
それに、あと3日だ。そうしたら終わる。
それで終わり。
所詮おれは、オスカルに何もしてやれないのだ。

オスカルが昂さんと何か話している。
おれはオスカルと話をしない。
話どころか・・・口も聞かない。
おれはオスカルに嫌われている。
当然だ!仕方ないのだ!

 愛している

だから?どうしろっていうのだ!
おれは何もしてあげられない。本当に何も・・・役に立たない。
おれは何も出来ないんだぞ!

オスカルと昂さんを見る。
似合いの二人・・・
切なくて悲鳴を上げる。

 愛している

なんでだよ!
どうして悲鳴を上げるんだよ!
どうせ、あと2日だ。
おれに出来る事はそれまでだ。それまでなんだ!
そうしたら・・・・・オスカルとは二度と会わなくなる。
それで終わりだ。
そして・・・・忘れる。
それでおしまいだ!楽になるんだ!
すぐに新しい彼女を作る。
優しくて、そこそこかわいい子。
そうすれば・・・・

 愛している

すぐに忘れる!
オスカルの黄金の髪も青いサファイアの瞳も声も・・・なにもかも全て!
忘れるんだ!

すぐに忘れるんだ、さっさと忘れる!
忘れないと!そうしないと!
辛いのは・・・嫌だ!
辛いだけなんて!だから!だから・・・忘れる!
忘れなければ!
簡単だ、今までだってそうして来た。
最初に付き合った子は?
ほら!もう思い出せやしない!
顔も姿も声もみんな、おぼろげで・・・

 愛している?

愛してない!
当たり前だろう、ただ・・・少しだけ好きだっただけ。
向こうだってそうだ。おれの事なんかその程度しか思ってない、お互い様さ!
重いのは面倒だ!
誰もそんな風に好きになる奴なんていない。
楽しければいい。
その時だけ。それで十分じゃないか。
楽しければいい!
辛いのは・・・いやだ。

 愛している

辛いのはいやだ。そんなのは沢山だ!
そうだよ。
だからすごく好きになったりしない。
そこまで好きになってどうする?
ほんとに好きになって・・・

いつもその子だけの事を考えて?
その子だけを思う?
その子だけしか欲しくない?
ずっと?
その子が好きになってくれなくても?
ずっと愛してくれなくても?
それでも好き?

そんなの酷いよ!
どんなに愛しても!
どんなに思っても!
他に何もいらなくても!
欲しいものはそれだけでも!

 他の男のもの

どうしてそれでも好きにならなきゃいけない?
そんなの・・・酷いよ。
酷い・・・・どうして・・・そんなの
もういい!もう沢山だ!
もう沢山・・・
もういいよ!
もう・・・十分・・・

畜生!どうしてなんだよ!
どうして・・・
なんでだよ!
考えたくない!
もう考えたくないのに・・・
どうして・・・
おれ・・・オスカルの事ばかり考えるんだよ!

 愛している

お願いだから!もう、考えたくなどない!
お願いだから、言わないで!
だめだよ。
どんなに言ってみても、駄目なんだ。
無駄、思うだけじゃどうにもならない。
分かっているくせに!
自分が一番よく分かっているのだろう?

 愛している

どんなに愛しても・・・報われるとは限らない。

オスカルがいなくなったら・・・どうすればいいのだろう?
オスカルと会う前は・・・どうしていた?
何を考えていた?
どうやって生活していた?
ああ、そうだ。
絵があった。
オスカルの絵
いつも見ていた。
いつも側にあった・・・・絵。
今はもう・・・ない。

おれの所には無い・・・
何も無い・・・・
何も無くなっても
それでも忘れられないのか?

 愛している

だって!記憶の中にはずっといる。
思い出だけは・・・誰にも奪う事が出来ない。

オスカルはおれを見ない。
おれはオスカルを見ている。
オスカルはおれじゃなくて、昂を見ている。
だけど、おれはオスカルを見ている。

 愛している

それが辛くても・・・それでもおれはオスカルを見つめる。
どんなに辛くても・・・
見ていたいから・・・・・

オスカルを忘れられない。
絶対に・・・・忘れられない。
どんなにそうしたくても・・・
無理。
出来ない。
どんなに辛くても、切なくても、痛くても・・・・
だめなのだ。

 愛している

もういい。
分かったから、よく分かったから・・・・・・
もう言わなくていいよ。
ああ、そうだよ。
おれ、オスカルが好きだよ。大好きだ。
どうしようもないくらい・・・おれはオスカルを愛している。