The sweetest voice 3

 「もう退屈だよ〜」
手に持っていた金槌を置くと望は教室の皆に声を掛けた。
「なんか楽しい事ないかなあ?面白い事も?」
沖が望に呆れたように言った。
「望ちゃん、手動かせ!そんな事言ってると、また佐々木が切れるぞ。」
「でもまだ1週間あるじゃん。少しくらい休んでもさあ。」
「そうだよな。ちょっとぐらいは・・・・」
「ワタル!お前まで!これ以上佐々木を怒らせるような事はするなっつーの。」
他のクラスメイトも沖と同様に言った。
「そうそう!今日は抑え役が三田村しかいねーんだからさあ。佐々木がマジ切れして、怒る大魔神化したら三田村がかわいそーじゃん。」
それを聞いて三田村は慌てて叫んだ。
「俺にさせるな!俺はしないからな。こういう役は勇がするって決まってる!」
「でも勇はいないし。」
「だからちゃんと手を動かせって。俺は絶対佐々木を止めたくない!というか大魔神化した佐々木は俺じゃ無理だって!」
「じゃあさ、賭けしない。マックのバーガー賭けて!」
唐突に、望が皆に提案した。それを聞いて三田村は呆れたように望を見た。
「望ちゃん、聞いてないのか俺の話。俺は絶対・・・」
望は三田村にお構いなく、立ち上がると皆に言った。
「みんな注目!! 勇がバイト先の超きれーなおじょーさまを好きになるかどうか、賭けしよーぜ!」
それを聞いて山口が動かしていた手を休めて望を見て言った。
「超きれーなおじょーさま?ちゃうちゃう!望ちゃん、真逆!身長が180以上ある上に、まんま男に見えるんだぜ?」
「それ、俺も聞いた。声なんてショーヘイみたいだって?」
「お前さあ、女で俺みたいなガラガラ声なら女じゃねーじゃん。」
「それよりも知ってるか?髭があるんだぞ。」
「げ!マジかよ!」 「キモイ〜」
「でも、いくらなんでもそれは違うんじゃない?」
「だけど見た奴が石みたいに固まるスゲー容姿の女だろう?」
「聞いた聞いた!慣れるまで10メートル以内に近寄ったらマズいって!」

「ぜーんぶ違う!俺さ、板倉さんに直で聞いたもん。それは全部間違ってる!」

望は自信有りげに嬉しそうな大きな声で言った。
それを聞いて話に加わっていなかった他のクラスメイト達も皆驚いたように彼を見た。
「聞いたって・・・お前、板倉さんに会ったのか?」
「うん、勇はあんまし話さないしさ、みんなすごく気になってたろう?だからさ、板倉さんちまで行って聞いてきた。」
望は威張って言った。
「家まで!お前・・・よくやったな、あの人に・・・」
一人が感心した様子で言ったので望は不思議そうに尋ねた。。
「えー?庭山さんや篠原さんと違って板倉さん優しいじゃん。突然会いに行ったけど全然怒ってなかったし、一生懸命頼んだら教えてくれたし。昔の写真も見せてもらったしー。」
「一生懸命って・・・お前あの人にまで駄々コネたのか!」
「何それ?俺はさあ、教えてって頼んだだけだよ!」
望は答えた。
「お前はホントによくやるなあ・・・」
「流石の板倉センパイも望ちゃんには笑うしかないか?」
クラスメイト達が呆れたように言った。
「望ちゃんは無敵だからな。で、どんなの?そのお嬢様って?」
「どのくらいかわいい?」「それとも美人?」「早く言えよ。」「どんなん?どんなん?」
皆は矢継ぎ早に望に質問をした。
「聞いて驚け!すごいんだ〜!正真正銘の美少女。13歳くらいの時の写真見せてもらったんだけど・・・・俺さあ、ゴスロリのああゆう格好って絶対!変だと思ってたけど、あれは着る子を選ぶ服なんだよな〜」
「それじゃわかんねーよ、望ちゃん!」
「つまりその子はゴスロリが趣味なわけね。」
「違う。そういう格好は大嫌い。」
望がきっぱりと言い切った。
「じゃあ何で?」
「お父さんの仕事の関係で、どうしてもモデルしなくちゃならなくて仕方なく着たんだって。とにかくさあ、黒のひらひらした服に白いレースがやっぱりひらひらっといっぱい付いててさ、なんというかさあ何処か遠くを見る目がさあこうさ・・・・ああもう!とにかく4年前であれだから今はもっとすごいんだよ!俺、実物に会いたい!」
うるうるした目で言う彼にクラスメイト達は顔を見合わせた。
「だから!もっと具体的に話せって!」
「誰かに似てるとか・・・そういうのがあるだろ?」
「その辺に転がってる子じゃないもん。」
望は口を尖らせた。
「だから!もうちょっと分かりやすく具体的に話せないのか、お前は!」
「正統派美人?癒し系?」「身長は?スリーサイズは?」「髪は?ロングそれともショート?」
「背が高くて、でもすごく!細くてきゃしゃで・・・あっ!でも胸は結構ある感じだった。で!髪は金色でさあ、目がまっ青でさあ、色が真っ白でさあ、唇が真っ赤でさあ、そいでもって・・・・」
「なにそれ!外人さん?」
望は頷いた。
「フランスにお城の家がある、貴族の跡取り娘で英国王室の血も引いている正真正銘のお姫様!有名なデザイナーから是非専属モデルに!って声がかかるくらいの美少女。」
「つーと、ちやほやされて・・・スゲー性格悪そーじゃん?」
「違うんだって!見た目はさあクールビューティでそんな風に見えるけどホントは、すっごく!優しいんだって。それから見た目で寄ってくる奴は大嫌いで興味ないんだってさ。」
望は熱心に言った。
「ふーん。なるほどね。」
「でも、俺的には外人さんはちょっとな〜」
「それに見たのは写真だろう?修正済みって場合もあるぞ。」
「それよりも望ちゃん、女の基準スゲー甘いからな。」
「今度はそうじゃない!!大体さあ、ストーカーがつくんだぞ!他にも板倉さんが・・・あの青い目で見つめられると男だけじゃなくて、女の子でもクラクラ来ちゃうとか、俺らが会うのは絶対よくないとか・・・」
「何でオレ等が会うのがよくないんだ?」
「もし会ったら他の女の子がクズにしか見えなくなるって!だから会うのは目の毒だって。それに!板倉さん、俺に言ったんだぞ。“めちゃくちゃ可愛い、きれいなお嬢様”だって!あの板倉さんが!」
望はクラスメイトを見回して言った。
「女のチェックではマジ厳しいあの板倉さんが!そ、それはすごい!」
「でしょう?べた褒めなんだもん。俺だって驚いた〜!だからすっごく!お願いして写真見せてもらったんだぞ!」
「それで勇はあんなに楽しそうに・・・ずるい!」
「そうと分かれば!」
ワタルが言った。
「言いたいことは分かってるって!」「決まってるじゃん!」「見に行こーぜ!見に!」
「いえてる!一目お目にかからないと!」
6・7名が次々と名乗りを上げた。
「だよね!行こう行こう!俺さどうなってるか確かめたくてさあ。」
それを聞いて嬉しそうに望は言った。
「お前らやめとけって。勇はともかく、板倉さん!」
「ばれなきゃいいって!」「そうそう!」
「お前らなあ、バレたらどうなると思う?」
「そうだ!望ちゃん、お前何か言われただろう?板倉さんに!絶対クギ刺されてるはずだ!」
沖が望に尋ねた。
「そういえば・・・みんなに伝言があったんだ、板倉さんから。」
望は少し考え込むと思い出して言った。
「伝言?」
「 “見に来たら絶対許さないよ” って。でも笑ってたからさ、大丈夫だって!ねえ、いつ見に行く?」
それ聞いて皆顔を見合わせた。
「・・・いや、オレいいわ。」「俺もやめとく。」「やっぱ・・・やめよう。」「そうそう。」
「えー、行かないの?ワタルと高田!それからリョータ、お前ら行くよな?」
「馬鹿!お前ら行くんじゃないぞ!」
三田村の言葉にワタルは不機嫌に答えた。
「分かってるよ。オレそこまで無謀じゃない。」
「俺もだよ!行きたいなら望ちゃん一人で行ってこい。」
「そういうこと!」
望は彼らを驚いたように見た。それからいかにも残念そうに言った。
「ちぇ。みんな行かないならツマンナイじゃん。」
「そうだ。だから望ちゃん、お前も行くな!絶対だぞ!」
三田村は念押しした。
「それにしても勇の奴、うらやましいよな〜」
クラスメイトの一人が言った。
「かわって欲しい!」「俺も!」
「だけどお前ら、バイトの内容は・・・ストーカーからの護衛だぜ?」
「大体、バイトの許可が下りた事自体が・・・おれは何かとんでもない事がありそうで怖いよ。」
「そうだよな。板倉さんからって所がマジ、ヤバい。」
「あの人もやるよな。その大変な仕事を後輩に押し付けたんだぜ?」
「勇も断ればよかったのに・・・」
「でも関口、お前だったら断れるか?」
「い、いや・・・無理だ。」
木村が意味ありげに話す三人に怪訝そうに尋ねた。
「お前らなんだそれ?板倉さんだろう?あの人怖いけど、むちゃくちゃはしないだろう?そのストーカーだって危害加えようなんて・・・ちょっと待て!?それってまさか弓道部がらみか?ひょっとして・・・“あれ”なのか!」
「弓道部は絡んでねーよ。というか、うちの部長は板倉さんと親戚じゃん?俺達もはっきりとは教えてもらった訳じゃないがあの様子からすると、そうみたいなんだ。“あれ”だ。」
「マジかよ!勇の奴大丈夫か?」
「まあ勇なら心配ないとは思うけど。でも大変だぞ、化け物相手・・・」
三人のうちの一人が言った言葉を遮って望は平然と答えた。
「大丈夫!勇はさ、見かけ倒れで強いもん。No problem!」
「望ちゃんあのなあ・・・それはやっぱ問題ありじゃない?」
「それに、見かけ倒れ じゃなくて! 見かけによらず だよ。」
「別にいいじゃん。勇なら大丈夫!それよりさあ、賭けだよ賭け!どーよ?」
望はもう一度言った。
「賭けにならねーよ。」
「やっぱ好きになっちゃうかな?」
望は考え込んだ。
「そうじゃなくて!お付き合いする以前の問題じゃん?」
「えーなんで?」
「分かってないな望ちゃんは!板倉さんの会社の仕事だぞ。お嬢様に手なんか出したら?」
「怖え〜、死ぬぜ?勇の奴。」
「それにさあ、勇だから先輩は頼んだんじゃないのか?」
「あいつの忍耐力はスゲーからな。」
「でも!おじょーさまは、金髪の外人さんなんだぞ〜」
望は不満そうに言った。それを聞いて、皆顔を見合わせた。
「それは・・・そうだな。今までよりポイント高いかも?」
「でも外人なら誰でもいい訳じゃないぞ。俺が思うにアイツは・・・」
「だから!おじょーさまは金髪で青い目だって!だからさあ!絶対好きになると思うんだけどな、俺。」
「だけどスゲ〜美少女だろ?板倉さんが褒めるくらいの?だったら!」
「だよな。勇はそういうレベル高い女って絶対手出さないじゃん、あとライバルが山ほどいそうな女とかさ。」
「そうそう。最初にきっぱり対象から外してる。あれはすごい。」
「無駄な争いは避ける、が奴のモットーだろ?」
「女以外だったらそうでもないぜ。」
「けど、女絡むと駄目だもんな〜。根性無しになるもん。あれ何?」
「さあ?」「昔好きな子に告ってめちゃくちゃ言われてフラレちゃったとか?」
「そんなの聞いたことないじゃん。」「そうそう。俺達12の時から一緒に暮らしてるんだぜ。誰かなんか知ってるか?」
みな首をかしげるだけだったが、その時一人が思い出したように叫んだ。
「あの絵は?ほら例の!」
「リョータお前見たことあるのか!」
「いや絶対見せないから・・・そういやパツ金の・・・多分女だって聞いた。誰だっけ?見た奴。」
周囲を見回して彼は聞いた。
「それは佐々木か青ちゃんじゃないか?」
「だけどあれは昔の絵だぜ?親父さんの形見とか。」
「うーん?勇は実は2次元フェチか。」「絵の女しか愛せない?実物はダメで?」
「勇が!有り得ないって!」「あいつは生身の女の方が絶対好きだぜ。断言できる!」
「それより勇は声フェチだろ。」
「ジョスか。あれはすごいよな〜。」
「だろ?まさに熱愛してる!いやマジで!」
「声にな。」
「あいつオタクか?」
「そういうなよ。人それぞれ趣味は色々だって。」
「あいつも馬鹿だよな。ジョスの声くらいその気になれば彼女に捨てられなかったのに。」
「捨てられてよかったんじゃない?みんな極悪女だぜ。」
「まあな、あいつホント女見る目ないもんな。」
「でも先回は勇なりにがんばったぜ。そんなに性格悪くなかったし。あっ!でも気は強かったな。」
「ま、仕方ないでしょう。相性ってものがあるし、合わない女は・・・」
「沖〜それってあれ?やっぱあれ?」「やだやだ!これだから・・・」
「望ちゃん!山口!お前等はそっちにしか話を持って・・・・」

「何をしてる?」

教室の入り口から聞こえた声に皆一斉に入り口を見た。
そこには佐々木と青山がいて、佐々木は無表情に皆を見ていた。そしてその横で青山が我関せずという様子で立っていた。皆一斉に三田村に視線を移した。三田村は慌てて望を睨みつけたので、望は仕方なく立ち上がると 「おかえり!!委員会おつかれ〜」 と、元気に右手を上げて佐々木と青山に声を掛けた。
「俺は、ちゃんとやっておけと言わなかったか?」
佐々木の声が怒りを含んだ。だが、望はそれに気づいた様子もなく答えた。
「みんなでさあ、勇の心配してたんだよ。バイト大丈夫かなって。な?みんな。」
望の言葉に皆一斉に頷いた。
「佐々木だって気になるよね?」
「まあな、バイトの内容があれだからな。」
佐々木はそう言うと少し心配そうな顔をした
「だろ?だからさあ、佐々木はどう思う?」
「どう思うと聞かれても、とにかく無事に・・・」
「でさ!勇はやっぱおじょーさまを好きになると思わない?みんなは違うって言うけど、おじょーさまは金髪の外人さんなんだ。だから俺さ絶対勇は好きになると思うんだ。どう?」
「・・・そうか、お前はそんな事が心配なのか。」
「うん、そうだよ。」
望が平然と答えたのを聞いて、三田村はとうとう耐え切れずに叫んだ。
「さ、佐々木!」
その声に佐々木は三田村を見た。三田村は一瞬声を飲み込んだが、意を決して声を出した。
「だ・・・だから、お、俺らは望ちゃんに勇はお嬢様がいくらきれいで性格よくて、が外人でも・・・好きにならないって、それ以前の問題だって言ったんだ。そ、それで・・・そんな事を考えるより、あと文化祭まで1週間だからと・・・な、なあ、みんな!そうだよな!」
佐々木の視線に耐え切れず三田村はクラスメイト達を見て同意を求めた。その言葉に皆一斉にはげしく頷いた。
「そ、そうだぞ!三田村の言う通りだ。」「今、望ちゃんを諭してたんだ。」「そうそう。」

「それは違うんじゃない?」

その時青山が突然口を開いた。青山は続けた。
「俺は今回に限ってはいつもと違うと思うけど。」
「なんか知ってるの、青ちゃん?」
望は不思議そうに青山を見た。
「望ちゃん忘れたのか?2週間ほど前、勇が言ったろう。MDプレーヤーがとうとう壊れたって。」
望は考え込んで 「そういやそうだった。でもそれがどうしたの?新しいの買うっていってたじゃん、多額のバイト料が入ったし。」 と尋ね返した。
「まだ買っていないぜ。」
皆驚いて顔を見合わせた。
佐々木までもが 「それって本当か?」 と青山に尋ね返した。
青山は黙って頷いた。
「つまりそれって、いつも欠かさず聞いていたジョスを聞いていないと?それってまさか・・・」
「・・・って、どういう事?」
「だから、聞く必要がないと。そういうことだろう?」
「そういえば・・・バイトの話はあんまししないけどさ、大変だろうって聞くといつも笑って“そうでもないよ”だもんな。」
「そういえばそうだった。バイトの件については泣き言一つ言ってない。」
「だから何?」
「アイツはどうでもいい時は泣きごと言うけど、本当に大変な時は・・・分かるだろう?2年前もほら!」
望は思い出して口をへの字に曲げた。
「そうだった。でも今回はすごく楽しそうじゃん?」
「だから!そういう事だろうが!バイトはさ、ホントに大変なんだ。それなのに勇はスゲー楽しそうなんだぞ。」
「その上、ジョス・レイスが必要ない。つまりジョス・レイスより愛してる奴がいるって事だろう。」
「それってつまり、勇はジョス・レイスよりお嬢様が好きって事?」
「ということになるんじゃない。」
青山は答えた。
「スゲーじゃん!ジョス・レイスの声より愛してるんだ。勇の奴、おじょーさまを。」
望は叫んだ。
「のめり込むように愛してたからな、ジョス・レイスの声を。それ以上にだぞ?」
「これってすごくない?」
「ああ。告れっかな?勇のやつ。」
「大丈夫!ジョス・レイスを聴いてる時のあの目で見ればいい!」
「ジョス・レイスの “She will be yours only if you smile at her”  」
「“微笑むだけで彼女はあなたのもの” ね!そうすれば大丈夫だよね。」
望が言ったのを受けて沖が続けた。
「だけど、すごい美少女だろう?勇なんかに目もくれないかもよ?いくらなんでもそれは無理だって。」
「その上、他にも悪条件ありだぞ、お姫様じゃ身分違い。」
「そしてとどめは、板倉さんだ。」
「じゃあ今回はどうなるかな、また振られちゃう?」
「まあな、仕方ないだろうな。」
「だけど今までと違うぞ。ダメージ無限大。」
「痛恨の一撃か?」
「だよな、あのジョスよりずっと好きだとなるとなあ・・・・」
皆は沈黙した。
「それでも “瞳に写るのは彼女だけ” だ。」
皆その言葉に驚いて佐々木を見た。
「佐々木、仕方ないさ。勇はそういう奴だから。」
青山は佐々木に言った。
佐々木は彼を見ると 「だからアイツは難しいんだよ。」 と不機嫌に言って黙り込んだ。
「それってどういう事? “瞳に映るのは彼女だけ”ってどんなに好きでも失恋しちゃうって事?。 」
「今回もまた振られるが、失恋はしない。」
青山が佐々木のかわりに望に答えた。
「って、どういうこと?」
「だから勇はそういう奴。」
「え〜俺わかんないよ!」
青山は 「分からないならそれでいいんじゃない?」 と答えた。
「ひでー青ちゃん。なんか俺馬鹿にしてる!」
望は青山を睨みつけた。
「俺はしてないぜ?」
三田村が二人の間に入って言った。
「望ちゃん、青ちゃんはこういう奴なんだから。つまり、勇は・・・お嬢様に振られる。だけど、今までと比べ物にならないくらい荒れるだろうと!いやどん底落ち込みかな?」
「こればっかりは仕方ないけど、その時には、みんなでしっかり慰めてやろうな。」
「そういうことだな。」
「そっか・・・そうだよね。」
望はしんみりと言った。
「まあそういうことだ。」
「つーことは・・・山口!」
その言葉に山口は威勢良く答えた。
「分かってるって!そん時はおれが幹事ね。まかせなさい!お嬢様なんて少しも思い出させないようにサイコーに盛り上げて見せましょう!」
皆その言葉に歓声を上げた。
「その前に!」
佐々木は皆に釘を刺した。
「文化祭の準備だ。分かってるか?あと1週間なんだぞ。」

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