「おやおや、抱き枕事件ですか?・・・・・ほう、なるほど!これは今度フランにお会いする時が楽しみですね。ふふふ・・・」
占い師は書類に目を通しながら面白そうに言った。

 「アラン、私は最近報告書が来るのが楽しみでしてね。」
 「それは!それは!俺としても助かりますね。今までは板倉とジャンヌ2つの報告書の説明を、俺があなたに報告しなければなりませんでしたから。」
アランは嫌味を込めて言ったが、彼の上司はまったく気にする様子がなかった。

 「やれやれ、相変わらず板倉は後任の催促ですか。仕方ないですね、後任は必要ないと言ってあるのに・・・・・」
 「何を言ってるんですか!必要に決まってるじゃないですか!今ディアンヌが交渉中です。イギリス人ですよ。年はちょっといってますが・・・・」
 「おや?これは面白いですね。」
人の話を無視しやがって・・・アランは不機嫌に尋ねた。

 「とんでもない問題があったのですね?」
 「板倉とジャンヌの報告書が食い違ってます。」
 「毎度じゃないですか。板倉は必要最小限しか書いてこないし、ジャンヌはその逆だ。」
 「板倉の報告書は、ムシュー・オスカルに提出せねばなりませんからそれはそれでいいのですが・・・・・おやおや!ムシューがご覧になられたら怒り狂うでしょうね、これは。」
 「ジャンヌは何と?」

占い師は報告書をアランに渡した。
アランはそれに目を通すと顔色が変わった。
 「これは・・・・まずいじゃないですか!」
アランは顔を上げて叫んだ。

 「それほどまずくはないと思いますが?」
 「とうとうボケましたか!5年前の騒ぎを忘れたんですか。」
 「5年8ヶ月前ですよ、アラン。それにしても勇は本当に彼女の事をよく理解していますね。流石200年も忘れられず絵に取り付いていただけはある。ここまで来ると狂恋ですね。危ないですね。それもまた素敵ですが・・・ふふふ。運命ですね、いや愛ですか。」
  「また訳のわからん事をごちゃごちゃと!現実を見てください!ボス、クレマン!」
 「わかっていますよアラン。しかし、いずれはこうなります。19歳の誕生日、彼女が大人しくしていると思いますか?」
 「それは、確かににそうですが・・・・しかし!」
 「ムシューにも、折に触れて話はしてあります。今はまだ17歳の誕生日前です。いい機会だと思いませんか?」
 「危険です!」
 「大丈夫ですよアラン。勇はどんな事があってもフランを護り抜きます、今度こそね。」
  「今度こそ?」

 「さて、アランあとは任せましたよ。」
そう言ってクレマンは彼に報告書を渡した。

 「どこへ行くんです。この忙しいのにカード占いだの!悪霊付きの変なモノの買い出しは無しですよ!!」
 「アラン、私は占い師ですよ。カードも悪霊付きの物も仕事・・・・」
 「もありますがボスの場合!それ以上に趣味でしょうが!」
アランは彼を睨みつけた。
 「趣味と実益を兼ねる!私はなんという果報者でしょう、アラン。」
クレマンはすまして答えた。