8.出稼ぎ

サウジの運営は外国人労働者に支えられていると言っても過言ではありません。ある程度以上の規模の会社ではサウジ国籍の者を雇用することが義務付けられており、その最低賃金も出稼ぎ労働者よりも遙かに高いと聞きました。

アラブ人の定義は「アラビア語を話す人」と言われ、非常に誇り高く、面子を重んじる民族です。サウジ国籍の人でも人種は白人、アジア系、イエーメン系、アフリカ系と非常に色々な人がいますが、人種差別というのは全く感じられませんでした。しかし、出稼ぎの外国人については出身国によって階層がはっきり分れています。最上級の出稼ぎはアメリカ人、次いでヨーロッパ人で日本人も同じ位ですが、人数は比較的少数です。次がレバノン人、インド人で、ここまでが会社の重役クラスになります。マネージャークラスではエジプト人、インド人、パキスタン人、インドネシア人あたりでしょうか。下級技術者はパキスタン人、バングラディッシュ人、フィリピン人あたりで、最下層の単純労働者としてはイエーメン人、アフリカの黒人等です。その他、港湾労働者や中堅の技術者に韓国人が多数おりました。その他にも周辺のアラブ諸国や東南アジアの国々からも多数の出稼ぎがいます。銀行の送金窓口は何時も留守宅の家族に送金する出稼ぎ労働者で混雑していました。

郊外の会社には大抵入口に門番がいて車の出入りをチェックしていますが、イエーメン人が多かった様です。この様な門番はお茶くみから便所掃除までやっています。女性の従業員は一切いませんので、掃除なども全て男がしますが、それ程は綺麗になりません。便所は一般従業員用とマネージャー用とに別になっており、各マネージャーは便所の入口の鍵を持っています。私もこの門番に販促品を上げたら、鍵をくれ、お茶(チャイ)も入れてくれるようになりました。

出稼ぎ労働者はパスポートを会社に預けさせられ、会社の了解なしには転職も出来ません。労働ビザを取得するのも会社が手続きします。それでも時々逃亡する者もいて、マネージャークラスの場合は「この者は逃亡したので、今後は当社とは関係ありません」と新聞に写真入の広告を出していました。

日本人の駐在員は年に1回、家族ぐるみでギリシャや西ヨーロッパに休暇に出かけます。健康診断が目的ということになっていますが、単身赴任者も同様ですので、これは「生理休暇」と呼ばれていました。気候も環境も厳しい国に日本人が住み続けるのはこれくらいのことは当然だと思います。私もラマダンの期間中の2週間ほど一時帰国させて貰いました。出稼ぎのメカニック達は人によっても契約が多少違いますが、2、3年に1回は一時帰国していました。

友人になった若いエジプト人の医者がいましたが、休暇で初めてスイスに行って、美しい緑の風景を見て激しいカルチャーショックを受け、2度とサウジには戻ってきませんでした。

スタートページに戻る