「何故だ?」
 「・・・・」
 「何故わたしにやらせない!」
 「・・・・・・」
 「答えろ!アンドレ!」
 「オスカル・・・・ごめん。」

オスカルがおれを見る。
見たくない!そんな悲しそうな顔して欲しくないのに!
なのに、そうさせているのは・・・おれだ。
だけど、どうしようもない。
おれには何も出来ない。

 どんなに・・・辛くても・・・

そうだ、オスカルがどんなに辛くても・・・・おれには無理。
何もできない、してやれない。

 「そうか、結局おまえも同じだったのだな。今迄言ったのは全部嘘、自分だけが楽で・・・本当はわたしなど足手まといだと、そういうことか。」
 「そうじゃない!」

オスカルの・・・初めて見る目。
いや、一度だけ見た。
龍のガード達の話をした時と同じ目だ。
そういう風に、おれを見る。

 「もう隠す必要はない。正直に言えばいい!わたしが邪魔だと!そうだろう?」
 「そうじゃない・・・」

 どんなに、どんな風に思っても・・・どんな事でもしてやりたいと思っても・・・

おれじゃダメだ。
オスカルは冷笑する。

 「ああ、そうだった!金の為だったな。」
 「違う!」
 「今更隠してどうするのだ?あと4日だが・・・今すぐ辞めてもいいぞ。心配するな、父に話して割増料金を払ってやるよ。それでこんな厄介な事と縁が切れる。わたしなんかと!それが望みだろう?違うのか!」

オスカルが凍りつくような冷たい目でおれを見る。
違う・・・・
一番大切なのに!一番好きなのに!

 愛している、おまえだけ。

おれは・・・おれは・・・・?

 「まあいい。あと4日、それで全て終わる。それまでは我慢しよう。そうすれば、二度とお前の顔を見なくて済むのだからな。」

 どうして・・・愛してしまったのだろう?

オスカルが・・・好き?
愛している?

 「分からなかったなんて言わせないわよ!」
ジャンヌは優李に言った。

 「板倉と、それと昂もだろう。だが!それだけでころっと態度が変わるのだ。所詮はそんなものだったのさ。」
オスカルは爪を噛んだ。
 「1ヵ月後、勇を辞めさせる。それでいいのね?」
それを聞いて彼女は冷ややかに笑った。
 「まさか!4日後だ。あと4日でアンドレとの・・・勇との契約は終了だ。いや、今すぐに辞めさせてもいい!わたしが直接オスカルに・・・」
「今すぐにやめさせる訳にいかない。後任の手配がつかない。この前話したはずよ? 」
「どんな奴でもいい。金さえ積めば連れてこられるだろう?」
「優李!いい加減になさい!あと4日よ、今から捜してどんなガードが見つかると思うの!」

 「ノン!」
 「優李!」
 「4日だ。それ以上させる気はない。誕生日までだ!もう2度とアンドレに私のガードはさせない!」

優李はジャンヌを睨みつけたまま表情を変えなかった。ジャンヌは暫く彼女を見つめた。
 「それが結論なのね?優李。」
 「ああそうだ。これが結論だ。」
優李は答えた。
 「とにかく、中継ぎのガードが見つかるまでは我慢して貰うわよ。優李。」